第14話 お風呂がいいけど言えないよ

 〜スケルトンダンジョン〜


「でも、まだクビになってないのでしょ?」


「もうノルマの達成が無理なので確実にクビです……」


 冒険者ギルドはノルマを課している所も多いみたい。ウチはノルマなんか何にも無いね。


「部屋も全部空いているし、いつでも来て下さい」


「え? モッシュさん、私はプリーストなので修道院暮らしですよ? 聖心教のプリーストはずっと修道院暮らしです」


「そうよ、モッシュ。無茶を言っては駄目ですよ」


 夕方までスケルトンダンジョンで『乱獲』して今日の訓練終わりにした。

 栞さんはどうせクビだし、脱会してウチに来る事にするみたい。


 〜ギルドハウス〜


 カラン! カラン!


「こんばんは。栞です」


 キッチンで食事をしていると栞さんが訪ねて来た。


「もうクビになってました! 入会届を提出に来ました」


「あら? いつでも良かったのに。どうぞお入りになって」


 ホールで入会届を受け取った。


「受理しました。退会は自由よ。ノルマも無しね」


「どこでもノルマがあるのにノルマ無しは助かります。修道院での仕事もあるので」


 別で仕事もしているんだ。凄いな……


「冒険者なんてやらなくてもいいじゃない?」


 僕だったら仕事だけをやるけどね。命懸けで戦っても損だと思うな。


「修行としてレベルを上げないといけないんです」


 回復魔法も仕事で必要か……ダンジョンでレベルを上がればプリーストとしての活躍の幅が広くなるみたい。


「好きな時に来てくれればいいわ。気楽にしてね」


「お嬢様、次のダンジョンは何処にしますか?」


 もうスケルトンダンジョンは余裕だから違う所に挑戦しないといけない。


「無難にゴブリンダンジョンをクリアしましょう。栞さんはスライムダンジョンはクリアした?」


「あ、はい。スライムダンジョンは最初にクリアしました」


 ゴブリンか……血が出ちゃうよな……


「栞さんは強化魔法は使える?」


「もちろんです。防御力アップのプロテクトが使えます」


「十分ね。基本的な戦い方は今日と同じよ。打撃で倒せばそんなに血は出ないわ。もし駄目でも一緒に本を読んでいればいいわ」


 僕が戦えばいいって事ね


「いいんでしょうか……」


「強化魔法と体力回復の魔法だけでも立派な仕事よ。私なんて戦闘に参加出来ないで助言だけだわ」


 その助言のおかげで強くなってきてるんだよね!


「分かりました。明日の朝、ここに来ますね」


 栞さんは嬉しそうに帰って行った。ミンフィーは困っている人の力になってあげたいんだ! 僕も頑張らないと!


 ダンジョンの魔物はダメージを一定以上与えると魔石になる。外の世界の魔物とはちょっと違うんだ。


 血を流さずに倒す事は可能だね


「モッシュはスキルが無いからダンジョンをクリアして『ガチャ』を引いていくのがいいわ。とりあえず初心者用ダンジョンを全部クリアしましょう」


 初心者用ダンジョンは全部で10個ある。スライムダンジョンはクリアしたから残りは9個だ。


「そうだね。攻撃スキルが欲しいな」


「ゴブリンダンジョンは攻撃スキルが出やすいそうよ」


「ミンフィーは戦闘スキルが全然出ないもんね」


「もう持っているのかもしれないわ。持っているスキルは出ないから。多分、戦闘スキルが出る確率は低いわ」


 ええ!? そんなに戦闘スキルを持っているの?


 やっぱり幹部候補生は凄いや!!


 僕は……クヨクヨしてもダメだ!


 鍛えればいいんだしさ!


「初心者向けダンジョン狙いなら装備はこのままでいいや」


「そうね。余裕があるなら魔法を買うといいわ」


「初心者用なら何個か買えるよ」


「じゃあ、サンダー、クイックでどうかしら?」


 サンダーは栞さんに配慮してだね。血が出にくい魔法。

 クイックは味方の速度を上げる強化魔法だ。

 

「それなら買えるよ。僕が使っても弱いけどね」


「とにかく数を使えば伸びるわ。そのうちモッシュに合う戦闘職が見つかればそれに特化してもいいけど、今は手探りだから何でもやってみるしか無いわ」


「僕に合う戦闘職なんてあるのかな?」


「今の感じだと受け流しを使うジョブね。ナイトでも良さそうだけどイマイチ盾は上手く使えてないわ」


 確かにどうも盾より武器で受け流した方が上手くいく。


「ミンフィーと特訓したからかな。盾より武器で受け流した方が楽なんだよね」


「二刀流もあるわよ?」


「うーん。盾があると安心だし……もうちょっとこのままでやってみるよ」


「そうね。急いでないし、のんびりやればいいわ。さあ、戦いの話はここまで! 明日に備えてマッサージよ」


「う、うん。今日もお風呂で?」


「どうしようかな?」


「べ、ベッドでいいよ。うん、そんなに疲れてないし」


「そう? 動けなくなったら栞さんにも迷惑がかかるわよ?」


「そ、そうだね……で、でも大丈夫だよ。ベッドでいいよ」



 ミンフィーが丁寧にマッサージをしてくれた。


「少し上半身が締まってきたようね」


「そうかな? 自分ではよく分からないけど」


「締まったと言っても脂肪が減っただけで筋肉がついた訳ではないわ」


 サポーターコースでの戦闘訓練は逃げる為のランニングが中心だったからね。

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