大躍進!?俺の物語!
果たし状という名のラブレター
「ただいまーっと。あー、疲れた疲れたっ。あたしは寝るっ!ペリ子っ、昼になったら起こしてくれっ」
なんつってフィルフィーは朝帰りですよ。
一晩中どこをほっつき歩いてるんですかね、ぷらぷら女神っ!
「お疲れ様でした、ですわっ。フィルフィーさんっ」
ペリメール様はそんなフィルフィーに対して文句も何も言わないんだな。
うむむ、ちょっと甘やかしすぎではないですかねっ。
「ペリメール様っ、いいんですか?フィルフィーったら、朝帰りが多いですよっ?」
「フィルフィーさんは、その……お仕事が忙しいのですわっ。何をしているかは、いずれヒカリ様にも話してくれると思います、ですわっ」
なんて言いながらフィルフィーの寝顔を優しく見つめちゃってますよ!
ペリメール様もなんか知ってるっぽいけど教えてくれないし。
ふーん。
なーんか、ちょっと妬けますよ!
◇
勇者登録を終えて数日経ったある日の事。
ラーフィアちゃんの影に怯えながら生活するのに慣れてきた頃ですよ。
イヤまあ、そんなのに慣れちゃダメなんですけどねっ。
肩書きは『妄想勇者』なんつってカッコ悪いけど、せっかく勇者になったんだから堂々としていれば良いのです!
いつでも相手になりますよラーフィアちゃん!出来れば戦いたくは無いですけど!
「ヒカリ様っお手紙が届いていますわ、ですわっ」
俺に手紙?誰ですかね?住所って誰にも教えてないんだけどなー。
ペリメール様から受け取ったのは真っ黒い
え、なに?不幸の手紙的なアレとか?
この手紙を受け取った者は3日以内に100人に同じ内容の手紙を出さないと死ぬとかなんとかってヤツかっ?
ちょっとドキドキしながら開封してみるとっ。
『ラーフィア=リンデルより愛を込めて』
なんとっ!差出人はラーフィアちゃん!
ってコトは!俺の居場所がバレている!?
マジかっ!!
でもなんでわざわざ手紙なんてっ!?
手紙と一緒に何やらチケットが同封されてますよ。なんだろ?
『魔王城入場年間フリーパス』
なんですかねコレ。フリーパスって、魔王城って誰でも入れるのか?
とにかく手紙を読んでみますかねっ。
ドッキドキです!
◇◇◇
果たし状
~前略~
妄想勇者 コウダヒカリ様
穏やかでうららかな季節になりましたね。
日々、いかがお過ごしですか?
体調に変化はございませんか?
私は魔王となってからすこぶる元気に毎日のように男達の『アレ』をチュンしています。
毎日のようにチュンしています。
大事な事なので二回書きました。
私の『野望』なのですから。
チュンというのは、アレを小指サイズ化した時に出る音の事です。何故、そんな音が出るのかはわからないけど、カワイイ音ですよ。
『すべての女性に安全と安心を』
この言葉をスローガンに掲げて魔王活動を続けています。ちまたでは快進撃と言われ恐れられているようです。
狙い通りです。
ただ。
私の考えに反対意見を持つ女性が少なからず存在するようなのです。
私は当初、この衝撃的な事実を受け入れる事が出来ませんでした。
男女問わず巨大でグロくてくっさい『アレ』を好むヒトがいるようなのです。
私は時々考えます。
私の快進撃は、本当にこれで良かったのだろうかと。
でも今は。前に進むしかないのです。
ある日突然、ヒカリちゃんがいなくなって、私は毎日毎晩、泣いていました。
毎日泣いても、涙は渇れませんでした。
涙って渇れないんですね。
寂しくて淋しくて、心が壊れそうになるくらい寂しくて。
そんな私の心の傷を癒してくれたのは、ヒカリちゃんがくれたパンティーでした。
毎日、穿いたり被ったり、袋に入れて深呼吸したりして。
もうズタボロです。
私の心もヒカリちゃんのパンティーも。
ズタボロです。
大事な事なので二回書きました。
ヒカリちゃんの脱ぎたてのパンティーが欲しいです。
ヒカリちゃん。
会いたいです。会いたいです。
会いたいよ、ヒカリちゃん。
ふわふわの髪に、柔らかなほっぺに、ふるるんな唇に触れたいです。
ヒカリちゃん。
あなたが勇者になったと知って。
私は確信しました。
ヒカリちゃん。
私はあなたが好きです。愛しています。
この小さな胸が焦げるくらいに、あなたへの熱い想いが燃え盛っています。
同封のチケットで魔王城に来て下さい。
決着をつけましょう。
勇者となったあなたを倒して我がものとして。
私は、世界を征します。
~追伸~
私は自分の目で確かめるまでは、ヒカリちゃんが男の
もし、ヒカリちゃんが本当に男の
魔王 ラーフィア=リンデルより愛を込めて
◇◇◇
マジ……かっ!
これはっ!果たし状と呼べるのだろうかっ?
見ようによってはラブレターのように見えなくもないような気がしないでもないですがっ!
追伸がっ!追伸がヤバい!
小指サイズ化されるのは確定してるのに、直筆で書かれると迫真感がハンパないっ!
確かにラーフィアちゃんは俺の『コヒカリ君』を見て無いし触ってもないから、男だって事は知らないハズだけれど!
「へー。ラフィーからの手紙かあ。アイツってキレイな字書くんだなー」
「えっ!?」
「ラフィーさんは小さい頃から達筆なのですわっ」
「えっ!?」
いつの間にかフィルフィーとペリメール様が横から覗き込んでましたよっ。
なーんかイイ匂いするなーと思ってたらコレですよ。いつもなら二人の女神様に挟まれてニャハー!なカンジになるけれども!
今、俺のココロには『チュンされる恐怖』という名の大波がざっぱんざっぱんと押し寄せてるんですからねっ!
「ひっ、ヒトの手紙を勝手に見ちゃダメですようっ」
「あっ、申し訳ありませんっ、ですわっ。ついっ」
「いーだろ、別に。ラフィーのヤツ、果たし状とは気合い入ってるじゃねーかっ。もちろん行くよなヒカリぃ?あたしの舎弟ならビビって行かねえなんてありえねえよなあ?」
ニターリと悪魔の微笑みですよヤンキー女神っ!
フィルフィーの舎弟になった覚えはこれっぽっちも無いんだからねっ!
「コレが届いたってコトは居場所がバレてるってこった。なのに、こんな果たし状送ってくるってコトはラフィーにもなんか考えがあるんじゃねーかあ?」
「それはそうかもしれないけど……」
「あたしが思うにだな、想像した以上に快進撃が続いちゃって引っ込みつかなくなったんじゃねーのかなー?」
「え、そうなのかなっ?だったら、快進撃なんてやめればいいんじゃないのっ?」
「今さら無理だろー。魔王になっちゃったからなー。部下にもやらせてるんだし、言い出しっぺが今さら『やーめた』なんて言えねーだろ」
それもそうかもしれないなー。ラーフィアちゃんて責任感強そうだし、一途で真っ直ぐな性格だし。
「すべての女性の為に、って思ってやってんのに、少なからず反感買ってるからな。その時点で相当ショック受けてるだろうな。笑えるよなー!」
笑えるかっ!
快進撃してるとは言え同性からの反感も買っちゃってるんだから、かなり傷ついてるんじゃないのかなっ?
「あのさぁヒカリぃ。ラフィーはオマエに快進撃を止めて欲しいって思ってるんじゃねーかな?勇者になったんだし」
「えっ?」
「オマエ以外の
「惚れた、って。そうなのっ?」
「知らんけど」
知らんてなんじゃいっ!
放り投げてそのままかっ!
言うだけ言って知らん顔ってどうなんじゃい丸投げ女神っ!
「それでオマエはどうなんだよ、ヒカリぃ?
ラフィーのコトを一日だって忘れたコト無い、って言えるのか?」
「えっ?」
「ラフィーはオマエのコトを好きだってハッキリ書いてあるよな?オマエはラフィーをどう思ってるんだ?」
「それは……」
俺は、答えられなかった。
ラーフィアちゃんと離ればなれになっちゃった事を、正直、心のどこかでほっとしてた。
だって、チュンされちゃうんだぞっ?
クロジョにいた時だって、隠し事をしながら仲良くするのは後ろめたい気持ちはゼロじゃなかったし……
俺はラーフィアちゃんの事を、一人の女の子として『好き』なのかな……?
「まあ、とりあえず行ってみようや魔王城!あたしも見てみたいしさっ!」
「えっ?フィルフィーも来る気なのっ?」
「だってそれ『1枚につき3名様まで入場可』って書いてあるだろ?ペリ子と三人で行こうぜ!」
「えっ、私もですか?ですわっ♪」
ペリメール様っ?なんで嬉しそうなんですかねっ?
「勇者ヒカリと魔王ラフィーの戦いを見届けるのが中立の女神ってモンだからなっ!ハイ決定!モンクあんのかっ?」
文句を言ったトコロで聞く耳持たないクセにいっ!きいっ!
ってコトで。
魔王城行きが強引に決定ですよっ。
こっ!ココロのゾンビ、いや、準備、イヤやっぱゾンビがっ!
ココロのゾンビが騒いでますよー!
ゾンビダンスで大騒ぎですよー!
ぬあああああっ!
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