第25話、見栄剣
「死ねっ! 魔王っ!」
反ギャグ……ではなく、反逆のシリアス。
突如魔王城に現れたこの男は、紛れもない強敵だった。
「例え世界が否定しようと、余のやり方は変わらぬっ! 我が奥義は四十七剣ただ一つのみっ! 今宵選ばれし剣は、貴様を貫く栄光の刃だっ!」
詠唱によって生じた暗黒空間に『栄』という言霊が吸い込まれる。
闇から生まれ掌に収まった武器は、四分休符のような武骨な形の物体。剣というより棒に近い四十七剣は、その名の宣言と共に振り下ろされた。
「
反逆のシリアスは動かない。
避けることも受けることもないまま、見栄剣の斬撃が直撃した。
「…………」
しかしながら、その肉体には傷一つ付いていない。
本来であれば「三重県は日本の近畿地方に位置する県。県庁所在地は津市。ロウソクと鍵の生産量が全国一であり、伊勢海老や真珠、松阪牛、赤福などが名産。忍者の流派の一つである伊賀地方や、日本初の本格的サーキットである鈴鹿サーキット、日本で唯一ジュゴンが飼育されている鳥羽水族館があり、紀伊山地の霊場と参詣道である熊野古道は世界遺産。県の木は神宮杉。県の花はハナショウブ。県の鳥はシロチドリいいいいい!」という断末魔と共に消えゆく筈が、余裕綽々な様子でニヤリと笑っていた。
「どうした魔王? 切れ味が悪いぜ? 三重県が見栄剣だなんて、いくらなんでも捻りがなさすぎだろ。いよいよもって四十七剣もネタ切れか?」
「っ!」
そう言うなり、反逆のシリアスが動き出す。
一瞬にして距離が詰められると、目にも留まらぬ素早い剣技が繰り出された。
「三重の剣ってのは、こういう技のことを言うんだよっ!」
Xを描いた刀身の軌跡が、一刀両断するように断ち切られる。
避けることすらままならず、余の身体に*が刻まれた。
「ぐああっ!」
「傷つくのは初めてか? アンタの戦いはいつもワンサイドゲームだったもんな。戦闘ってのはこういうもんだと、身をもって知るがいい!」
「…………何が悪い」
「あん?」
「余の戦いの一体何が悪いと言うのだっ! 反逆のシリアス! 世界は断じて、貴様を求めてなどいないっ! この魔王*が証明してくれるわっ!」
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