決着! vs大魔王サマ!

「オマエの妄想力は天井知らずの底知らず! 今こそ見せて見ろやヒカリぃっ! ランクアップっぷしたオマエの妄想勇者の力をよっ!」


 珍しくフィルフィーが激励してくれてますよ、言われなくてもやってやるですよー!

 

 大魔王サマの弱点はラーフィアちゃんの母親『アルレフランさん』というコトが発覚!

 今すぐアルレさんを呼んで大魔王サマを説得なんて無理だから、俺がお着替えガチャで具現化してみせますよ!


 ビシッ! と、バカ正直に宣言しちゃう俺ですよ!


「今から大魔王サマの弱点『アルレフラン』さんになりマスっ! 覚悟して下さいましっ!」


「ほほう、なんとなんと。お着替えガチャでアルレフラン殿に化けるつもりじゃと?

 あー、無理無理。いかに妄想大好きヒカリちゃんでも、それは無理じゃろ。ほっほっほっ」


 なぬっ。

 妄想大好きヒカリちゃんですとっ!?

 なかなか的を得てますよ、大魔王サマっ!

 ほっほっほっ、なんつって余裕ぶっこいてくれちゃってますがっ。

 俺の妄想力をナメてもらっちゃ困りますよっっ!


「失敗してザコい衣装のキャラになるんじゃろ? そういうオチなんじゃろ? それって、前振りってヤツなんじゃろ?」


 ぐぬぬ、じゃろじゃろとウルサイですよ、大魔王サマっ!

 お笑い芸人じゃナイんだから、こんな大事な場面でズッコケるような真似なんてしないんだからねっ!

 イヤ、してたまるもんですかっ! てなもんですよー!


 集中! 集中!! 超集中!!!


 ラーフィアちゃんの母親『アルレフラン』さんを強くイメージするのです!!


 アルレフランさん、アルレフランさん、アルレフランさんっっ!

 フィルフィーとペリメール様の結婚式の時に会ったきりだけど、くっきりはっきり鮮明に記憶に残ってますよ!


 艶やかでしなやかな長い銀髪。スッキリ小顔で、経産婦とは思えないダイナマイツボディーの色白マダム! 

 

 大切なのは全体のイメージと、際立って目立つアノ部分!

 それは『爆乳ばくにゅう』!

 思い浮かべるのだ、ドレスからこぼれ落ちそうなアルレさんの美しい爆乳をっ!

 爆乳をっ! 脳の隅々まで、たわわでふわわな爆乳オパイをイメージっ!


 爆乳とオパイって意味がダダかぶりだけど、そんなの気にしませんよー!


「んーむむむむっ!! アルレさぁんっ!」


 キタキタキタキタ来ましたよー!

 俺の脳内に、にっこり微笑んでくれる爆乳色白マダム『アルレフラン』さんの御姿が、くっきりハッキリ降臨です!

 衣装は白のフォーマルドレスをイメージ!


 いける! いけます! いっちゃいます!


 はぜろ、俺の妄想力っ!

 これもうホントに『変身』スキルだけど、そんなの今はどーでもいいのです!

 勢いよく右手を振り上げる俺っ!


「お着替えガチャっ! 行きまぁす!」

 

「あっ、ヒカリぃー。アルレさんって若い頃、かなりのドSな女王サマだったみてーだぞー」


 なぬっ!?

 お着替えガチャのスキル発動前に余計な情報をぶっこむんじゃないぞ、ヤンキー女神っっ!

 集中力がみだれちゃうでしょーがっ。


 でも、もう止まらないっ!

 やるしかないですよ、妄想勇者っ!

 勢いよく右手を振り上げるのだっっ!


「うにゃああああああああっっ!!」


 元気良く右手を挙手ですよー!


 と、次の瞬間!

 っぽぽぽんっ!


 こここれはっ!!

 よっしゃキター! SSレアの音ですよ!!

 これは偶然なんかじゃナイですよー!

 狙って出したSSレアですよー!


 ッテレー!

 パッパパー!!

 響くよ軽快なファンファーレ!

 そんでもって、どこからともなく現れる淡いスモークと、舞い散る謎の紙吹雪っ!

 

 ふわあっと、スモークのエフェクトが晴れ、そこに現れた俺の姿はっっ!


「なっ! なんじゃとっ!?」


 ふっふっふっ。びっくりしてますね、大魔王サマっ!


 軽く動いただけで波打つ爆乳!

 しなやかで長い銀髪!

 きゅっとくびれたウエスト!

 スッキリ小顔の色白美人!

 

 まごうことなきアルレフランさん! 

 SSレアにふさわしい、キレイで優しくて爆乳のアルレさんですよー!

 実年齢より、ちょっと若くしてみましたよー!


 って、アレっっ!?


 衣装のカンジがなんか違うようなっっ?


 黒のボンテージビスチェにサイハイブーツ、手には鞭。って、なんか、SM女王サマっぽい衣装なんですけどっ!? なんだこれっ!? なんでっ!?


「こっ! これはまさしくっ!

 若かりし頃のアルレフラン殿っ!?」


 なぬっ!?

 これで正解なんデスカっ!?

 俺のイメージした衣装と違うんですけどっ!?

 これって、ガチャる前のフィルフィーの言葉でこうなっちゃったのかなっ!?

 でも、大魔王サマの反応を見ると大正解っぽい!


 え。まさかっ!

 アルレさんて、ホントにSM女王サマ的なアレだったりしたんデスカネっ!?


「あっ、アルレフラン殿っ!? いや、ヒカリちゃんじゃよなっ? イヤでも、アルレフラン殿にしか思えんクオリティじゃぞいっっ!?」


 なんか混乱してますけどね大魔王サマ。

 中身は俺なのですよ、男ので妄想勇者のコウダヒカリなのですよー!


 

「スゴいよ、ヒカリちゃんっ! どこからどう見ても、お母さんにしか見えないっ!」


「おおー! 狙って出せるなんてスゲーじゃねーか、ヒカリっ!」


「素晴らしいですわっ! まごうコト無く、アルレおば様ですわっ!」


 マジですか、正解なんですか。

 アルレさんの身内のラーフィアちゃん達も大絶賛だけど、こんなSM女王様のカッコでオッケーなんデスカネっ!?



「おおっ、おおうおおっ! アルレフラン殿うおおっっ!?」


 大魔王サマったら、感極まってガクガクブルブルしちゃって挙動不審なおじいちゃんと化してますよっ!


 ここはイッパツ、ハッタリかましてみるですよっ!

 でも、女王アルレさんの喋り方とか立ち振舞いとか全然わからないっ!

 とりあえず、エロゲに出てきた女王サマの真似してみるしかねーですよっ。


 カツン! と、ヒールを鳴らして一歩前へ出る俺ですよ!


「そこの大魔王アナタ。ナニを見てるのかしら? 誰が薄汚れた目で私を見てもいいと許可したのかしらっ?」


 なんつって、こんなんでいいのかわかんないんだけどっ!

 さて、大魔王サマの反応はっ!?


「はうあっ! 申し訳ありませんですじゃ、アルレ殿うおおっっ!」


 なななんとっ!

 めっちゃ効果絶大! 恐るべしアルレさんの女王サマパワー!

 ウソみたいに腰抜かしちゃってますよ、大魔王サマっ!

 それなら、どんどん追い込んでみるですよっ!


「これまでの悪事の数々、許すまじっ! いったい誰がそんなコトをしていいと許可したのかしらっっ?」


「それはっ、そのう……」


「んんー? 誰が喋っていいと言ったのかしらっ?」


「はうああっっ!」


『かしら?』って訊いておきながら『喋るな』なんていうブラックな口撃にフリーズしちゃいましたよ、大魔王サマっ!

 これは形勢逆転! ってヤツですよー!

 一気に畳み掛けて『勇者vs大魔王』の闘いに終止符を打つですよっ!

 

 SM女王サマのスキルで、ひゅひゅんっ! と振るった鞭が見事に大魔王サマのお尻にヒット!


 ばちぃんっ!


「くはあっ! あっ、ありがとうございますですじゃあっっ!」


 ……ありがとうってマジですか、大魔王サマ。

 ドMの俺がドン引きするくらいに真性ドMじゃないですかっっ。

 なら、ここはチョーシに乗ってもいい場面!


「まだまだ終わらないわよっ! あと999回、この鞭でお仕置きよっっ!」


「そそっ! そんなにぶっ叩かれたら、ワシのお尻が壊れてしまいますですじゃ、アルレ殿おっっ!」


「はあーん? 許して欲しければ、膝まづいて『ごめんなさいぶひぃ』と鳴きなさいっ! この、ブタ野郎っっ!」


「あうあっ! アルレ殿ぉっ! ごめんなさいですじゃあっっ!」


「語尾に『ぶひぃ』をつけるのを忘れてるわよ、このっ、ブタ野郎っっ!」


「ごっ、ごめんなさいですじゃぶひぃっ! ぶひぃっっ!」


「仕方ないわねえ、999回から99回に減らしてあげるわっっ!」


「あっ、ありがたき幸せですじゃぶひぃっ!」



 ……自分でアドリブっときながらアレだけど。


 なんなんですかね、このSM茶番劇。


 勇者対大魔王の闘いが台無しじゃないですかねっ。

 こんなしょーもない真のラスボスバトルなんて前代未聞なんじゃないデスカネっっっ。

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