第128話 立ち上がる人々
薄れゆく意識の中でザッジとビッケが敵王を粉々にするのが見えた。
あれでは修復も出来ないだろう……
ルナがすぐに薬飲ませてくれた。
それを何とか飲みこむ……
少しずつ力が戻ってくるのを感じる
ファリスが治癒魔法を唱えてくれた
死なずに済んだようだな……
「突破して防衛線まで退却です!」
ファリスが大声で叫んだのが聞こえるが……
とても歩く事が出来ない
ルナに肩を借りて歩き出す
主を失った魔物達が狂ったように攻撃してくる
全員でそれを迎撃して強行突破していく
囲みを抜け、しばらく進むとビッケ隊が馬を連れて来てくれた。みんな馬に乗って戦場を離脱する。
大きな河川に橋が架かっている。そこを渡った所がアストレーアの示した防衛線だ。
多くの人達が防衛線に集まっている
よく見ると正規の兵士ではない
ほとんどが農民だ
自分達の土地を守る為に決起したようだな
隣国の王とアストレーアが中心になって迎撃態勢を整えている。アルカディアの援軍も指示に従って戦列を整えた。
農民達はなるべく後ろの方に配置したようだ
カナデが地面に魔法陣を描き始めた
特大魔法の準備をしているみたいだ
魔力がある者が集められて魔法陣に加わっていく
俺も魔力はまだあるので参加する事にした
隣国の王が肩を貸してくれた
共に特大魔法に協力してくれるみたいだ
敵の大軍が橋の手前まで迫っている
「いくわよ! スターダスト!!!」
カナデが特大の氷魔法を放った!!
まるで真冬のような寒さだ……
前方に真っ白な雪景色が広がっている
敵軍は氷の海に沈んだ様に固まっていた
そこに白い竜とサラマンダーが襲いかかる!
何とか攻撃を避けた敵が橋を渡ってくるが数は少ない
隣国の王とアストレーア達が橋の上で迎撃して1匹も後ろに通さない。
「ナック様、ここは大丈夫みたいです。しばらく休んで下さい」
ファリスに休養を進められたので農民達の所まで下がって休む事にした。
「あの農民の様な格好の人が王なのですか?」
クワを持った農民が質問してきた。
城を抜け出したままの格好で戦っている。先頭に立って堂々と敵を迎撃している。
「ええ、そうですよ。中々お強いみたいですね」
素晴らしい戦いを繰り広げている。
「立派な王だ……必ず貴方達を救ってくれますよ」
周辺から鎧を装備した兵士が集まって来て戦列に加わり始めた。
「ようやく諸侯も動き出したか……」
「違いますよ! 諸侯を見限って故郷を守る為に離反してきたそうです」
近くにいる農民達が教えてくれた。
兵士の数はどんどん増えてきて、やがて大軍になった。
橋を渡って敵の殲滅へ乗り出している。
もう大丈夫だな。
ザッジ達がこちらに集まってきた。
「我々は長城に戻りましょう」
ファリスがみんなに退却の命令を出した。
橋を渡ってアストレーア達に手を振って別れる。
お互いの健闘を称え合う。
長城に戻るとクレアとジェロの姿は無かった。
「あの2人なら騎兵隊を引き連れて町や村の解放に向かったわよ」
セレスは留守番役のようだ。
「急に敵の勢いが落ちたから、すかさず進軍して行ったわ」
「王を討伐した影響かもしれないな」
ファリスがすぐにザッジとビッケにも出撃を指示した。
最低限の守備隊を残して魔物を駆除するつもりみたいだ。
チャンスは最大限に活かす。
俺は地下で休養を取らせてもらう。カナデ、ルナ、ファリスも一緒だ。ヒナはザッジと出撃したみたいだ。
時折、伝令が作戦会議室に駆け込んでくる。それにファリスが対応しているのが見える。
俺は診察室で横になっていた
ファリスがこちらに来た。
「戦いは終了したようです。魔物は逃走したようですね」
「そうか……良かった……」
「実は困った事が起こりました」
「ん? 何だい?」
「東の国の民から王として国を導いて欲しいと依頼が来てます」
「俺は無理だよ……」
「では誰かを推薦して下さい。指導者が居ないとあの国は立ち直れないと思います」
「君だな……」
「私はアルカディア国に戻りたいです……」
「そうだよな……まだ新婚さんだしな……アイツだ! アイツにしよう!」
「いいですね!!」
意見が完全に一致したようだ。
アイツはロードだ。ジョブ的には問題無いからな!
全軍が長城に戻って来た。東の国の町や村の代表者達も一緒に長城に来たようだ。
「みんな聞いてくれ。東の国から指導者を派遣して欲しいと要請があった。見捨てる事は出来ないのでジェロをリーダーに、そのサポートにクレアを派遣する事にした」
「おお、ありがとうございます。解放に来て下さったお二人なら我々も安心です」
「当然だがアルカディア国からの支援も行う。周辺国と助け合って平和な世界を共に築こう!」
大きな歓声に長城が包まれた。
このままアイツに王を押し付けてもいいな!
「おいナック! 聞いて無いぜ?」
ジェロが絡んできたがもう遅い!
「大歓迎されているじゃないか? 今さら断れないぞ」
「このまま王まで押し付けようと思っていないだろうな?」
「…………」
相変わらずいい勘をしているな……
「チッ 図星だな!仕方がないから行ってやるが貸しだぜ」
了承してくれればそれでいい。
アルカディアが中立国として治安部隊を派遣し、あらゆる面で援助する事になった。
長城とその周辺の一部のみをアルカディアの管轄とする協定を3国で結んだ。
長城を挟んで東と西には宿場町が整備されて自由貿易の拠点都市を目指す事になった。
そこでアルカディアが得た利益の一部は戦争で被害に合った人達への支援に充てる事にした。
東の国はアルカディア国を手本に復興が進められている。
ジェロが文句ばかり言ってくるがクレアは楽しそうにやっているので問題無さそうだ。
西の国は改革が断行されて民を見捨てた諸侯達が断罪されて貴族の力が削がれ、農民中心の自治区が増えた。
先頭に立って戦った王の人気は絶大でとても改革に異議を唱える事は出来ないらしい。
平和な生活が送れそうだ
みんなで掴み取った平和だ
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