衝撃のラーフィア!!
俺達が住んでるのは狭い安アパート。
俺達って言うのは、俺とペリメール様、ついでにフィルフィーの三人。
炊事、洗濯その他もろもろ、ペリメール様の高い生活力に助けられてます。
フィルフィーって一応、俺の面倒見役なんだよな。で、ペリメール様はフィルフィーの監視役。
のハズなんだけど、フィルフィーは家事全般をペリメール様に任せっきり。
ふらっとどっかに出かけては夜に帰ってくる事が多いし、朝帰りなんてコトもある。
ナニやってるのかは教えてくれないし、訊いても『ああん!?ぐだぐだウルセエ!』ってキレる始末。
まさかよからぬバイトでも!?なんてペリメール様が見逃すハズないし。
自由きままなヤンキー女神ですよ!
でもペリメール様は全然イヤな顔をしないんだな。むしろ、この三人暮らしを楽しんでる感の方が強い!
頼りになるお姉さんですよペリメール様っ!
一家に一人は欲しいステキな専業主婦のような女神様!
もちろん俺も家事手伝いはしてますが!ペリメール様には敵いませんよっ。
◇
今日のバイトは日勤シフト。
バイトが終わり、ペリメール様が買い物ついでに迎えに来てくれましたよ。
今日も足首まである長いツヤサラ銀髪がお美しゅうございますよー!
「あっ、少々お待ち下さい、ヒカリ様っ。フィルフィーさんから連絡がきましたわ、ですわっ。はい、もしもし?ですわっ」
と。
ペリメール様はフィルフィーと通話中。
手にはスマホも何も持って無い。
だがしかし!遠隔通話は出来るのですよ、スキルでね!
右手の親指と小指を立てて受話器にするアレです。お笑い芸人がコントとかでよくやってるアレですよ。もちろん左手でもオッケー。
見たまんま『
「今日は遅くなっちゃうんですか……?ですわっ。では、ヒカリ様と先に夕食をいただきますわ、ですわっ。ハイ、ではお気をつけて、ですわっ」
ペリメール様とフィルフィーの通話は終了。
ふむふむフィルフィーは何やら用事があるようですよ。今晩は静かな食卓になりそうだな。
フィルフィーはなんやかんやアレやコレやとウルサイからねー。
「ペリメール様がそうやってフィルフィーと通話してる時って、なんか新婚さんみたいですよねー」
「しししししししししし新婚っ!?」
動揺しすぎですよ、ペリメール様。
キレイなお顔が夕日のように真っ赤ですよ!
色恋沙汰にはうとい俺ですが!
フィルフィーとペリメール様はどうやら両想いっぽい?
クロジョの時からそうなのかなー?とか思ってるんだけど確信がないんだよなー。
もちろん誰にも言わないけどね!
二人に進展があるのか見守るのが男の
なんか違うような気がしないでもないけど、まあそんなカンジです!
日常系アニメみたいにほのぼの暮らしてる場合じゃないんだけど。
このまま何事もなく生きてると、何事も無く転生した人生が終わってしまうっ。
でも焦っても仕方ないのもまた事実!
とにかく今は!
今を大事に生きるのですよ男の
◇
とある日。
今日もファミレスギルド『スカイガイスト』でバイトですよ男の
夕飯時って事もあって、店内はなかなかの賑わい。俺は忙しく店内をちょろちょろと動き回ってます!
ワイワイと騒がしい店内。今日は『新魔王、進撃!』の話題で持ちきりだった。
魔王が勇者に倒されたのは約3年前。
倒された、といっても血生臭い戦いじゃなくて優劣付けたってカンジだったらしい。
魔王は引退して真っ当に働いて社会に貢献しているそうです。
なんて平和な世界なんだ。
あったんだな、そんなの。全然知らずにいたけども。俺がこの世界に転生する前の話だし。
そこから『勇者の時代』になり。バランス的に今度は『魔王の時代』がやってくる、って言われてて。
大体、3~5年周期で勇者と魔王の戦いが起きてバランスを調整しながら切磋琢磨している、というのがこの世界のおける勇者と魔王の関係性なのだとか。
勇者と魔王と女神のバランスって、クロジョで神様校長先生に教わったんだっけ。その神様校長先生、今は神様店長だけどね。
新魔王の話題、ワイワイと喧騒の中から聞こえてくるのは『女魔王』とか『小指サイズ』とか『銀髪美少女』とかいう単語。
銀髪美少女……?
女魔王……?
ん?……あれ?まさか、ねえ?
ちょっと気になるので耳をそばだててみると。
「それがよっ。魔王軍の女どもに次々と小指サイズにされてるって話だぜ」
小指サイズ、って単語がちょいちょい出てくるんだけど?なんだろ?
魔王、銀髪美少女って言葉から連想するのは。
ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク。
チーン!
え。
ラーフィアちゃん?
まさかっ!?
アレを小指サイズにされてるってコトかっ!
「出会う男達を片っ端から小指サイズにしてるってハナシらしい」
「マジかよ!?なんて恐ろしい魔王なんだよっ。勇者はナニやってんだ?」
「それがよ。その勇者も小指サイズにされたってよ」
「なにっ!やられたのかっ!?やられたヤツらはどうなってんだ?普通に生活してんのかっ?」
「生活自体は問題ないようだがな。夜の営みがな。かわいそうに……」
「マジ、かよ……っ!夜の営みが小指サイズでなんて寂しくなっちまうじゃねえかっ!許せねえな、その女魔王は!さっさと倒しちまおうぜ!SSランクの俺達で結託すりゃあなんとかなるだろ!」
SSランク!最高クラスの冒険者!
鍛え上げられた身体、いかにも攻撃力の高そうな武器を装備した屈強な男達ですよ!
そうだそうだ!やっちまおう!との声が周囲からも沸き上がる。
「でもよお、そんなに強いのか?その女魔王は?」
「女魔王だけでも手に負えないのに、それが一人じゃないんだとよ。何人かの部下を従えて行動してるらしい。ソイツらがまた一騎当千ってなくらいに手練れなんだとよ」
一騎当千という言葉にしーんと静まり返る
「その魔王ってのが女の子でな。漆黒の翼の持ち主で空を翔べるってよ。
しかもめちゃくちゃ美人で、見た目はまるで女神なんだと。魔王になんて見えないからホイホイついてって小さくされる、ってのがパターンみたいだな」
漆黒の翼!見た目はまるで女神!ってやっぱりラーフィアちゃんっ!
なんとっ!
魔王になっちゃったのかっ!!
ラーフィアちゃんの『野望』に向かって躍進中!ってコトですかあっっ!
「あとな、女魔王は誰か人を探してるってハナシだ」
「人探し?女魔王が?」
「コウダヒカリってヤツを探してるってよ」
なぬっ!!マジかっ!!!
「やられたヤツが言ってるんだから間違いねえ。オレが直接そいつから聞いたんだからな」
やられたヤツが言っていた、と聞いて再びシーン、と静まり返る
静かなその雰囲気はいつの間にか店内中に広まって、誰一人口を開かずに青ざめちゃってマス!
噂だけで屈強な冒険者達を文字通り縮こませちゃうんだから、恐ろしい魔王になっちゃったモンですよラーフィアちゃん!
そういう俺もっ!股間の
何せ!
コウダヒカリ張本人ですからねっ!
「『漆黒の翼を持つ女魔王』か……なんとかしねえとな。俺達も小指サイズにされちまうぜっ」
「でもよ、『コウダヒカリ』ってヤツを探してるんだろ?そいつさえ手に入れば女魔王はおとなしくなるんじゃねえの?」
なんとっ!正論ですがね!
「それだけで魔王が撤退するとは思えねえけどな……だがそれも一理ある。なんならそいつをダシに取引っていうテもあるわな」
なるほどー。人質と引き換えに、ってコトだな。
イヤ違うっ!
俺の身に危険が迫っているっ!
ラーフィアちゃんだけで無く!冒険者達からも目をつけられてしまうコトにっ!
「で、コウダヒカリってのはどんなヤツなんだ?強いのか?男か女かもわかんねえのか?」
ヒカリって名前は男にも女にも使えますからねっ!ただ俺は『男の
「女魔王が探してるくらいだからな……よほどの実力の持ち主なんじゃねえのか?」
「それもわかんねえってコトか。性別も顔もわからねえヤツを探すってのはなあ……情報が少なすぎるな」
おおっ!これはっ!
ギリギリセーフっぽい!?誰も俺のコトを知らないワケだから、素知らぬ顔で店の奥に引っ込めばこの場を切り抜けられる!
そろーりそろりと、音を立てないドブネズミのようにその場を立ち去るであります!
その時ですよ!
ピンポンパンポーン♪
パッと店内のモニターが点き、そこに映し出されたのは、なんとっ!
『あー、テステス。ん?映っとる?映っとるの?ああ、そう。それでは『神様放送なうおんえあー』のお時間、ですじゃ』
神様店長っ!?ナニやってんのっ!?店の中にあんな放送ブースなんてあったっけっ?
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