編入生への洗礼!?
……名前を呼ばれたら元気良く返事と挙手、だと!?
えー!?挙手はヤバい!
お着替えガチャで衣装チェンジしちゃったら、いきなり目立ってしまうじゃないですかっ!
目立ちたくないフラグは伊達じゃない!ってコトなのか!?イヤ俺は!
目立つ訳にはいかないのですよー!
例えばバニーガールにお着替えしちゃったら!
全校生徒の前に、っぽん!という軽い音と共に突然現れる男の
幻聴が聞こえてきますよヒソヒソとっ!
『やだあの子ヘンタイよっ!』
『何なのかしら関わりたくないわっ』
『学校を何だと思ってるのかしらっ?』
くあっ!ツラいっ!ヒソヒソとだけど聞こえるような悪口はココロにぐっさぐさ刺さりますよ!
それならSレアの騎士の甲冑では!?
全校生徒の前に、っぽぽん!という軽い音と共に突然現れる、甲冑が重すぎて動けないへっぽこ騎士!
またしても幻聴が聞こえてきますよ、ヒソヒソとっ!
『やだあの子ヘンタイよっ!』
『何なのかしら関わりたくないわっ』
『学校を何だと思ってるのかしらっ?』
『動けないみたいだからタコ殴りにしましょうかっ』
くあっ!初日からタコ殴りにされるのはイヤだっ!
どーしたものですかねコレは!
勢い良く挙手でスキル発動するんだから……
とりあえず、名前呼ばれたらそーっと、静かーに手を挙げてみようっ。
勢い良く挙手しなければお着替えガチャスキルは発動しないハズ!と思う!
「えー、まずは。女神育成コースに講師として編入した3年生、ペリメール=アコルディオーネ君」
「はいっ!ですわっ!」
キラキラりーん!って音が
パチパチパチパチとペリメール様に拍手が贈られる。羨望の眼差しと共に反感の眼差しっぽい目をしてる子が何人かいる。
もしかして魔王育成コースの人達かなっ?
「うむ。良いお返事じゃ。えー、続いて。魔王育成コースに編入した3年生、フィルフィーマート=チェインストア君」
シーン。と静まる体育館内。
アレ?フィルフィーはドコ行った?さっきはペリメール様の銀色の髪の前にプリン頭が見えたんだけど。
「んー?フィルフィーマート=チェインストア君?」
「ここっすよ、神様あ!」
バシーン!と鳴り響く竹刀が壇上の床を叩く音!
え?フィルフィーが壇上に上がってるっ!いつの間にっ!
「あたしはぁ!フィルフィーマート=チェインストアっつうモンだあ!クロジョでの
再びバシーン!と竹刀の音。その音に驚いて何人かの子がびくっと肩を震わせた。
ナニをぶちかますつもりなのさフィルフィーは。初日からイロイロとやってくれますよ、全く。
さっさと降りればいいのに、竹刀をビシィッと生徒達に突きつけて。
「こんなかでェ!一番つええヤツぁ誰だあっ!出てきてタイマンだあっ!」
またナニを言い出すのかと思ったら!
「こらフィルフィーマート」
ごづっ!
「あだっ!」
背後から神様に脳天をグーで殴られて膝から崩れ落ちるフィルフィー!
……面白い。
「ナニやっとんじゃい、まったく。さっさと戻りんさい」
「……うっす」
神様校長先生に怒られて、ちょっと涙目で周囲にメンチ切りながら壇上から降りてきましたよ、おとなしく。
と、思ったら。
「ああん!?ナニ見てんだコラっ」
イヤ、誰も目を合わせようとしてませんて。
コイツとは関わりたく無いって空気が充満してますよ。
ただね!目立ってます。目立ってますよフィルフィー!でも、これはっ!悪目立ち!
ペリメール様の高貴な目立ちとフィルフィーの悪目立ちで俺は煙のような存在ですよ!
いいね!
これなら俺は目立たない!なおかつ、オーラ消しは得意ですからね、俺!
「あー、続いて。勇者育成コースへ編入した1年生、コウダヒカリ君」
きたっ!ドキドキですよー!
俺はおそるおそる、そーっと、そーっと右手を挙手。スキル発動しませんようにっ。
そして元気良く返事!
「……はぃ」
――声ちっさ!
聞こえますよ女生徒達のココロのツッコミの声がハッキリとー!
でもいいんです!作戦は大成功ですよー!
お着替えガチャスキルは無反応!
イエス!よし!グッジョブ、俺!
フラグなんて無効だって事を証明してみせましたよ!
「あー、コウダヒカリ君はシャイなんじゃの。えー、編入生は3人共に、多いに学び、遊び、友達を作り、学校生活を、あー、楽しんでもらいたいと、思いまする」
よかったあああああー!
無事、乗り切ったああああー!
心が熱くなるような展開?
ワクワクどきどき大冒険?
要らない!要らないんですよ、そんなものおおお!
何も起こらずのナニがいけないって言うんですかー!
目立たなかった!よし!
俺は心の中で叫んでた。頭の中で、何度も、何度もガッツポーズを繰り返してた。
そのせいで上の空になっちゃって、ここから先の神様校長先生の話は全然覚えが無かった。
「えー、続きまして。来週の黒竜王との戦いについての考察を――……」
◇
あまりにも思い通りに目立たなかったものだからもう、嬉しくて嬉しくて、神様校長先生の言葉は耳に入ってこなかった。
なんか、ファンタジーっぽい言葉を言ってたような……?
はたと気付けば全校集会が終わり、生徒達はそれぞれ教室へ戻り午前の授業へと向かう。
3年生から体育館を出る際に、ペリメール様がニッコリ笑顔で俺に手を振っていってくれた。
はー、ホント、優しいお姉さんってカンジです!
フィルフィーは神様に殴られたアタマを自分でなでなでしながら仏頂面です。まったくもー、ちゃんと懲りなさいよねヤンキー女神。
俺達もぞろぞろと教室に戻ってホームルーム。本格的な授業は2時限目から。
イヤ、ホントに高校生になっちゃった!って今さら実感してますよ!
俺の席は窓際の前から3番目だ。編入生って一番後ろの席になりがちだと思ってたけど、ここならイイ感じで目立たないんじゃないですかっ?
と、席に着いた俺の肩をポンポンと叩く後ろの子。
おっ、いきなりコミュニケーションを図ってきましたよ!俺は人見知りな方だけど、コミュ障ってほどでも無いと思うのですよ。
振り返ると、黒髪を七三分けにしたおさげの子がニッコリと微笑んでる。いかにも真面目そうで優しそうな子ですよ。
「私はクラス委員長のタナカエツコ。女神育成コースだよ。わかんないコトがあったら、エンリョ無く聞いてねっ。コウダさんとは仲良くなりたいなっ。よろしくねっ」
と、コミュ力高そうなタナカさん!
こっ、これがジョシコーセーってヤツなのですかっ!?
なんかスゴくフレンドリーで親切なんですけどっ!意味がだだ被ってますけどね!まあ、委員長なら当然なのかもしれないのかなっ?
「あ、コウダヒカリですっ。こちらこそよろしくっ」
「コウダさんは来たばかりだから職員室が何処とかわからないでしょ?教えてあげる!一緒に行こっ!私も職員室に用事あるから!」
人間には『知らない人には教えてあげたくなる』脳の働きがあるって、動画サイトで見たコトあるぞ。
タナカさんは数十枚のプリントを手に、俺を職員室へと案内してくれた。
ん?
なんか話の流れで職員室に行くコトになってるけど、俺は別に用事は無いんだけどな……
って思ってたらば。
「あーっ!教室に忘れ物!ごめんねコウダさん!このプリント、職員室まで持ってってくれないかなっ?」
「え、でも、職員室の場所ってドコか……」
「そこの角をキュッと曲がって、真っ直ぐシュって行ってドーンと当たったとこが職員室だから!簡単でしょ?」
ドーンて。それ事故ってない?擬音が多いな、タナカさん。
「担任はサトナカ先生だからっ!じゃあねコウダさん!また後で!プリントお願いね!」
と、半ば強引に俺にプリントを渡すと、タナカさんはすたこらさっさと教室へと戻って行きましたとさ。
って、おい!
これはっ!
仲良くなりたいとか言いながら!
職員室の場所を教えてあげるよと言いながら!
俺にプリント押し付けて行っちゃいましたよ、タナカさん!!
『教えてあげる』と『せっかく教えてくれるなら』のビミョーな心理が絡み合った高度な作戦だったのかっ?
うーん、なるほどそーですか。
こんなコトあるんだなー。ふうむ。
これがっ!途中編入生への洗礼ってヤツですかっ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます