第154話 異次元お嬢様
〜 レザムールズ領 東砦 〜
ミンフィーの指揮の元、サイクロプスゾンビを掃討する作戦が展開される。
「フェン、スノウ、クルミ、ニャンタはエドワード領をからサイクロプスゾンビをここへ誘導! モッシュは砦前で待機! ティアナはマジックポーションをみんなに配給!」
ギルド レザムールズのメンバー達が飛び出していく。ティアナは錬金ギルドに向かった。
「魔力回復スキルがある者は使用して! この儀式は魔力の消費が大きいわ。魔力切れになりそうな者はアイリスの所へ集合して!」
アイリスが魔力回復の曲を演奏している。
「ホクトさん、飲み物の手配をお願い」
ミンフィーは小声でホクトに飲み物を頼んだ。
「了解しました。まだ続きますか?」
「恐らく……アンデッドは大量に発生する事が多いわ。持久戦の準備と避難民の保護もお願い」
「分かりました」
「シャバニさんは?」
「陽動の可能性があると。都市の守りは任せろとの事です」
「モッシュと変わるわ」
モッシュは飲み物の準備をする為に都市へ戻った。
砦の前に領主が武器も持たずに立っている……
「領主様は大丈夫なんでしょうか?」
心配する声が方々から上がっている。
地響きと共にスノウがサイクロプスゾンビの群れを砦前に連れてきた!
ミンフィーがゆっくりと歩いて敵に近づいていく。
ベキ!
サイクロプスゾンビの太い足をローキックでへし折った。
ベキ! ベキ! ベキ! ベキ!
淡々とサイクロプスゾンビを沈めていく……
派手な動きは一切ない。散歩でもしているかの様だ。
「嘘だろ……何だよアレ……」
モッシュの強さとは次元が違う。クルミ、フェン、ニャンタが更にサイクロプスゾンビを集めてきて敵の総数は分からない程になっていた。
ベキ! ベキ! ベキ! ベキ!
立ち上がっている敵は1体も居ない……
再生の状況を的確に把握している為、敵は立とうとした瞬間に沈められていく……
モッシュが馬車で樽を運んできた。コップ型の樽だ。
「オレンジジュースです。疲れに効きますのでどうぞ!」
魔力量の多い者はそれが普通のオレンジジュースではないとすぐに分かったが何も言わない。
スキルを明かしてでもこの状況を乗り切ろうとしている。
みんなそれが分かったからだ。
スカーレットはオレンジジュースを飲み干した。
「この可能性には気付いていた。だけど、あの強さには気付けなかった」
その言葉を聞いたミシェルはジュースを配っているモッシュを見つめた。
「最初は普通のサポーターだったと聞きました。ミンフィーさんに鍛えて貰ったそうです」
スカーレットはミンフィーを見た。そして……
「完敗だな……」
そう呟いた。
「まだこれからです。まだ始まったばかりです」
ミシェルは自分に言い聞かせる様にそう言った。
「皆さん、また力をお借りします。浄化の儀!!」
再び儀式が始まった。
それから何度も何度も儀式は繰り返された。
ここにいる全ての者が疲労の極限まで達している。
「みんな食事と仮眠を取ってもらうわ。フェン達に退却の合図を」
退却の鐘が鳴らされてフェン達が帰ってきた。
「敵も退却したわ!」
「何ですって……何処に?」
「ダンジョンがあるみたいよ」
「最悪ね……こちらには砦から出る余力がないわ。とにかく休憩よ」
ダンジョンに逃げられたら手を出せない。レザムールズ領の高魔力者をかき集めて、何とか浄化の儀は成立する。ダンジョンの中を移動しながら儀式を行うのは不可能だ。
東の空から明るくなり本当の朝日が登ってきた。
「陽が登るとアンデッドの力は弱くなる。敵には指揮官がいるみたいね」
ミンフィーはフェン達から情報収集し、次の手を模索しようとしていたが……
砦を見渡すとその場で座り込んでいる者が大勢いた。
「打つ手無しね……」
ギルドメンバーはまだまだ戦えるけど周りはそうではない。自分達が幾ら強くても大規模な戦闘では限界がある。
しかし、収穫もあった。栞が浄化の儀を行っても平時と変わらない状態を維持している事だ。
アイリスの里を助けた時とは明らかに違った。
「栞さん、疲れはありませんか?」
「ダンジョンで戦うのに比べればまだまだいけます」
栞もスペシャルダンジョンで鍛え抜いている。
「それに……」
栞は小声でミンフィーに囁いた。
「儀式を行う度に練度が上がっている様に感じました」
「経験値みたいな物が存在すると?」
「恐らく……魔力を消費している皆さんも同様かも」
儀式に参加している者のスキルが上がっているみたいだ。
「儀式について調べてみる必要がありそうね」
ホクトが中心になりレザムールズ領の有識者から少数民族に至るまで、様々な者達から儀式に関する情報を収集する事になった。
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