第3話 ギルドショップで換金
通りを進んでいくと歩いている人たちの雰囲気が変わった。
人の種族が多種多様になって、冒険者として武器や防具を装備している人が増えた気がする。
そしてしばらくして大きな建物の前にたどり着いた。入り口に立てられている看板には『冒険者ギルド』の文字が刻まれている。
「冒険者ギルドの向かい側」
体を反転してみると、そちらにもそこそこ大きな建物があって人が出入りしている。
その多くは冒険者や旅人な事からギルドショップだと考えてあたしも人の流れに混ざって入店した。
ギルドショップの中は人で溢れているけれど、それと同じように受付がかなり広く作られている。さすが皇国の首都に作られた店なだけある。
あたしは少し待ってから空いた女性店員の受付に入った。
「ようこそ。本日はいかが致しましたか?」
「これを売りたいのだけれど。大丈夫かしら?」
「お預かりします。今、換金額を試算しますので、この魔石をもってしばらくお待ちください」
あたしが売るためのものをいれた荷袋を受け取ると代わりに手のひらサイズの赤い魔石を渡される。
「試算が終わりましたら魔石が光りますので、またこの受付に」
「わかりました」
すごい便利な魔石ができたものだ。数百年のうちに誰かが研究したのか、それともこの大陸では普通なのか。
特に外でやることもないため店内にあった椅子に座って時間を潰すと、思ってたよりもかからずに魔石が光った。
「本当に便利……どういう風になってるの?」
気になってしまう。個人での使い道が思いついているわけじゃないけど、今まで攻撃とかの手段として使う物のが多かった魔石が生活に根付いている。
なんとなく魔石を眺めつつ受付にいくと、何故か見知らぬ男性が一緒にいた。
「あ、あの、お客様。1つお伺いしたいことがあるのですか?」
「はい?」
何故か店員さん達はふたりとも緊張した面持ちだ。
「これは本当に換金するということでよろしいのでしょうか?」
「もちろん。あたしだと使いみちが思いつかないですから」
「そ、そうですか。では、ひとまずこちらの額になります」
そう言って出された物を確認すると思っていた以上の値段になっていた。まあ、宝石とかも結構あったから妥当なのかな。
基準とかがわからないし文句付ける理由もない。
「これで大丈夫です」
「ありがとうございます。で、では、少々お待ち下さい」
女性はそう言って後ろに下がっていく。
あたしはそのままお金がここで渡されると思って待っていると男性店員が一度咳をしてから正面に移動してくる。
「お客様。わたくしの方からも少しお話があるのですが、お時間よろしいですか?」
「あたしですか?」
「はい」
まあ、急いで帰る理由もないしいいかな。
「ありますが」
「では、こちらへ」
男性はそう言うと受付のカウンターの一部を開けて中へと招いてくる。
中へ入ってついていくと、小さな個室に案内された。
「どうぞ、お座りください」
椅子を引かれて対応されるので素直に座ると、女性店員もその部屋へやってくる。
「改めまして、わたくしこのギルドショップの店主をしております。クラウン・マクマダスと申します」
「ご丁寧にありがとうございます。えっと、あたしは――」
そういえば誰とも関わってこなかったせいで自分の名前を忘れかけていた。たしか『転生前の名前はジーグで男らしすぎるので名前を授けます! あなたの名前は――』と家に書き置きされていた。
「アンジュ・シエーラといいます」
どういう理由でこの名前になったかはわからないけど。ジーグよりは絶対に今の体にあってる。ありがたく名乗らせてもらおう。
あれ、でもこの場合はあたしの母親って女神さまになるのかな。
「シエーラ様。まずはこちらが換金したものになります」
若干思考がずれていると女性店員さんが手に持った袋を渡してくる。中を確認すると先程の額がしっかりと入っていた。
「ありがとうございます」
「それでなのですが、こちらの品はここでは買取ができないのですが、何かはご存知ですか?」
マクマダスさんはそう言うと、こぶしくらいの大きさの金属の欠片を机の上にだす。
そういえば、こんなのも入れたっけ。
「いえ、金属の塊としか……形が悪いとかですかね?」
「そうではありません。この金属ですが、現在国が求めているほどの希少な金属で、ここまでの大きさはかなり稀なのです」
「へぇー」
そんな物をあたしは持っていたんだ。
「それで、これを換金するとなると城の1階に、これを買い取りしている場所があるのでそこに行ってもらうことになるのですが」
「どうかしたんですか?」
「いえ、先程も言ったとおり、ここまでの大きさはお目にかかることが殆ど無いので、何も知らずに1人で行くと誤解も生みかねないと思います。なので、今からわたくしと共にそこへ行っては頂けないでしょうか?」
誤解っていうと、どこかから盗難してきたんじゃないかとかそういうことか。たしかにそれはあたしとしても嫌だな。
「ありがとうございます。そういうことならば是非お願いしたいです。あたし、これのこと本当に知らないので」
正直、言われてもピンとこない。目の前にあるこれをあたしは金属の塊としか認識ができない。
「では、参りましょう。君もありがとう。業務に戻ってくれ」
「わかりました」
「では、シエーラ様。こちらへどうぞ」
マクマダスさんに案内されてあたしは、転生後初めて城へと足を向けることになった。
勇者としても最初に呼ばれた時以外は旅し続けていてあまり行かなかったな。
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