第5話 底辺の戦い

 お嬢様のSクラスギルドが没落したのはすぐに街の話のネタになってしまった。


 ミンフィーは没落お嬢様として超有名人


 あまり協力してくれなそうだったミンフィーもギルドハウスの件だけは動いてくれた。


 今日は引っ越しの日


 外見はボロだけど中身はとても綺麗でお風呂、トイレ、キッチン等、重要な設備はしっかりした物が設置してあった。

 1階は酒場だったみたいで、今はロビーになっている。

 設備は全部1階で個室は1階に2部屋、2階は8部屋ある。


 ミンフィーと僕は1階の部屋に住む事にした


 1階の部屋の方が2階より広くて豪華になっている。


「これでやっとギルドとして活動出来ますね、お嬢様」


「お嬢様ではもう無くなったのよ、名前で呼んで」


「いえ、駄目です。僕はお嬢様を必ず前と同じS級ギルドのマスターにするんです」


「まあ、頼もしいことね。ギルド協会に設立申請書を提出しておいたわ。パーティーの募集もついでに出しておいたわよ。私が出来るのはここまでね。後は本当にあなたへ任せるわ」


 まず最初はレベル上げだね。2人とも卒業してから戦った事が無い。レベル1のままだ。


「お嬢様、レベル上げに行きましょう」


「そうね。いいわよ。どこへ行くつもりかしら?」


「初心者向けだとスライムのダンジョンですね」


 卒業記念にもらったサポーター用のリュックサックを背負って、街のすぐ近くにある初心者向けのスライムダンジョンに向かった。


 前もってサポーター必須の救急箱をリュックサックに詰めてある。

 僕の仕事はモンスターを倒した時に出る魔石やアイテムの回収とか冒険者の予備装備を運ぶ事。

 マップを見ながら道案内するのも大事な役割だね。


 何故かお嬢様はドレスを着て歩いている。


 ドレスを着て戦うのかな……


 スライムのダンジョンに入るとすぐにスライムが現れた!


「お嬢様! スライムです! 倒して下さい!」


「嫌よ。ドレスが汚れるでしょう」


「はぁ!?」


 僕の後ろにお嬢様が隠れている!


「お嬢様! 僕はサポーターですよ? 戦いの訓練はほとんどしていません」


「では、今しなさい。スライムくらい倒せるでしょう?」


 護身用の短剣を抜いてスライムを攻撃した!


 何で荷物持ちが戦うんだよ!


 ベシ! ベシ!


 スライムから体当たりを受けた。ちょっと痛い……


 ザク! 


 短剣でスライムを刺した! 何とか当たったよ!


 ベシ! ザク! ベシ! ザク……


「ふぅ、何とか倒せました」


 小さな魔石を1個得た! 背負っているリュックサックに大事に入れた。


「呆れる程の大接戦ね」


「だって戦う準備をしてませんよ」


「あなたね……ダンジョンに来て戦う準備をして無いなんて馬鹿なの?」


 ぐっ……確かに……痛い所を突かれた


 でも、お嬢様よりはマシだ 


「お嬢様だって戦う準備をして無いですよね?」


「あなたね……私はモンクコース10年ぶりの卒業生よ? 体が武器なのよ」


 不人気だから10年ぶりなんでしょう……


 お嬢様が次の部屋へ進んでいく。次の部屋にはスライムが3匹もいた。


 とても倒せないよ……


「お嬢様、僕にはスライム3匹も無理です」


「仕方ないわね……1匹だけ倒してあげるわ」


 お嬢様はスライムに近づいていって


 デコピンをした!


 ビシ!


 スライムが遥か向こうまで飛ばされて壁に激突した!


「他の2匹は倒しなさい。あら……やだわ、やっぱり服が汚れてしまったわね。もうこの服は使えないわ」


 スライム2匹が襲いかかってきた!


 ビシ! ビシ! ビシ!


 スライムの体当たり何度も受けてしまう。そんなに痛くはないけどダメージはある……


 ザク! ビシ! ビシ! ビシ! 


 短剣攻撃1回に対してスライム達は3回も攻撃してくる


 お嬢様は服の汚れが気になる様でこちらは全く無視


「ううう……何とか倒せましたがもう戦えません。脱出しましょう」


 もう体があちこち痛い……


 小さな魔石を3個得た!


 背負っているリュックサックに魔石をしまう。


「全くのダメダメね。パーティーメンバーが揃うまではあなたが盾役と回復役兼任よ。私は『ピュアファイター』つまりアタッカー専門ですからね」


「そんな無茶な……」


 仕方がないので街に戻って皮の盾と棍棒、そして初心者用の回復魔法のスクロールを買った。


 これだけで全財産使ってしまった……


 モッシュは『ヒール』を覚えた!


「今日は飲み物を作ったのかしら?」


「いえ……まだですけど……」


「どうしてスキルを有効に使おうとしないのかしら?」


「え? 水筒に水を用意して来ましたので……」


「水ですって? あなたね……頭が硬すぎるみたいだわ」


 お嬢様は道具屋に行って大きなバケツを購入した。


「いい? これは『コップ』よ」


「え? バケツですけど……」


 どう見てもバケツにしか見えない。


「これは『コップ』なのよ。この『コップ』に力が上がる飲み物を出しなさい」


 無茶苦茶だよ……


 でも、仕方ないからやってみよう


 まずは頭の中でこれはコップ、これはコップっと


 お嬢様から大きな『コップ』を受け取った


「力が上がる飲み物出ろ!」


 大きな『コップ』に赤いドロっとした液体が出た!


「うわ! 凄いなーーー」


「凄く不味そうだわ……」


 しまった! 見た目と味を全く考えて無かった!!


「それを水筒に入れて戦う前に飲みなさい」


「ううう……これを飲むんですか?」


「当然ですわ。あなたが作った飲み物よ。戦いながら飲み物の効果時間を測るのよ」


 またスライムダンジョンに行ってスライムを倒す。


 まずは力の上がる飲み物を飲む。


 ゴクゴク!


 ウゲッ! 恐ろしい不味さだよ……


 今度は皮の盾と棍棒があるし、力が上がる飲み物も飲んだのでスライム3匹も何とか倒せた。

 でも、かなりダメージを受けてしまった。


「ヒール!」


 ちょっとだけダメージが回復したみたいだ。


「あなたはしばらくスライムと特訓ね。私は休憩するわ」


 お嬢様は僕の背負っていたリュックサックを持って部屋の隅に行ってしまった。

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