真のラスボス! 大魔王サマ!

 ルルコちゃんの魔力暴走でズタボロになった魔王の玉座あたりから、ぼぼぼんっ、ぼしゅううっ! と、ド派手な黒いスモークがっっ!

 あっという間に、なーんも見えなくなっちゃった!


「げほっごほっ、げっほげっほっ。う゛えっ」


 咳き込んだ後、えずきながらスモークの中から現れたのはっ!


「あー。久しいのう、皆の衆。げほっげほっ」


 やっぱり大魔王サマっ! 神様店長にそっくりな大魔王サマですよー!


「「「大魔王様っ!?」」」


 キレイにハモりましたよ、カシマシ三人女神達。かつての上司の登場に驚いちゃってます!



「こやつが大魔王……っ! なんという威圧感でござるかっっ!」


 ムラサメさんの言う通り、なんか雰囲気が違いますよ大魔王サマっ。

 なんかこう、邪悪なオーラがズゴゴゴっちゃってるというか、オドロオドロしい空気をまとってるっていうか、黒いナニかがこう、まあ、そんなカンジです!

 

「あー、よっこいしょ、とな」


 ぶっ壊れた玉座に腰かける大魔王サマ。

 なんか絵になるけど、よっこいしょって呟きが『おじいちゃん』てカンジですよっ。


「妹が相手なら油断するじゃろうから、ヒカリちゃんの首なんてサクっと狩れると思ったんじゃがのう」


 なぬっ!

 ぐぬぬ、サクっと狩られてたまるもんですかってなもんですよっ。

 カタチはどうあれ、ルルコちゃんに勝ったのは俺ですよっ。自慢出来ないけど!


「あああにょっ! 大魔王サマに質問がありマスっ!」


「ん? ナニかな、ヒカリちゃんよ」


「ルルコちゃんを魔王にしたのは、ホントに大魔王サマなんですかっ?」


「ん? ああ、そうじゃよ。成長を早めたのも、魔王にしたのもワシじゃ。

 せっかく魔王にしてやったのに、暴走した上に負けてしまうとは情けない。それとも、ワシの見積りが甘かったんかのう。

 まあ、そんな状態では、ルルコはもう用済みじゃな」


 なっ!

 なっっ!

 なんですとっ!?

 用済みですとっっ!?


 なんてヒドいコトを言うんですかね、大魔王サマっっ!

 ぐぬぬ、許すまじっ!

 許すまじですようおおおー!

 これまでに無い感情のたかぶりですよ、男のっ!


 小さい女の子をっ! 俺の妹を利用して、動けなくなったら用済みとはっ!


 ここはイッパツ! 勇気を出して文句を言ってもいい場面!

 ビビってチキってる場合じゃねーですよ、男のらしくビシッと言っちゃうんだからねっ!


「用済みなんて言い方はヒドイと思いマスよ、大魔王サマっっ! 許せませぬですよっ!」


「ヒカリ殿の仰る通りっ! ひとりの人間としても、勇者としても許し難き発言でござるっ!」


 俺の隣で、すちゃっ!と忍び刀を構えるムラサメさん!

 カッコいいですよー!


 って、これはっ!


 勇者vs大魔王の図っ!

 魔王ボスを倒したら大魔王ラスボスが現れた! ってなカンジですようおおー!


「やる気まんまんで良いのう。やっぱり若いもんはそうでなくては」


 スッと立ち上がる大魔王サマ!

 大魔王ってだけあって、やっぱりラスボス感がハンパないっ!

 なんだかよくわかんない黒いエフェクトがモヤモヤっと背中にかかってますよ、とってもオドロオドロしいですよー!

 これぞラスボス! ってカンジの貫禄かんろくがみなぎっちゃってますよっ!


 マジでこんなのと闘わなきゃいけないのか、妄想勇者っ!


 と、そこにいきなり、唐突、突然にっ!

 メンチ切りながらスタスタと大魔王サマに歩み寄るフィルフィーですよ!

 えっ、ナニやってんのっ!?


「ちょっ! フィルフィーっ!?」


「おうコラっ! ナニしに来やがったんでい、ジジイっ」


 ひるむ素振りなんて微塵も見せずに、大魔王サマにメンチ切っちゃうフィルフィー!

 やっぱりこわいもんナシのヤンキー女神サマですよっっ!


「んー? 結婚して落ち着くのかと思いきや、相変わらずクチも態度も悪いのう、フィルフィーマートは。神のヤツは我が子の教育がなっとらんのう」


「ああんっ? おとっつぁんのハナシはどーでもいーだろーがっ。おんなじ顔しやがって気色ワルいんだよ、ジジイっ!」


 イヤ、まあ、神様と大魔王サマは双子ですからねっ。同じ顔だから気色ワルいって言われても、どーしようもナイんじゃないデスカネっ。


「ぎゃんぎゃんとやかましいのう、フィルフィーマートは。ヒカリちゃんもそう思うじゃろ?」


「えっ!?」


 思わぬトコロで同意を求められちゃいましたよ、男のっ!

 だがしかしっ!

 フィルフィーがやかましいのは、今に始まったコトでは無いですよ!


 むむ、これはっ。

 どーでもいい話で俺を油断させて、不意打ちする気なのではっ?

 ぐぬぬ、ナメてもらっちゃ困りますよ大魔王サマっ!

 そんな姑息コソクな手にひっかかる俺では無いのですっ!


「フィルフィーって、いつも明るいし、にぎやかで良いと思いマスよっ?」


 なんつって、ココロにもナイ事を言っちゃう俺ですよ、だがしかし!

 これは作戦なのです!

 油断させようとする相手を逆に油断させるという、高度な頭脳戦なのですよー!


「あー、そう。まあ、ヨタ話はこれくらいにしておくかのう」


 俺を油断させる作戦なのかと思いきや、ホントにただのヨタ話っ!

 俺の作戦、宙ぶらりんっ!

 うぬぬ、なかなかやるじゃないですか大魔王サマっ。

 しょーがないから、ひねりにひねった高度な頭脳戦はドローにしておいてあげますよっっ!



「ルルコが用済みってんなら他に何の用があるんだよ、ジジイっ。あたしらの邪魔すんじゃねえっ!」


 ケンカ腰で大魔王サマに詰め寄るフィルフィーですよ。

 闘うのは俺達ゆうしゃなんだから、あんまり挑発するんじゃないぞ、クチワル女神っ。


 でも、フィルフィーの挑発にも、しれっとしたもんですよ、大魔王サマ。


「イヤ、なに。ちょいと勇者達をブチ殺しに来ただけじゃよ。女神達には手を出さんから、そこで見ておればいいぞい」


 ブチ殺すってマジですかっっ。

 とんでもない事態になってきましたようおおー!

 こんなコトしてないでルルコちゃんを『選択の部屋』に連れて行かないと、手遅れになっちまいますよっっ!


「ここはボク達でなんとかするからっ!

 フィルフィー達は『選択の部屋』にルルコちゃんを連れてってあげてっ!」


「カッコいいコト言うじゃねーかよ、ヒカリぃ。ところがどっこい、オマエも一緒に来ないと意味ねーんだよっ。だから、さっさと大魔王ジジイを倒しちまえっ!」


「えっ!? そうなのっ?」


 なななんとっ!

 大魔王サマを倒せですとっっ!?


「オマエはルルコを助ける為に必要なものを持ってるんだよっ。だからゼッタイに勝てよっ!」


「えっ? ボクがっ?」


 マジか、マジですかっ。

 ゼッタイに勝てなんて言われると逆にプレッシャーなんですけどっっ!


 俺がルルコちゃんを助ける為に持ってるものって、なんなんだっ?


 うむむ、こんな状況じゃ考えてたって仕方がないっ!


 ルルコちゃんの為ならばっ!


 やるしかねーですよ、妄想勇者っ!

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