第23話、インペリアルクリムゾンデスフレア

「魔王様。外出なさるのですか?」

「うむ。ビッチの魔術工房へ行ってくる。留守は預けたぞ」

「全力で玉座をお洗濯まもり致します。行ってらっしゃいませ」






「クックック……これはこれは魔王殿。この古の賢者、ルルルールル・ルルルルルヴィッチことルルの管理する魔術工房へお越しいただきありがとうございまするる」

「ビッチよ。以前に貴様が話していたチート能力を持つ敵が現れた」

「何とっ? このチートスレイヤー、ルルルールル・ルルルルルヴィッチことルルが作り上げた結界をもすり抜けるとは……奴らの力を少々甘く見ていたようでするる」

「まずは情報だ。奴らに関する資料は以前に話していた物以外にないのか?」

「早急に用意しまするる」




「――――ということで今回魔王殿が相対した敵は俗に言う神様チート。常に神の監視下に置かれているためか、チート能力を手に入れた者の中では弱い部類でするる。力による制圧を楽しむ者ではなく、娯楽を主体とした者でするる」

「神様チート以外だと、この知識チートというのが弱そうだな」

「転生前の知識を生かしたところで、魔王殿の敵ではないでするる。一番厄介な相手はレベルチートと生い立ちチート。この手のタイプは転生前の心の底に眠りし邪悪を発散させ、純粋な強さに特化していることが多いため要注意でするる」


 一度現れた以上、これから先レベルチートや生い立ちチートが現れない保証はない。現時点で対抗できるだけの策を用意しておく必要はあるだろう。


「何か弱点はないのか?」

「転生者や転移者の弱点……それはズバリ、黒歴史でするる!」

「黒歴史というと『インペリアルクリムゾンデスフレア』のようなものか?」

「そうでするる! まさにそういった…………魔王殿、今なんと……?」

「我、新月より導かれし者。永遠の死、絶対不変、究極の使い手也。インペリアルクリムゾンデスフレア。最強の攻撃。敵全体に無属性の大ダメージ」

「ま、魔王殿……その本をどこで……?」

「貴様が資料を用意している間に見つけた物だ。既に奴らへの対策として、黒歴史になりそうな技を用意していたとは流石だな……と、召喚獣もいるのか。百の生贄より生まれし四つ首の番犬、デルタケルベルベロス。それぞれ炎・氷・雷・風の属性を持つ」

「そ……そうでするる! ご満足いただけたなら何よりでするる!」

「アビスノヴァグラビティ。ラジカルディメンジョンジェノサイド。カオスエンペラーブレイカー。成程……強そうな言葉を並べるのがコツという訳か」

「…………ま、魔王殿。そ、それ以上は――――」

「これなんか強そうではないか。パラドックスミラージュテンペスト。対象の現身を生み出し、その者のカルマをダメージへと変換。光属性には極大ダメージ」

「ぐはああああああああああっ! 光属性ではなくルルに大ダメージっ!」

「む? どうしたのだ?」

「い、いえ……何でもないでするる……ま、魔王殿。ルルは少し横になりまするる……そのノートは元の場所に戻しておいていただけると助かりまするる……」

「そうか。では引き続き、奴らへの対策を宜しく頼んだぞ」

「は、はいでするる……」




 弱点がわかったのは収穫だ……奴らの黒歴史を暴く方法がないということ以外は。

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