第26話 謎の獣人

 森の朝はとても静かだ。せいぜい聞こえても鳥の鳴き声や、風で木の枝が揺れる音くらいだ。

 だからこそ、違和感のある音には気が付きやすくなっていたらしい。

 明らかに森の朝には似つかわしくない、木に何かが激突して大きく揺れる音が聞こえた。

 外を見ると、まだ朝の霧が残っているような時間だ。


「えぇ……動物でもそんな勢い良くぶつかったの聞いたことないわよ」


 しかし困った。よっぽど疲れてない限りは、この時間に起きたらあたしは二度寝はできない体質をしている。

 外で何があったか確認しておこうかな。

 あたしは適当にメイスを片手に持ってから外にでて、音のした方向へ向かう。


「この辺だと思うんだけど……」


 霧はそこまで濃くないから、視界が取れないってことはないから見つけられると思ったんだけど。

 周りを警戒しつつゆっくりと周辺を見回ってみる。

 そして、歩いている最中で何か妙に柔らかい物を踏んだ。


「んぐっ……」


 しかも、変な声まで聞こえたんだけど。

 恐る恐る足元を確認してみると、銀色の尻尾がそこにはある。よく見れば周りにも似た尻尾は数本見えて、目でおっていくとその体を捉えた。

 服がボロボロにはなっているけれど、見た感じは狐の獣人種のフォックステイルかな。

 ただ、一般的に黄色とかが多い種族だった気がする。まあ、本物にあったことがないから正しいかはわからないけど。それとこの種族は獣人種といえるけど、大枠で見ると魔族領地に住んでて人族とは敵対してることも多かったような気がする。

 体を確認してみると、古い傷が多くあるが新しい傷も幾つか存在していた。


「何があったのよ……血はでてないというか止まってるけど」


 見つけちゃった側としては放っておくのもな。冒険者の亡骸とかならお墓を作ってあげるだけで済むのに。

 あたしはどうにかその人を肩に担いで家まで戻ることにした。


 家に戻ってひとまずあたしのベッドに寝かせる。

 流石に人を担いで扉の開閉を静かにする余裕もなくてリリアちゃんも起こしてしまった。


「あ、あの、その人誰?」

「よくわかんないけど森に落ちてた」

「もしかして朝の物音?」

「多分そうだと思うのよね。ひとまず手当するから手伝ってくれる?」

「わかったわ」


 しかし、ひとまずうつ伏せで首横にする感じで寝かせたけど胸あったし女だよね。

 胸を下にするのもあれなんだけど、尻尾を下にしていいかも正直わからないのよね。間違って踏んじゃった時の反応的に痛みも感じるみたいだし。

 とりあえず家にあった薬やら育ててみた薬草を、知ってる使い方で可能な限りの治療をしてみる。知らない使い方はしないほうがいいと思う。

 古い傷と新しい傷は、前世の自分の体で見慣れてたし判断つけられるのは幸いだったな。


「んあぁっ」

「だ、大丈夫なの?」

「普通に傷口に染みて痛いだけだと思うから、よっぽどやばそうじゃないなら我慢してもらうしかないわ。幸いにも意識自体はないみたいだし」

「それって、意識あったらやばいってことじゃ」

「まあ、意識あったら耐えられる性格じゃない場合は暴れるでしょうね」

「があっ!」

「はいはい、我慢しなさい」


 体中の傷を処置できるまでに、そこそこ時間がかかってしまった。

 しかし、この人どこから来たんだろう。

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