第20話 おかしなパーティーにようこそ

 午後からも薬草採取をする。


 ミンフィーは錬金術で毒消し薬を作るのに挑戦するそうだ。毒消し薬の次はポーションで、その次に本命のレシピがあるんだって。まだまだレベルを上げないと作れないらしい。

 ミンフィーが作りたいのは僕が作った骨のアクセサリーに塗る塗料だ。塗料に『運』の上がる飲み物を混ぜるつもりらしい。


 採取を終えてギルドハウスに戻る前に市場に寄って、ミンフィー用に大きな麦わら帽子を買って帰る。


「ミンフィー、帽子を買って来たよ」


「おかえりなさい」

「ミャー ミャー ミャー」

「おかえりなさいです」


 黒いローブの女の子が僕のテーブルで作業をしていた。ミンフィーの助手として毒消し草をナイフで細かく刻んでいる。猫ちゃんは床で丸まっている。


「モッシュさん、私はティアナと申します。ギルド『レザムールズ』に入会を希望します」


 そうだ! ミンフィーからメンバー選びは僕に任せると言われていたんだっけ。


「えっと……僕はサブリーダーのモッシュです。あなたのジョブは何ですか?」


「私のジョブは魔剣士です」


「え!? 魔法使いかと思ってました」


 こんな女の子が魔剣士? 戦えるのかな……


「訳があって剣は振れませんがデバフが得意です」


 敵を弱体化するのが得意ってことだね。


「レベルは1です……自分では敵が倒せなくて……」


 初心者さんって事か。


「いいですよ、入会許可しますので一緒に頑張りましょう」


 僕だって初心者だ。これから頑張って強くなればいいんだし、下を向く必要は無いよ。


「ティアナは錬金術の知識があるんですって」


「それは凄いね」


「いろいろ教えてもらえて助かるわ」


 幼そうなのに錬金術の知識があるのか……


「ミャー ミャー ミャー」


「忘れてました。その猫は魔猫の『ニャンタ』です」


 魔猫? 普通の猫とは違うってことかな?


『魔剣士ティアナと魔猫ニャンタがギルドに加入した』


 貧乏ギルドだけど女の子と猫1匹なら何とか養えるかな。もう自己紹介は済んでいるみたいだし、また薬草採取に行く事にした。


「モッシュさん、お願いがあります」


「なにかな?」


「ニャンタも連れて行ってもらえませんか?」


「まだ仔猫みたいだし、ここにいた方が良くないかな?」


「ニャンタはあのマジックベリーを食べる事で魔素を補給しているんです」


 あの野苺には微量の魔素が含まれているらしく、魔猫であるニャンタはその魔素が大量に必要らしい。


「賢い猫だから迷惑はかけませんのでお願いします」


「うん、いいよ」


 魔猫ニャンタと薬草採取に行く事にした。森に着くとニャンタは勝手に野苺を探してパクパクと食べている。

 こんなに必要ならこれから大変だね……

 野苺の苗も採取して畑で育ててあげれば、森まで来る必要がなくなるかな? カゴに野苺の苗も採取する事にした。


「ニャンタ、帰るよ〜」


 声を掛けるとスタスタとこっちに歩いてくる。本当に賢い猫だね。地面にティアナから預かったポシェットを置くと自分で中に入っていく。ちゃんと訓練されているみたい。


 日が暮れてきたから今日の作業は終わる事にして、市場で食材を買って帰った。

 ギルドハウスに戻ると庭の方が賑やかだ。ミンフィーとティアナが畑仕事をしているみたいだね。


「ミャー ミャー ミャー」


 あ! ニャンタをポシェットから出してあげる。


 ニャンタは疲れたみたいでロビーのソファーで丸まって寝てしまった。


「ティアナ、ニャンタは寝ちゃったよ、あれ?」


「こんにちは、お邪魔してます」


 栞さんまで畑仕事をしている。女性が3人もいれば賑やかだよね。


「野苺も取ってきたから一緒に植えよう」


 トマトを植えてある場所の近くにイチゴ畑を作った。みんなでワイワイ畑仕事するのも楽しいね。


「モッシュ、ティアナの部屋と栞さんの部屋は私が決めておいたわ」


「栞さんの部屋?」


「ええ、装備や着替えを置いておくのに使ってもらう事にしたのよ」


「なるほどね、部屋は余っているしいいと思うよ」


 明日はみんなでダンジョンに行ってレベル上げをする事になった。



 〜 スケルトンダンジョン 〜


 今日は骨材確保の為にスケルトンダンジョンに来ている。


 ティアナとニャンタのデビュー戦だ!


 どんな戦い方をするのかちょっと楽しみだ。


「私とニャンタは2人でひとつと考えて下さい」


 どういう事だろう? さっぱり分からない


「ニャンタ! いくわよ!」


「ニャー!」


 ニャンタが赤く光った! 何だ!?


 ティアナがいつの間にか黒い剣を持っている……


 持っているというよりは自分と同じ位の長さの両手剣を何とか支えているという感じだ!


 ニャンタが居ない? 何処かに消えてしまった!


 ティアナが剣を地面に刺してしっかりと構えた!


 どうも剣が重くて振れないらしい……


「この魔剣がニャンタです! 戦闘を開始して下さい!」


 ええ!? そうなの?


「カーズ!」


 慌てて3体のスケルトンを攻撃する。


「あれ? 何だかスケルトンの動きがおかしい?」


 何か無茶苦茶なくらい弱いんですけど? 


 スケルトンはほとんど動けない……


「スケルトンを呪いましたので遅延、麻痺、暗闇、沈黙、毒、混乱の状態異常になっています」


 うは! 状態異常のてんこ盛り!!


 しかもアンデット系のスケルトンを呪うって!


 棍棒で一方的にボコボコ叩いてスケルトンを倒していく。


「ティアナ、これではモッシュの訓練にならないわ」


「そうですか……では防御力ダウンの魔法にします」


「それならいいわね」


「ニャンタ戻って!」


 防御力ダウンの魔法はニャンタが魔剣化しないでも使えるらしく……


 結局はみんな座って僕が戦うのを見ているだけになった。


 ボスの部屋でひたすら戦い続ける……


 栞さんは回復魔法を使ってくれるし、ティアナとニャンタは弱体魔法を使ってくれる。ミンフィーは的確なアドバイスをしてくれる。


 でも直接攻撃するの僕だけだ!


 何か変なパーティーだけど僕の訓練には最高だね!


「ニャー!」


 ニャンタがたまに赤く光を発した時は、ティアナが弱体魔法を使った時みたいだ。


 ボス部屋まで来たので未クリアのティアナが『ガチャ』を引く。


 ティアナがガチャマシーンに冒険者カードを差し込んで赤いボタンを押した!


 トン! ガチャガチャ……ポトン……


 赤いカプセルだった。


 スキル 両手剣 +3


「信じられないです! やったわ!!」


「「「 おめでとう!!! 」」」


「ニャーゴ!」


 両手剣スキルが上がれば重たい両手剣を楽に扱えるらしいのでティアナには必須のスキルだ。


「次はニャンタの番ね」


「え!? 猫も引けるの? ていうか冒険者なの?」


「モッシュ、勉強不足よ。使い魔は冒険者として登録されるから当然、ガチャも引けるわ」


 使い魔は動物しかなれない。モンスターは使い魔にはなれないって事だね。体内に魔石があるモンスターを従属させるのはテイマーと呼ばれるジョブだ。


 『ガチャ』を引けるのは動物でモンスターは引けない。


 ティアナがニャンタの冒険者カードをガチャマシーンに差し込んだ。


 ニャンタがマシーンの上に軽やかにジャンプした!


「シャー!!」


 ニャンタは全身の毛を逆立てた!


 物凄い気合いを入れている!!


 ポム! カワイイ肉球でボタンを押した!


 ガチャガチャ……ポトン……


 スキル 魔力 +3


「ニャー!!」


 猫が両手を上げてバンザイしている!!


「栞さんのレベル上げが終わったら、ティアナとニャンタは初心者ダンジョンの全クリアが必要なようね」


「お願いできますか?」


「もちろんよ、ねえモッシュ?」


「うん、やりたい事があったら遠慮なく言って」


 僕達のギルド仲間を大切にするギルドにしていくんだ!


 絶対に仲間を見捨てたりしないぞ!!

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