55. 2日目・お使いの条件

お昼を少し過ぎたくらいでメープルさんは帰っていった。帰るときに何度も振り返りながらミューちゃんを名残惜しそうに見ていたので、また近いうちに確実に来ると思う。


「ミューちゃん、この前話したお使いのこと覚えてる?」


「うん、おぼえてるよ。おにくとかおやさいをいっぱいかってくるの。」


ちゃんと覚えていたようでよかった。


「そうだね。眼鏡さんがお店を見つけてきてくれたから、明日お使いにいってくれないかな?」


「うん。いいよ~。」


あっさり了承の返事が帰ってきた。アイランドタートルでこの話をしたときには、ごねて大変だったのに、少し成長したのかな?


監視員達を付けるとはいえ、完全に一人でウロウロさせるわけにはいかないので、アブニールちゃんにお供をお願いしているのだ。今回のお使いは友達とお買い物感覚で楽しくこなしてくれればいいかな。


「ひまだね~。みゅ~~~.............きんとぐーでもふもふしくる~。」


お客さんが誰も来ない暇さに耐えかねたみたいだね。


「はいはい。何かあったら呼ぶからね。」


「わかった~。」


ミューちゃんはお店の2階へ行ってしまった。いつもの流れならモフモフしながらお昼寝タイムになるはずなので、僕は更に暇になってしまうわけだ。


「暇だー。」


やることも特にないので予選を写しているモニターでも眺めていよう。


『ーーーーー【スラストチャージ】【三段突き】【ワイドスイング】ーー』


おー。あれが技のコンボなんだろうか、突進で近づいて瞬間的な多段突きの後の広範囲の薙ぎ払い、火力を出すだけなら多段突きを連続で使用した方がいい気がするけど、コンボの威力ボーナスとか技のクールタイムとかがあるのかな?


まぁ、僕は【生命闘技】のスキルのせいで、皆が使える技が使えないんだけどね。そんなの気にならないくらいの優良スキルだから別にいいんだけどさ。だけど、他の人との会話のネタにならないのが少し寂しいけどね。


「あの人は、テンリさんですね。今日、話題になった【千輪花】の副マスターですよ。」


おっ!お使い先へ確認に行っていたオープくんが帰ってきたみたいだ。


「お帰り。名前近いけど姉妹かな?」


「ええ、妹さんらしいです。」


成る程。騎士みたいな格好をしてるけど妹さんはまともなのだろうか。


「失礼かもだけど、まともなの?」


「はは、ご心配はごもっともですけど、この方は問題ないですよ。いつもエンリさんを止めてるストッパーですからね。」


よかった。ストッパーが近くにいるのは良いことだね。


「それで、取り置きの方はどうだった?」


忘れないうちに聞いてしまおう。


「条件を出されました。」


無理を言ってるのはわかってるから、ある程度なら全然構わないよ。


「どんな?」


「モンスター食材は今のところあまり人気が無いみたいなので在庫品全部取り置きしてくれるそうです。」


やったね。大人買いだよ。ミューちゃんの不思議ポーチに全部入れて持って帰っちゃうよ。


「それとは別に売れ行きの良くない商材もまとめて引き取って欲しいらしいです。」


こっちが条件の方かな、まぁ、そのくらいなら全然問題ない。でも、何を引き取って欲しいかは聞いておこう。


「ちなみに物はなに?」


「有精卵です。」


......斜め上の答えが来たぞ。


「有精卵?」


「ラージカームコッコの有精卵です。」




コッコ?鶏かな?


「鶏?」


「ええ、大人しくて穏やかな性格のデカイ鶏です。卵のサイズも30cmくらいあります。」


あれだ、ダチョウサイズの鶏だ。


「モンスター?」


「一応はモンスターです。食用としてはあまり出回ってないみたいですが。野生で見たこともありますけど襲ってくることはなかったですね。」


なるほど、食材としては定着してないけど害がないということは知れ渡っているみたいだ。


「えーと、それは、育てろってことなの?」


「いえ、買った後は自由にしていいそうです。」


まずいね、ミューちゃんが聞いたら食べる方向には絶対にならない。


よしっ!考え方を変えよう、今後新鮮な卵が定期的にタダで手に入ると思うようにしよう。お世話はお猿たちやミューちゃんにも覚えてもらおう。うん、そうしよう。


「何個?」


個数は大事だ。100個や200個は流石に無理だからね。


「今のところは12個です。お使いまでに売れなければその数になりますね。値段は銀貨5枚です、卵一個と考えるといい値段ですね。」


許容範囲かな、値段も最大で金貨6枚なら問題ない。今回のお使いの予算は白金貨3枚(300万円)だからだ。


「予算内だから問題ないよ。」


「セトさん、その予算は異常ですからね。」


なんてことを言うんだ!余ったらミューちゃんのお小遣いとして残るんだから問題ないんだよ!





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る