爆走!ふたり女神!
「見とけよペリ子!
フィルフィーはただただ負けず嫌いなだけだなー……
「私とフィルフィーさんは幼い頃からのライバル!互いに切磋琢磨し、粒粒辛苦する仲なのですわ!お手々繋いで仲良しこよしは過去の事!なのですわっ!」
「クマシとかリューリューとか、ナニ言ってっかわかんねーけど
鼻息荒くフィルフィーはやる気満々。
ペリメール様もフィルフィーとのバトルということで気合いが入ってるご様子ですよ!
俺は何故かフィルフィーのグリッドガールやらされてます。
パラソル持ってニコニコ笑顔のキャンギャルってヤツですよ!コレいる!?
フィルフィーに無理矢理連れ去られてひんむかれて着させられたのが、この衣装。
ジャケットって呼んでいいのかわかんない小さい上着にミニスカート。スカート短すぎだし、下に穿いてるおパンツもなんだかちっちゃいしっ。
不安になりますよコヒカリ君がっ!
ハイヒールなんて初めて履いたよ。いや、立ってるだけでも大変ですよコレ!元がちみっこいから、ハイヒール履いても身長はあんまり変わらないっていう、ね!
ペリメール様の方にもグリッドガールが!
スラリとした、ぼん、キュッ、ぼん!のモデル体型のお姉さんは女神育成コースの3年生。
なんと、お昼の放送で神様校長先生に絡まれてたワタナベさん!彼氏がいるって事をお昼の放送で全校生徒にばらされちゃったワタナベさんですよ!
3年生ってやっぱカラダ付きが違うよなー。ペリメール様と並んでも引けを取らないナイスボディーのお姉さんですよ!
ちんちくりんの俺が横に並ぶとワタナベさんのナイスボディーっぷりが引き立てられて、逆に言うと、俺のちんちくりんっぷりが際立つってコトですよー!
フィルフィーは
コートのようでコートじゃない、作業着のようで作業着じゃないアレですよ。
背中には漢字で『麗出椅子血忌無暴走女神』と派手に刺繍されてます。
れでぃーすちいむ?暴走女神、は何となくわかるとして、椅子って当て字がテキトー過ぎやしませんかね?まあ、刺繍の入った
「アガるよなあ、ヒカリぃ!オマエも連れてってやろうか、スピードの向こう側によー!」
イヤ遠慮します。それ、帰って来れないヤツですよ。
フィルフィーは目を輝かせてスタート時間を待ってるのに対し、ペリメール様は落ち着いて静かなものですよ。さすがです!
ペリメール様は、フィルフィーの特攻服とは真逆な感じのぴっちぴちの黒いライダースーツ。
革ツナギが、それはもうぴっちぴちで身体のライン丸出しです。
オパイとお尻のぱっつぱつ感がぶっちゃけエロいですよ!
二人ともそんなんでいいのかっ?
「久々だなぁ、ドキがムネムネだぜ!」
「ムネがドキドキ、の間違いですわっ」
二人とも楽しそう。なんか、ちょっと羨ましいなー。
原付レースのコースはオーバルコース。
原付でオーバルコースなんて面白くもなんともないのでは?
オーバルってのは楕円って意味で、有名なレースで言うとインディ500かな。
実はねー、好きだったんだよねー。クルマのレースとかバイクのレース。
男の子なら一度はハマると思うんだけどなー。キョーミない人には、こーゆーのつまんないだけかもしれない。
バイクよりクルマ!ってヤツもいたな。でも、クルマは18歳にならないと乗れないけど、原付バイクなら16歳で乗れますからね!
俺は原付免許取る前に死んじゃったから、この世界で原付とは言えバイクレースと聞いてちょっと、イヤかなり楽しみですよー!
特設コースって一体何処に?って思ってたらば!
バグだらけの神様校長先生かと思いきや、スゴい能力を見せてくれましたよ!
「あー、ほいっ」
という神様の杖の一振で、グラウンドが特設コースにぼぼん!と早変わり。
一周800メートル程度のアスファルトのコースが一瞬にして出現です!ビックリですよー!
陸上競技場のトラックが一周400メートルだから、単純に考えて2倍になったカンジ。
観客席は無いけど校舎が観客席みたいなものだから、2階以上の高さならコース全体を見渡せる。
現役女神の原付バトル、ってコトで校舎の窓際には多くの生徒が見物してますよ。約9割といったトコロかな?
ただの原付レースだとここまで生徒は集まらなかっただろうなー。女神効果ってヤツですよ!
こっちの世界でも原付バイクの法定速度は時速30km。
異世界って割に原付バイクが存在するってのにもビックリですよ!この異世界には、まだまだ知らないコトが沢山ありそうです!
コース内は無制限とは言え、たかが原付。どノーマルの原付バイクがどんなに頑張っても最高速なんてたかが知れてる。
ぶっちゃけ、女神様が原付バイクでレースっていうのが珍しいだけかな?
『スタート、5分前』
とのアナウンス。
「両輪ドリフトって知ってっかヒカリぃ!」
右手でアクセルを煽りヴァインヴァインとエンジンを吹かすフィルフィーは眼を輝かせて、めっちゃ楽しそう。
やっぱヤンキーに原付はよく似合う!
両輪ドリフトは聞いた事あるしゲームでは当たり前だけど、非力な原付でそれはムリでしょー?MotoGPとかスーパーバイクでも出来る人って少ないよ?
「原付バイクでそれは無理じゃないの?」
「へへー。まあ、見てなって!女神のチカラを見せてやっからな!」
ニターリと悪魔の微笑みですよ、原付女神フィルフィーマート!
またなんかやらかさなきゃいいけどっ。
「負けませんわ!ですわっ、フィルフィーさん!」
「上等でい!かかって来いやぁ!ペリ子!」
1周のみの真剣勝負。
なんと!これには女神ポイントもかかってるそうで。
忘れるところだったけど大事ですよ女神ポイント!フィルフィーの昇格に大きく関わってきますからね!
勝てば100ポイントゲット。負ければ持ちポイントの3パーセントのマイナス。
フィルフィーは持ちポイント自体少ないから痛くも痒くも無いだろうけど、ペリメール様は……確か約9000ポイント、の3パーセントは……270ポイント!でかい!これはでかいですよペリメール様!
勝っても100ポイントしか貰えないなら、ペリメール様、ハイリスクローリターンですよっ?
なんでこの勝負受けたのかなっ?断れなかったのかなっ?
「3ない運動って知ってっかヒカリぃ?」
「えっと、確か……」
「ちげーぞヒカリ!『引かない!ビビらない!チキらない!』だ!」
まだ言って無いのにまたそんなデタラメを。ビビらないとチキらないは意味がかぶってないか?
『スタート、1分前』
とのアナウンス。
「じゃあ、頑張ってね二人とも!」
「ペリメール様っ!ご武運をっ!」
と、俺とワタナベさんがエールを贈ります。
「おう!」
「見ていて下さいねっですわっ!」
俺とワタナベさんがコースの外に出ると、まずは1周のウォーミングアップラップ。タイヤを温めたりコース内チェックをしたりするヤツだ。
本格的だけど原付バイクレースですよ?大袈裟じゃないのかなー?
コースを1周して、するするっと2台の原付バイクがスターティンググリッドに着いた。
徐々に高まる緊張感。スタート前って見てる側も緊張するよね!
たとえ原付バイクとは言え、ね!
5つのレッドシグナルが点灯。1つずつ消えていき……3、2、1。
シグナル、オールブラックアウト!
両者アクセルワイドオープン!
ヴァゴォォォーン!!!!
「いっけえええっ!」
「いきまあすですわぁぁっ!」
突如轟く、空気が激しく震動するほどの爆音!校舎の窓ガラスがビリビリと音を立てる!
うわ!!耳の奥が痛い!
「え!?」
ウソだろ!?
爆音と共に前輪を浮かせてロケットのように1コーナーへとぶっ飛んでく二人!
こんな凄いパワー!もう原付じゃない!
原付の姿のモンスターマシンですよ!
ドラッグレースですよ、これ!
これがっ!フィルフィーが言ってた女神の力!原付バイクをモンスターマシンに変化させちゃう女神の力!!
マジでスゴいっ!
「いやっっほー!!」
なんて楽しそうなんだフィルフィーは!
って、え!?オーバースピードじゃないのっ!?
あんな速度じゃ曲がれない!そう思った次の瞬間!
キュッ!キュウウウウッ!と、響くタイヤのスキール音!
うおおっ!これはっ!カウンタードリフト!?
リアタイヤを滑らせて車体を一瞬右に振り左側へフルバンク!
原付の限界を遥かに超えてますよコレ!タイヤからスモーク出てますよ!
二人とも左足を前に出してお股おっぴろげでアクセル全開!
投げ出した左足の靴底からは火花が飛び散ってますよ!
カッコイイ!なんだこれ!
両者並んで立ち上がり次のコーナーへ突っ込んでいく!
フィルフィーの方がタイヤ一個分前だけど、イン側にいるのはペリメール様!
二人とも1コーナーで無理した分2コーナーは無難にやり過ごし、短い
「やるじゃねえかペリ子っ!腕はなまってねえなっ!」
「ツッコミのペリメールの名は伊達じゃありませんわよおっ!くっちゃべってる余裕があるとは流石ですねフィルフィーさん!」
アクセル全開で横並びになって会話してる!
凄すぎますよ女神様っ!
あ、ちなみに二人のヘルメットにはマイクが仕込んであって会話は会場に流れてます。
ヴァゴォォォーン!!
3コーナーへ向けてアクセル全開!加速も最高速の伸びもどちらも同じように見える。
イン側にいるのはペリメール様!
普通に考えればイン側有利だけど、フィルフィーは引かないだろうなっ。
と思ってたんだけど!
コーナー手前でフィルフィーがスッとラインを変えた。
立ち上がり重視!?ただの突っ込みバカじゃない!
ということは次の最終の4コーナーのイン側狙ってるのか!
ペリメール様は3コーナーを速度を落とさずに少しドリフトしながら回る。
対してフィルフィーはタイヤを滑らせないでスムーズにコーナーをクリアした。
狙いどころはやっぱり最終の4コーナー!
ヴァゴォォォッ!!
両者フル加速!やっぱりフィルフィーの方が若干立ち上がり速度がいい!
目前に迫る最終の4コーナー。前にいるのはペリメール様だけどイン側にいるのはフィルフィー!
「うらああっ!」
ほんのわずかな隙を狙ってフィルフィーがイン側に飛び込んで前に出た!
お股おっぴろげで前に出ましたよー!
二人とも前後輪がズルズルと滑ってる!二台が接触寸前の両輪ドリフト!
なんだこれ!?
SUGEEEE!!
「そのコーナリングはなんですかフィルフィーさん!カメさんのように遅すぎてハエが止まってますわよぉ!」
「しゃらくせえ!カメはオマエだペリ子!」
フィルフィーは最終コーナーの突っ込みで前に出たはいいけど立ち上がりで遅れそう!
思った通り、直線で若干フィルフィーの加速が鈍る。ゴールラインまでは距離があるから、ペリメール様は前に出られるかも!
正直、俺はどっちが勝ってもいいって思ってたんだけど。
二人の熱い走りを見て
「どっちも勝ってぇ!頑張れー!」
ってワケわかんない事口走ってた。
両者フルスロットルで
ドァゴォォォーン!!
フィルフィーの加速が鈍った分、やっぱりペリメール様の方が伸びがいい!
スッとフィルフィーの横に出るペリメール様!
ゴールラインまではあと僅か!
「うらああっ!」
「ですわぁぁぁっ!」
二人とも、スロットルグリップがねじ切れるんじゃないかってくらいのワイドオープンで直線を駆け抜ける!
ヴァゴォォォーン!!
震えるよ空気!ドキドキするよ俺の胸!校舎の生徒からも黄色い声!そのほとんどがペリメール様を応援する声ですけども!
ゴールラインまで横並び!
そして、チェッカー!
僅差過ぎてどっちが勝ったかわからない!
俺の目には、二台ほぼ同時にゴールラインを駆け抜けたように見えた。写真判定じゃないとわからないくらいの僅差!
クールダウンしながら戻ってくる二人もどっちが勝ったのかわかっていないみたい。
でもヘルメットの中の二人の目は『出し切った』感で満足そうだ。
たった1周の、たった数十秒の勝負だったけど、スゴかった!感動した!
ていうかね。
コレ、交通安全教育になってるんですかね?
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