第5話 とても簡単なお仕事ね!

 ガガンゴ鉱山村での生活が始まった。不便な事が無い様に隣りで暮らすドンガさんが助けてくれる。

 食事もドンガさんの家で一緒に食べさせて貰えた。


「じゃあ仕事を教えるな」


 ドンガさんが村の北側にある鉱山の入口へと連れて行ってくれる。他のドワーフ族が住んでいる洞窟とは入口が別みたい。

 鉱山に入るとすぐ右側に横穴が掘ってあり、小さなスペースがある。そこにカンテラと呼ばれるランプと油が入っていると思われる甕が置いてある。


「このカンテラにそこから油を補充する。それをオレ達が鉱山に入る時に火をつけて渡す。カンテラは汚れるから綺麗に磨くのも仕事だ。ちょっとした整備も教えるからやっておくれ」


 とても簡単な仕事って言うのは本当みたいだわ。


「分かりました。ちょっとやってみます」


 弟くんも手伝ってくれて一緒に作業をしてみた。


「これなら僕も手伝えるね!」


「ボウス、火と油の扱いには気をつけるんだぞ?」


「は〜い」


 すぐにドワーフさん達は来るそうだ。慌てて作業をするけど2人で手分けしてやれば結構早い。


 ドワーフさん達が1列のに並んで火の灯ったカンテラを受け取って鉱山の奥へと進んで行く。


 誰も話をしない……


 カンテラを受け取る時にコクリと頷くだけ。


 最後に様子を見ていたドンガさんが来た。


「すまんな。みんな根はイイ奴なんだが、かなりシャイで無口なんだ」


「ドワーフ族はそういう人が多いと聞いた事があります。気にしてませんよ」


「うむ。分かってくれて助かるよ。後は教えた通りにカンテラを整備したら帰っていい。村の中は安全だが外はモンスターが来るかもしれんので出ない様にな」


 ドワーフさん達が鉱山に入ると見張り役のドンガさんが1人残るだけで他には誰も居なくなってしまうんだって。


「お姉ちゃん、ドワーフさん達はあれだけしか居ないのにどうしてこんなにカンテラがあるの?」


 さすが賢い弟くんね! 私も気付いていたけどカンテラは20個位は置いてある。


「みんなズボラなとこがあってな。細かな整備するのが苦手なんだ。ついつい余分に買ってしまうんだな」


 まだまだ使えそうな物が沢山ありそう。


 ドンガさんは村を少しずつ整える仕事と見張りの仕事をしているみたい。


 汚れたカンテラを井戸まで運んで綺麗に洗い、教えてもらった通りに整備をした。


「ねえ、お姉ちゃん。この中にお姉ちゃんの火を入れたらずっと光っているんじゃない?」


 弟くんは時々ハッとする様なヒラメキをする事ある。賢くてとても良い子なの!


 壊れて使えそうもないカンテラをドンガさんに聞いて持ち帰り、火を灯す実験をしてみる。


「何? お前さん魔導師だったのか?」


「はい。炎魔法が使えるんです。ちょっと実験をしたいので壊れたカンテラを貸して下さい」


「壊れたのはやるから好きにしていい。危ない事をしては駄目だぞ?」


「ありがとうございます!」


 壊れたカンテラを2個持って帰らせて貰った。


 整備した時にカンテラの構造は分かったので、少し部品を取り外して火をつける部分を何にも無しにしてみる。


 丁度いい大きさの炎をイメージして……


狐火きつねび!」


 指先からポンッと小さな炎がで飛び出てカンテラの中にフワフワと浮かんでいる。これでフタを閉めてっと。


「わ〜〜 明るいね! やっぱりお姉ちゃんは凄いや!」


 油を燃やす炎よりはっきりしていて明るく見える。カンテラに使われる油は獣脂と言って黒い煙と嫌なニオイがする。


 でも私の狐火は煙が出ないし、ニオイも出ない!


 カンテラを動かしてみてもちゃんとカンテラの真ん中辺りに炎は留まっていた。

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