57. 3日目・信者ができたよ。

「我等はなんだ?」


「「「ミューちゃんの忠実な信徒です。」」」


「ミューちゃんの敵は?」


「「「我等の怨敵、心臓を抉りその血と命、魂をミューちゃんに捧げます。」」」


「ミューちゃんの願いは?」


「「「我等の願い。全力を持ってかなえます。」」」


3日目の早朝、危険人物達の心は1つに纏め上げられてしまっていた。


どうしてこうなった?ミューちゃんに狂信者ができてしまった。


何を間違えたのだろうか?原因はわかってる。テンリさんだ。僕はこの人を読み間違えてしまった。


お猿たちのスクショをそれなりの数を見せて暖まった所でミューちゃんのスクショを見せた。危険人物3人は言わずもがなのリアクションで僕は勝ちを確信した。


しかし、誤算があった。テンリさんだ。彼女は僕の種族を知っている。そして、色んな情報を持っていたのだろう、結果としてオープくんと同じ結論にたどり着いてしまった。


彼女にミューちゃんが女神だとばれてしまった。そして、可愛いと女神が合わさり彼女のなかで庇護対象と崇拝対象が同時にできてしまい、暴走した。


そこからは、酷かった。テンリさんは、ミューちゃんのスクショで興奮している危険人物達に「この子は女神だ!我等が守るのだ!」と声高々に主張した。


女神という事実は半信半疑で受け止められていると思うけど、洗脳に近い【守る】という意思の植え付け。言葉巧みな扇動は宗教のできる瞬間を見ているようだった。


そうして彼女達、危険人物3人は夜が明ける頃には立派な狂信者になっていた。


ブレーキがアクセルだと気づくのが遅すぎてしまった。


「メープルさん、危険人物って3人だよね?」


「私も予想外よ。彼女は普通だと思ってたの。」


時すでに遅し、気付いた時にはもう手遅れだったので、前向きに考えよう。


考え方によっては強力な味方ができたと思ってもいいかもしれない。あの感じだとミューちゃんを害することなんてできないだろうし、現状で聖域に焼かれていないので悪意が無いのはわかる。


「ミューちゃんを見たらどうなると思う?」


「そうね~、あの感じだとひれ伏すんじゃないの?」


「あー、ありえるね。嫌がりそうだな~。」


ミューちゃんは敬われることをあまり好ましく思っていないようなので、多分この調子の彼女達を合わせると嫌がられるかもしれない。下手したら逃げ出すかもしれない。


「おーい、みんな少しいいかな?」


教義を復唱している狂信者達へ声をかける。


「これは、セト様、何かございましたか?」


テンリさんは、僕のことを様付けで呼ぶようになってしまった。使徒様と最初呼びそうになっていたのを全力で止めたらこうなってしまった。


「もうすぐミューちゃんが起きてくると思うんだけど、絶対に敬ったりしないでね。下手したら泣いて逃げちゃうかもしれないから。」


「なっ!なんてことだ。この思いを態度に出すことが出来ないというのか、だがミューちゃんに嫌われるなど考えただけでも死んでしまいそうだ。」


重症過ぎる。本人を見ていないのにこの域に達するなんて、合わせたら倒れるんじゃないのかな?


「本人が見ていない所でなら大丈夫だから。」


「ああ!使徒様のご配慮に感謝致します。」


ちょっと!「使徒様」って呼ばないで。


「へー、使徒様ねー。」


ニヤニヤしながらメープルさんが話しかけてきた。


「【セト様】と聞き間違えたんじゃないの?」


ほら、きた。語感が似てるから誤魔化したけどあの顔は絶対に気付いている。


「まぁ、いいわ。そういうことにしたいんでしょ。」


「はは、まあ、そういうことで。」


協力してもらってるし、最終日に色々質問に答えてあげよう。時間があればだけどね、このままマイマザーが僕を放っておくとは思えない。


イベントの予定でいえば今日の午前中は決勝トーナメントの抽選、午後からは1回戦と2回戦。4日目の午前中に準決勝、午後に決勝と表彰式のはず。5日目がまるまる空いているのが、【何かある】と言っているようなものなのだ。

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