疑惑!ラーフィアちゃんは男の娘!?

『あー、冒険者の皆様、日々の冒険オツトメご苦労さんでございますですじゃ。神様店長ですじゃ』


 話し出すのはいいけど神様店長、真横を向いてます。

 めっちゃ横顔ですよ。


『え?カメラさんこっち?あ、そう。不慣れなもんでのう』


 と、真正面を向く神様店長。いくら不馴れでもカメラ位置くらいわかりそうなものですけどねっ。


『えー、この度、女魔王ラーフィア=リンデルから、あー、びでおれたーが届きましたので、それを放送したいと、おー、思いまする。では、どうぞー、ですじゃ』


 女魔王ラーフィアちゃんからのビデオレター!?

 しーんと静まり返る店内に高まる緊張感!


 水を打ったような静けさの中に流れてきた映像、それはっ!


『うにゃーん。にゃーん。うにゃっ!』

『ふにゃー!にゃにゃっ!』


『にゃにゃーん』

『にゃっ?にゃーん』


 子猫っ!ちっちゃくてカワイイ子猫!

 2匹の子猫が芝生の上でじゃれあう映像!

 動画投稿サイトにアップすれば500万再生はいきそうな二匹のカワイイ子猫ちゃんがお戯れ!


 店内に張り詰めていた緊張感はブチ壊しです!

 屈強なおとこ達が子猫がじゃれ合う映像を観ているという謎の空間!

 眉間にシワを寄せて険しい顔をしてる人が多い中、ほっこりした顔になっちゃってる人もいますがっ!

 ナニやらかしちゃってるんですかね神様店長っ!

 プチッと映像が途切れて再び登場したよ神様店長!


『あら?違う?魔王じゃない?違うの?え、ああ、そうそうこっちこっち。これですじゃ』


 と、別のモノをスタッフに手渡す神様店長。

 映像を流す前に確認してなかったのかっ。

 いつものバグりっぷりをいかんなく発揮ですよー!


『えー、気を取り直しまして。

 ラーフィア=リンデルからのびでおれたーをば。それでは、どうぞー、ですじゃ』


 プチッ、ブイーン。

 ブルーバックに切り替わるモニター。

 パッと映し出された画面には!


 黒のボンテージにハイヒール!

 蝶のカタチのアイマスク、右手にはムチ!

 いわゆる『女王様』的な衣装ですよ!

 ラーフィアちゃ……んっ!?

 なんて格好してるんですかラーフィアちゃん!ちょっとえっちなんですけどっ!


 両隣には部下らしき女の子がっ。

 その子達もむっちむちのぴっちぴちな、なんだかとってもえっちな衣装ですよ!



『コウダヒカリに告ぐ!』


 いきなり俺っ!?名指しで俺っ!?


『『我は魔王、ラーフィア=リンデルである!』』


 イケボっ!何度か聞いたコトのある重低音が効いたパンチ力抜群のイケボですよ!


 だがしかし!

 店内の冒険者達からの反応は!


「なんて……!」


「なんてぺったんこな胸だっ!女魔王って言うからもっとダイナマイトボディーかと思ってたぜ!」


「隣に立ってるオネーチャンの方がよっぽどナイスボディーだなあ!」


 ラーフィアちゃんの衣装を見てザワザワする店内!


 男ののこの俺がEカップになったってゆーのにっ!

 ラーフィアちゃんはAカップのままのようです!


 するとっ!

 ラーフィアちゃんの部下らしき女の子がカメラ前に進み出てきた!確かにラーフィアちゃんよりナイスなボディーですよっ。

 ぷるぷるしてますよ、いろんなトコロがっ!


『今ぁ、ラーフィア様を侮辱したヒト達から優先的にぃ小指サイズ化しに行きますぅ!』


 おっとりしてるな!

 喋り方は間延びしちゃってて、ちょっと残念です!でもこういうのが好きなヒトには辛抱たまらんカンジなんですよねっ。


「ビデオレターの中でナニ言ってやがる!そんなコトわかりっこねーよ!」


 うーん、確かに。ビデオレターって事は過去の映像だからねー。

 ところがですよ!もう一人の女の子がびしい!っと指を差し!


『まずはキサマだ、ガリス=ヘディング。コカンを洗って待つがいい!』


「え!?俺っ!?なっ!なんで俺の名前知ってんだっ!?」


 ガリスと呼ばれた男はビックリ仰天!

 これってビデオレターじゃなくてライブ映像なのかっ!?


 あっ、ラーフィアちゃんが前に進み出てきましたよっ。


『男である以上『小指サイズ化』するのは確定済みの事実!今ここに改めて宣言する!

 我、魔王ラーフィア=リンデルの名の元に!

 全ての女性に安全と安心を!』


『『全ての女性に安全と安心を!』』


 声を揃えてラーフィアちゃんのスローガンを繰り返す部下の二人!

 店内のおとこ達の反応はっ!


「……ナニ言ってんだコイツらは?」


 正論!正論ですよ!

 ラーフィアちゃんの言ってるコトが理解出来ないのは当然です!


『汚らわしい男どもの凶悪なアレから女性を守る!それが魔王ラーフィア=リンデルの真意!おとなしく小指サイズ化されよ男どもよ!

 案ずるな痛みはない。目を閉じて三つ数えれば良いだけだ』

 

 マジかっ!

 長年連れ添ったカワイイムスコが三つ数えた後に小指サイズにっ!

 ムゴいっムゴすぎますよラーフィアちゃんっ!

 

『案ずるな痛みはない。目を閉じて三つ数えれば良いだけだ』


 二回言ったよラーフィアちゃん!

 ラーフィアちゃんの言葉に店内のおとこ達はドン引きです!

 再びしーんと静まり返る店内。

 

 と、客の一人のおっちゃんがポソッと呟いた。


「けどよう。魔王ってアイツ、ホントに女なのか?男のってヤツじゃねえのか?ホラ、女の格好してる男。

 女装男子って言うより男のって感じじゃないか?胸ぺったんこだし」


 なんとっ!

 ラーフィアちゃんは男のギワクがっ!


 ってアレ!?俺っ!

 ラーフィアちゃんは女の子って確証が……

 無いのではっ!?


 思い起こせば1年前……


 チューしたっきり……だし。

 ラーフィアちゃんのオパイに触ったコト無いし見たコトも無い。

 俺のオパイは触られたけど。

 あ。ブラチラは見たコトあるか……

 でも当然、下半身の事情なんて知らないし!

 なんせ1週間かそこらで学校追放されちゃったからね!


 ……アレっ!?俺まで『ラーフィアちゃんは男の疑惑』に陥った!?


 イヤイヤ!だってだって!

 ペリメール様の従姉妹だって……でも、ペリメール様からもフィルフィーからも、ラーフィアちゃんは女の子だって聞いたコト無い……よな。


 イヤイヤイヤ!ペリメール様と一緒にランジェリーショップに買い物行ってたって!

 そう言ってたよねラーフィアちゃん!

 でも、俺も行ってるんだよなランジェリーショップ……ブラジャーまで買っちゃったし。


 イヤイヤイヤイヤ!クロジョは女子高!

 女子しか行けない学校ですよっ!

 でも俺も行ってたんだよな……1週間かそこらだったけど。

 

 うおおお、俺の中で渦巻く!

 ぐるぐるメガネの渦巻きのように渦巻きますよラーフィアちゃんは男の疑惑!

 そんなバカなコトがあってたまるものですかっ!

 もしラーフィアちゃんが男のだったならっ!俺の初キッスの相手は『男』ってコトですよおー!

 ぬおおおおっ!


 するとなんとっ!


 モニターに映る部下の一人がラーフィアちゃんに衝撃の質問!


『えっ!?ラーフィアさまっ!?男のだったんですかぁっ?』


『そんなっ!ご冗談ですよねラーフィア様!』


『ちょっ!フェイリアっ!レイルっ!アンタ達は昨日も一緒にお風呂に入ったでしょーがっ!私のコカンに何か付いてたかしらっ!?』


『そんなじっくり見てナイですからぁ。あ、もしかしてえ、見られたかったんですかぁ?』


『私のコカンをじっくり見てもいいのはヒカリちゃんだけよっ!』

 

 ナニを口走ってるんですかねラーフィアちゃん!

 ラーフィアちゃんと部下との間でなんかいきなりモメだしたっ!?

 仲間割れって言うよりは、クラスの女子が冗談言い合ってきゃいきゃいと騒いでる風にしか見えないけど!


 イヤそれよりも!

 モニターの中のラーフィアちゃん達にこっち側の声が届いてるっ?

 ライブで繋がってるってコトかっ?


『ええいっ!静まれ我が配下よっ!』


『はあっ!』


 ラーフィアちゃんが右手を振ると、部下の二人は畏まって片膝をついて頭を下げた。

 魔王としての威厳的な効力を発揮してますよ!でも、なんかコントみたいですよ!


『ヒカリちゃんっ!』


 カメラに向かって語りかけるラーフィアちゃん!これって俺へのメッセージっ!?


『ヒカリちゃん!何も言わずにいなくなっちゃうなんてヒドイよっ!

 連絡のつけようもないしお姉ちゃんまで音信不通になっちゃうし!私っ!毎晩泣いてたんだよっ?』


 ラーフィアちゃんの口調は魔王とは思えないくらいに『普通の女の子』みたいなカンジだった。

 確かに、何も言わずに退学しちゃったからなー。て言うかムリヤリ追放されちゃったんですけどねっ。


『手元に残されたのは、ほんの少しのヒカリちゃんとの思い出とパンティーだけ……

 私は!

 ヒカリちゃんのパンティーを生きる糧に今日まで生きてきたと言っても過言では無い!』


 イヤ過言ですよラーフィアちゃん!

 生きる糧って、どんだけエネルギー秘めてるんですか俺のおパンツはっ!


『ヒカリちゃんが男だって噂……そんなの信じられない。信じたくない!

 自分の目で確かめるまで!私はヒカリちゃんを探し続ける!』


 なぬっ!?これはっ!

 絶対逃げられないヤツじゃないですかっ!?


『ヒカリちゃんを取っ捕まえて確かめて!

 もしもアレがあったなら……私自ら!この手で小指サイズ化してあげる!そして二人は晴れて結ばれるのよヒカリちゃん!』


 言ってるコトがムチャクチャ過ぎるよラーフィアちゃん!俺が男でもアレさえ小指サイズならそれで良いってコトっ!?

 黙って小指サイズ化されるほど俺はお人好しじゃ無いですよっ!?

 


『魔王ラーフィア=リンデルがここに宣言する!コウダヒカリに手を出した者は即刻、首と胴体が離れると知るがいい!』


 マジかマジですかラーフィアちゃんっ!

 そこまでして俺をお探しなのですかあっ!


 これはピンチ!大ピンチ!

 ラーフィアちゃんに取っ捕まっちゃったりした日には!

 コヒカリ君が童貞のまま小指サイズ化されちゃうコトにいいいっ!


 ぬおおおおおっ!

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