第2話、九大魔剣
「魔王様。勇者がお見えになりました」
「まるで来客のような言い草だな。招待した覚えはないぞ」
ゴスロリメイド服を着た小間使いのコマが姿を見せるなり、深々と頭を下げつつ報告してくる。天地がひっくりかえっても顔色一つ変えなそうな、無愛想で事務的な奴だ。
「全く、いいところだったのに」
「一人ドミノ……ですか。仰っていただければ、超大作をご用意致しましたが」
「わかってないな。余が自分で並べたのを倒すのが楽し――――」
『ドゴォォォォオン』(大きな振動)
『カタッ……カタカタカタカタカタカタカタ――――』(無情にも倒れていくドミノ)
「勇者が下の階で暴れているようですね」
「…………邪魔はせず真っ直ぐ玉座の間へ通せ。ドミノの代わりに倒しに行ってくる」
「はい。行ってらっしゃいませ」
「お前が魔王だな?」
「………………余の
「だ、誰がハーレムよっ? アタシ達は――」
「挑発に乗らないの。相手は魔王よ」
「オレの名はミディアム! 偉大なる父、勇者ウェルダンの無念を晴らすため、仲間と共にお前を倒しにやってきた! 覚悟しろ、魔王!」
「黙って遊ばせておけば調子に乗りおって……最早言葉などいらぬ! 出でよ四十七剣!」
「くるわよミディアム」
「アタシ達三人の絆なら、魔王にだってきっと勝てるわ」
「貴様らには死すら生温い! 四十七剣の秘剣、九大魔剣で絶望を味わうがいい! 今宵選ばれし剣は、貴様の肉体を、仲間との絆とやらを、何もかもを切り裂く魔剣だ!」
詠唱によって生じた暗黒空間に『裂』『魔』という言霊が吸い込まれる。
闇から生まれ掌に収まった武器は、さつまいものような武骨な形の物体。剣というより鈍器に近い四十七剣は、その名の宣言と共に振り下ろされた。
「
「埼玉県は日本の関東地方に位置する県。県庁所在地及び最大の都市はさいたま市。村は東秩父村のみで、全国では五番目に人口が多い。県の木はケヤキ。県の花はサクラソウ。県の鳥はシラコバト。県のマスコットはコバトンんんんんん!」
「昼間の人口流出が全国一位で、市の数は全国最多の四十。日本では八つしかない内陸県の一つ。隣接している都道府県の数は長野県に次ぐ七あああああ!」
「元々は『さきたま』と呼ばれていて、埼玉古墳群の読み方は『さきたまこふんぐん』。洋菓子やチョコレート類の生産が全国トップクラスのスイーツ王国ううううう!」
「「「強い、強すぎる!」」」
次々と断末魔を叫びながら、勇者一味の身体は切り裂かれる。
静寂に包まれた城の中で、我に返った余に向けてコマが優しく声を掛けた。
「魔王様。ドミノの修復、完了しました。お倒しになりますか?」
「やるっ!」
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