48. 1日目夜~2日目・キコエナイヨ

聞きたいこと、別名オハナシという名の威圧感のある尋問は長時間に渡って続いた。


結果、ミューちゃんがばあちゃんに懐いて付いていってしまった。今日は、ばあちゃんの宿泊している場所でお泊まりするらしい。ご丁寧に【きん】と【ぐー】も回収していかれてしまった。


聞き出した情報が真実なら、ミューちゃんの今日のお宿は化け物の巣窟だ。


「もう、夜だよ。」


アクトたちも今日はもう休むらしく先程自分の宿に帰っていった。


「今日は閉店だね。」


今日の売り上げは、銀貨一枚。お客さんは、身内が1人のみというさびしい結果に終わってしまった。


「お店はついでだけど、暇すぎるね。」


最初からそこまで本気でやる気は無いにしても、もうちょっとどうにかしないといけないかな。


うん!切り替えだ!お店のことは明日、予選が終わってから考えよう。まずは今日仕入れた情報の整理をしていこう。


話によると、ばあちゃんの友人や知人が暇潰しで遊んでいるらしい。数人ほど名前を聞いたけど、出来れば関わりたくない。下手したら明日ここにミューちゃんを届けに来るのに付いてくる可能性もある。覚悟だけはしておこう。


そして、ばあちゃんがいるということは、じいちゃんも絶対にいる。じいちゃんがいるとすると、たぶんあの人達もいる。こっちは出来れば会いたい。


マイマザーの考えを予測してみよう。ばあちゃん達がなぜ【Ω】をやっているのか?それは僕が出した【要望】に運営が答えた結果なのだろう。だけど、レスポンスが早すぎる気がする........このイベントに間に合わせたかったのかな?


そう考えると、本戦の枠数が決まってないのもこれに関係があるのかもしれないね。


となると、本戦にばあちゃん達がシード枠みたいな感じで入っているのか、エキシビションみたいな感じで優勝者と戦う的な感じなのかも知れない。


どう考えてもマイマザーは、戦わせようとしているとしか思えない。.......これは考えた所でどうにもならないね。対応策が無いこともないけど、今日はなんか疲れたしもう寝よう。


店の2階にある部屋で休むことにしよう。明日は早朝から予選だ、念のため早く起きるようにしよう。


それでは、ゲームのなかだけど、おやすみなさい。




『-------か。痛いーー!-----だ。』


『-----いるのに。-----しろ!』


外がうるさい。結界に挑んでいる不届きものが未だにいるのだろう。昼より心なしか多いかもしれない。無視して寝よう。改めて、おやすみなさい。



朝だ、まだうっすら暗いけど。夜明けと共に予選が始まると言っていたので早く起きるに越したことはないと思う。というかうるさすぎてそんなに寝れなかった。ちょっとイライラする、予選にぶつけてやろう。


程なくして、空が白んできたくらいで転移が始まった。本当に日の出と共に転移させられてしまった。早く起きていて良かった。


転移した場所は、多分闘技場のなかなのだろう。辺りを見渡すと石畳のリングの上にいるのがわかった。大体30m四方くらいの正方形のリングみたいだ。その周囲には観客席もあり、結構な人数が収容できるようになっている。


「僕だけなのかな?」


他にプレイヤーが見当たらない。時間差かな?リングの中央にパンチングマシーンはあるけど。運営の人とか進行の人もいないけどやっていいの?

とりあえず近づいてみよう。


「おや?来訪者さんなのですぅ。」


パンチングマシーンの影からちっちゃい妖精が出てきた。なんか語尾がイラっとくるけど我慢だ。


「おはよう。君が案内してくれるのかな?」


「早く来すぎなのですぅ。ねむねむですぅ。でも、仕方ないのでやるですぅ。」


なんだろう、言葉にしがたい怒りが蓄積していく感じがする。


「簡易鑑定ですぅ。.............ぷぷ、LV1のクソザコさんですぅ。」


コノヤロウ、勝手に鑑定しただけでなくLVを見て笑いやがった。


「クソザコさんは、記念参加ですぅ。さっさとやって現実を知るといいですぅ。」


我慢だ、我慢。サクッとやって帰ろう。


「LV1のクソザコさんにも解るように簡単に説明してやるですぅ。マシンに攻撃を当てるかスキルを発動するとカウントが開始されるですぅ。」


ガマン、ガマン。


「マシンはLV100に設定されてるですぅ。ステータスは全て200に設定されているですぅ。クソザコさんだとかすり傷も与えられるはずがないですぅ。身の程をわきまえて諦めてさっさと帰った方がこっちも楽が出来るですぅ。」


.........殺っちゃっていいかな?


「ヤルヨ、コワレタリシナイカナ?」


怒りで口調がおかしいけど気にしない。殺っちゃうよ。


「ぷぷぷ、LV1のクソザコさんには絶対に無理ですぅ。やるならさっさとやるといいですぅ。そして、現実を知るといいですぅ。」


オーケー。絶対に壊す!!


全開だ。手加減なんかしない。


まずは、【生命波動】を発動。テキストには書いてなかったけど、検証の結果スキルLV×1%のステータスUP効果があることが判明している。次に【生命の力】をHPの99%を代償にして発動する。最後に【生命闘技】を生命波動を黒い棒を芯にして発動、武器の形状は戦鎚だ。


準備は出来た。とりあえず一発だ!体をひねって遠心力をつけて、フルスイング!!


ドゴオオォォ!!


パンチングマシーンは5m程後退したけど、破壊までには至らなかった。


「あわわわ、クソザコさん、やめるですぅ。本当に壊れるですぅ。」


ヤメナイヨ。ソレニ、ナニモキコエナイヨ。


追撃といこう。【黒い棒】で色々実験した結果。魔力を吸収させることが出来るという成果を得たのだ。属力により発現する効果が異なり、MPを多く注ぐことにより効果も増幅するとんでも能力だ。


今回は土属性の魔力を吸収させていく。効果はシンプルに重量の増加。【生命闘技】で作った武器には重さが無いので、重さで叩き壊す武器には少し不向きだったりする。


土属性の魔力を吸収して重さを増した戦鎚で追撃する。大事なのは遠心力とインパクトの瞬間の足腰の踏ん張りだ。


体をひねって重量が増した戦鎚を回す、更に遠心力をつけるために体ごと回す、グルグルと回す。一周回るごとにスピードが増していくのがわかる。おまけに地属性の魔法で重さも追加だ。


ブォンブォンブォン.......


よし!ここだ!回転を止めインパクトの衝撃に負けないように力強く踏ん張る。回転のスピードそのままにパンチングマシーンへ戦鎚を振り抜く。


ドグオォォ!!.........ズドン!!ガラガラ....


ホームラン!!客席に飛んで行った。だけど、まだだ、まだ壊れていない。


上がったステータスで客席まで一気に移動する、そのスピードを殺すことなく止めのフルスイング!!


ドバキャァ!.....プスブス.....バチバチ...


ミッションコンプリート!!客席にめり込んだ元パンチングマシーンは煙を上げて最初の形状がわからないくらい壊れている。うん、満足だ!


「ですぅ。ですぅ。怒られるですぅ。アルファリエ様に叱られるですぅ。」


ハッハッハ。存分に叱られるがいい。LV1を侮った酬いだ。









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