54. 2日目・僕と友達の魔法と魔力

復活したメープルさんは、ミューちゃんを膝の上に乗せてニヤニヤしながら餌付けをしている。ようやく耐性が出来たみたいだ。


「はい、あーん。」


「あーん。」


インベントリにお菓子でも入ってたのかな?テーブルの上はお菓子で一杯になってしまった。


「そういえば、セトくんの装備って初期のやつよね。更新しないの?」


痛いところを突かれてしまった。怠けていた部分もあるけど素材はあっても腕と加工する道具が足りていないのが現状なのだ。


「ちょっとね、色々とたりてないんだよ。素材はあるんだけどね。そっちこそどうなの?今は見る限りそんなに良さそうな装備に見えないけど?」


メープルさんの出で立ちはちょっと上品な町娘といった感じかな。とても戦闘を行うような格好には見えない。


「ランダム転移だとしょうがないのかもね。今の私の格好は町用ってやつよ。流石に武器や防具を装備したままだと歩き回るにも動きにくいでしょ。」


うらやましい。僕も初心者村人スタイルを早く卒業したい。


話の区切りもついたので、予選を流しているモニターを眺めることにした。


『-ーーーー炎よ槍となりて眼前の敵を貫き燃やせ 【フレイムランス】』


モニターからは女性が魔法を使っている映像が写し出されていた。ちょっと真似してみよう。


周囲に放出して止めてある魔力を変換して炎の槍を作る。うん、簡単だね。よし、数を増やしてみよう。とりあえず5本追加だ。


「.......セトくん、なにしてるの?」


メープルさんが驚いたのか呆れたのかわからない感じで聞いてきた。


「今、予選してる人の真似をしてみようかなと。」


作り出した6本の炎の槍を空中で動かしながら質問に答える。


「ちなみにだけど、あの人知ってる?」


ランダム転移で繋がりの薄い僕にその質問はひどいと思うよ。当然知っているはずがない。


「さぁ、始めて見るけど、有名な人なの?」


「有名と言えば有名ね。一応プレイヤーの中ではトップクラスの魔法使いって言われてるわ。」


ふーん。そうなんだ。フクロウな先生やお猿たちを基準にして考えてしまうのがいけないのだろうか。


「メープルさんも魔法を使えるの?」


遊んでいた炎の槍を霧散させながら質問する。


「光よ我らを照らす灯火となれ エリアライト」


メープルさんの頭上に玉が現れ、ピカッと光って周囲が少し明るくなった。


「みゅ?!ぴかっとしたよ?!」


「あはは、ごめんね。ビックリさせちゃったね。」


急にピカッとしたので膝の上のミューちゃんが驚いたようだ。お菓子を食べる手を止めてしまった。


上位属性の光魔法みたいだ。広範囲を照らす照明みたいな感じかな。


「光魔法でいいの?」


「そうよ。私が使えるのはこれだけ。探索には便利なのよ。効果時間がそんなに長くないのが難点だけど。」


ふむ、これも真似してみよう。ピカッと光ってミューちゃんを驚かせるのは駄目なので、光の強さを調整できる玉を作る感じでいこう。


まずは、周囲の魔力を変換して、弱い光の玉を作る。できた、明るさで言えば常夜灯ぐらいかな。


「さらっとやらないでほしいわねー。でも、少し暗いんじゃないかしら。」


ほほう、お猿たちを満足させるために鍛えた魔法の腕を見せてやろう。調光機能と変色機能をイメージして追加で魔力を注ぐ。明るくしすぎないように注意だ。


じんわり明るくなって、緑色に色が変わった。木漏れ日と、枝葉の下にある緑色に淡い光を放つ照明が合わさってなんとも幻想的な雰囲気となった。


いい感じだ。少し小さくして数も追加しちゃおう。綺麗だから全体に適当にばらまいてみよう。蛍みたいだ。ゆっくりと点滅する感じの機能も追加してみよう。


「わー。きれー。」


ミューちゃんもご満悦みたいだね。維持していてもMPは減っていないので自然回復の範疇に収まっているのかな。少しの間このまま維持していよう。


「はぁ~、またとんでもないことを簡単にするわね。詠唱もしてなかったし。」


詠唱?そんなもの1つも知らないよ。そんなものよりも想像力を鍛えないと駄目だよ。そういえばメープルさんは光属性の魔法を使ってたけどどうやって覚えたのだろうか?上位属性のはずなのに基本四属性を覚えなくても使えるのだろうか?


「皆とかメープルさんは、どうやって魔法を覚えてるの?」


「そうねー。一般的なのは魔導書かしら。私もそうだし。」


おお!魔導書!レトロゲームでもよく聞く定番のアイテムだね。


「魔導書を読むと習得できるの?」


「運良く光の魔導書ってアイテムをダンジョンで手に入れたのよ。で、試しに読んでみたら、スキルとして光魔法を覚えた感じね。でもスキルLVが低いからさっきのエリアライトしか使えないんだけどね。」


なるほど、僕の使う【オリジンマジック】とは全然違うみたいだ。【魔力感知】、【魔力操作】、【魔力変換】この3つのスキルが使いこなせて始めて【オリジンマジック】がスキルとしてスムーズに使えるようになるのだ。


メープルさん達が使う魔法は、詠唱することによって決められたMPを消費し決められた効果を発動するものだ。レトロゲームのRPGと同じだね。


僕が最初に教わった、MP=魔力という知識が浸透してないのかな?ちょっと聞いてみよう。


「メープルさん質問。MPってなんだと思う。」


「また漠然とした質問ね。MPねー......うーん、魔法とかスキルを使うと減る唯の数値としての認識しか無いわね。」


フクロウな先生が涙しそうな解答が帰ってきた。


「スクショ以外の協力してくれるお礼を決めたよ。」


「ん?まだ何かもらえるのかしら?」


お菓子に夢中なミューちゃんを膝に抱えたまま楽しげに聞き返してきた。


「勉強だね。授業をするよ。」


「え~!一番聞きたくない言葉だわ。」


一気に嫌そうな顔になったね。アクト達兄弟3人とメープルさんは強制参加してもらうとしよう。


魔法の授業をするよ。フクロウな先生はいないけど青空教室を開校しよう。このままだと僕の魔法がチートと言われてしまう、完璧に伝えるのは無理でも取っ掛かりくらいにはなるはずだ。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る