豆君
千
旅立ち
むかしむかし
あるところに
梅干しの種がいました
みんなから
豆君と呼ばれていました
梅干しの種なのに
豆君と言われるのはいやでしたが
豆君と呼ばれると
ついつい返事をしてしまうのです
豆君はいつも赤い顔をしていました
お酒を飲んでいるわけではなく
しそ漬けだったからです
そんな豆君は
ある日
「外の世界がみたい!」
そういって 生まれた村をでました
とぼとぼ歩いていくと
目の前に大きな熊がいました
歩いている豆君をみて
「おまえはなんだ 赤い顔して」
と熊はいいました
「おれは梅干しの種の豆君だ!」
豆君はじぶんで
「豆君だ!」といってしまいました
熊はニコニコ笑って
「そうかそうか豆君か いい名前だな」
といいました
「どこにいくんだ?」
「世界をみにいくんだ!」
「世界か・・・広いぞ
よし おれの背中にのれ」
豆君は熊の背中に登りしっかりつかまりました
熊は歩き出し
何日も何日も豆君をのせて
山を越え川を渡り
夜になったら一緒にねむりました
ある日 目がさめると
熊はいませんでした
豆君はひとりぼっちになりました
名前聞くの忘れてたな
豆君は思いました
今度会ったら名前を聞こう
そう思いました
豆君はまたとぼとぼ歩きだしました
熊の背中からみる世界とは
見え方がちがいました
葉っぱの下には
いっぱい虫がいました
小さな動物たちも
豆君にはとても大きくみえました
みんな豆君には目もくれず
一所懸命に動きまわっていました
ふと・・・
ここはどこだろう
豆君は考えました
もう村にはかえれないな
そう思いました
「まあいいや」
そういって
また歩き出しました
豆君は少しカラカラになってきました
何日も陽の光に照らされてきたからです
どんどんどんどん歩いていくと
そこは大きな大きな水たまり
豆君はカラカラになったからだで
その水たまりに飛び込みました
けれど豆君はプカプカ浮いてしまいます
豆君はそのままプカプカ浮いていました
なにも考えず浮いていました
どれくらいたったのでしょう
豆君のからだが少しづつ沈んでいくのです
どんどん沈んでいき
豆君は水たまりの底
水たまりの底から上をみると
きらきらと綺麗でした
きらきらゆらゆらしていました
豆君はもう浮かび上がる事はできませんでした
豆君はそこに寝転がって
きらきらゆらゆらするものをずっと見ていました
豆君は思いました
こんなのもわるくないな
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