第22話 火力が人気
〜 ギルドハウス モッシュの部屋 〜
大量に確保した骨材でアクセサリーを作る練習をする。ミンフィーはポーション作りに挑戦している。
「ミンフィー、指輪を作ってみたから試しに装備してくれないかな?」
「いいわよ」
うーん、思った以上に女の子の指って細いんだね。ゆるゆるの指輪になってしまった。
やっぱり女の子の指輪だともうちょっと小さく作らないといけないみたいだね。
「全部の指に指輪をするのかな?」
「通常は左右の手に1個ずつ装備するわ」
イヤリングも同じみたい。
「でも、指輪もイヤリングもそんなに沢山作っても捨てるしかないから勿体ないね……」
こんな素人作品を買ってくれる人なんていないからさ。
「確か骨細工のレベル上げは矢尻が最適だったはずよ」
それなら冒険者ギルド協会に納品可能らしい。
格安だけど蒸留水と違ってお金も貰えるそうだ。
ただし、一定以上の品質は必要だ。
刺さらない矢尻なんて必要ないもんね!
とりあえず作って栞さんに鑑定してもらえば品質の確認は出来るらしい。
ミンフィーに骨細工の本を借りて読みながら「骨の矢尻」作りに挑戦した。
まあまあの出来かな? そんなに難しくはないね。ミンフィーの部屋には沢山の本が置いてある。前のギルドから引き継いだ物やミンフィー自身が集めた物、冒険者育成学校の教材なんかも置いてある。
「本を貸してもらおうかな」
「学校の教科書を貸してあげるわ」
ミンフィーが僕に役立ちそうな本を選んで持ってきてくれた。ちょっと休憩して紅茶を飲む事にした。
「そうだわ、モッシュの攻撃スキルが出ない理由が分かったのよ」
「え!? どうしてなの?」
「表面的には攻撃スキルが欲しいと思っているけど、敵から攻撃されて怪我をしたくない気持ちの方が強いのよ」
「確かに痛いのは嫌だよ」
だから防御系のスキルばかり出るのか……
「攻撃は最大の防御という言葉があるわ」
敵に攻撃される前に倒しちゃえばいいって事だよね。もう少し攻撃を意識するようにしてみよう。
「お金もちょっと貯まったし、そろそろ武器を買い替えようかな」
「そうね……武器が欲しいとは思うけど、今は武器より靴や小手とかの防具を揃えた方がいいわ」
僕が使っている靴は普通の靴で戦闘用じゃないし、手には何も装備していない。
「革のバトルシューズとバトルグローブでどうかしら?」
「明日、防具屋さんに行って見てくるよ」
武器よりも先に防具を一式揃える事にした。
「ついでにギルド協会に行ってポイントで荷車を貰ってきて欲しいわ」
僕の部屋には蒸留水、毒消し薬、ポーション、骨の矢尻が山積みになっている。確かにこれを全部運ぶのは大変だね。
「ポイントで交換出来るんだね」
冒険者ギルド協会ではクエストや納品で貯めたポイントをアイテムやギルドハウスの設備と交換出来る。
ポイントを上手に使えばお金を節約出来るね
畑をやるのに農具を買い足したからギルドのお金はあまり貯まっていない。
ギルドの運営費と個人のお金はちゃんと分けないといけない。冒険して得た報酬からギルド運営費を差し引いた金額を分配する事になっている。
住み込みじゃない栞さんもいるし報酬の分配は複雑だ。全部ミンフィーが計算してくれている。幹部コースではそういう事もしっかり学ぶらしい。
何だかミンフィーの負担が大きいような気がする
戦闘、生産、栽培、ギルドの事務、調理、掃除……
「ミンフィー、疲れてないかい? 何か出来る事があったら言って欲しいんだ」
「確かに忙しくなってきたわね……」
前のギルドには使用人が数名いたし、僕もサポーター見習いとして雑用をこなしていた。
「栞さんとティアナが手伝ってくれるからそんなに苦ではないんだけど……」
今は余裕が無いから無理だけどギルド運営要員が必要かもしれないね。
〜 冒険者ギルド協会 〜
朝一番で冒険者ギルド協会に行って荷車をポイントと交換で手に入れた。それに納品する物を全部乗せ、また協会へ向かった。
相変わらず朝のパーティー募集の喧騒は続いている。
「誰かパーティーに入れてくれませんか?」
「どこか空いてるパーティーはないか?」
パーティーに入れない人が多いみたいだ。募集している人を横目に納品カウンターに行くとやっぱり個室へ案内された。応対してくれるのはミシェルさんだ。
ミシェルさんにギルド『レザムールズ』のギルドカードを渡した。このカードはギルドマスターのミンフィーとサブリーダーの僕しか持っていないとても大事なカードだ。
みんなで稼いだお金やポイントを貯めれるカード
報酬を直接、分配する時もあるけど基本的にはひとまずこのカードに入れてから分配する事になっている。
「モッシュさん、レベルはいくつに成りましたか?」
「もうレベル9ですよ」
「やはりレベル10は確実ですね……」
ミシェルさんに増えたメンバーの為に初心者ダンジョンを回って『ガチャ』を引く予定だと伝えた。それ以外は今まで通りの方針だね。
栞さんをレベル10にする事
『運』の上がる装備を作る事
この2つが僕達のギルドの目標だ
ミシェルさんがメモ書きを渡してきた。
「ここに私が推薦する人材がリストアップしてあります」
ジョブは……
テイマー、吟遊詩人、黒魔術師……
前衛のジョブが居ないよ! テイマーなら何とかかな?
「最近のパーティーは攻撃力を重視しているので、ダメージソースにならない中衛職や後衛職が余ってきています」
そういえばさっきもそれっぽい人が必死にパーティーに入れて欲しいと声を出していたような……
「派手な攻撃は無いですが必ずパーティーに貢献出来ます」
「そうですか……」
正直、ガッカリだよ……盾役とアタッカーが欲しい。
「ここに記載しているのは今年の卒業生で、私が自分の目で見て才能があると思った人達です」
一緒に学校で学んで、能力を見てきたって事だね。
「才能ある人達が力を発揮出来ずに埋もれているのはとても残念です」
「今日は午後からキノコダンジョンに行くので、お試しで参加してもらうのはどうですか?」
「たぶん今日もパーティーに入れずにいると思うので、私から声をかけてみます」
ミシェルさんが特にオススメの3人へ声をかけてくれる事になった。ミシェルさんの仲介なら無名の僕達のパーティーでも参加してくれるかもしれない。
いきなりギルドに入るのは無理だろうから、パーティーを組んでみて合えば加入してもらえばいいよね。
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