33. 様式美というやつです
「暗殺者とはどういうことですか?詳しい話を聞きたいのですが。」
ゴリラな師匠の「立派な暗殺者」発言について広場にもどってすぐにちょっと語気を強めて聞いてみた。
「なに、言葉のあやと言うやつだ。少年、今の自分のスキルで何ができるか考えてみるといい。姿は見えるが認識されることはなく、対象を倒すときも一撃で急所に当てれば【同化】の接触による認識も意味をなさない。それに、少年はあちらの世界でそのような技を体得しているのではないのか?」
「ぐ....」
反論できない。気配を消して相手に近づき一撃で仕留める。.....間違いなく暗殺者だ。しかもリアルスキルでばあちゃんから色々鍛えられてるから、できるかできないかで言えば、できてしまう。
「そんな苦々しい顔をするな。得た力をどう使うかは少年次第だ。おっと、忘れるところだった。少年にこれをやろう。うけとれ。」
師匠は、ローブの袖口から黒い棒を取り出してこちらに投げ渡してきた。
セトは 【黒い棒】 を手にいれた。
ちょっとレトロゲーム風に脳内変換してみた。こうでもしないと気持ちの切り替えができない。
なんだこれ?長さが40cmくらいかな、握りやすい太さですごく手に馴染む。
セトは 【黒い棒】 を装備した。
セトは 【黒い棒】 を振るった。
だが虚しく空を切っただけだった。
レトロゲームでお馴染みの流れを一通りやってみた。
「.....なにをしているのだ、少年。」
「様式美というやつです。で、これなんですか?」
「黒い棒だ。」
うん、それはわかってる。
「なんですか?これ?」
「黒い棒だ。」
うん。駄目だ。自分で考えろってことらしい。ひとまず鑑定してみよう。
黒い棒?
黒い棒らしきもの。対象とのLV差があるため鑑定不能。
はい。黒い棒でした。それ以上のことはわからなかった。
「鑑定できないんですが?本当になんですかこれ?」
「まぁ、気にするな。常に持っていると直にわかる時が来る。今後はそれを武器として使うといい。」
....この【黒い棒】が今後の僕のメインウェポンになるようだ。僕はNOと言える立場にいないので素直に従おう。さようなら【初心者のナイフ】そしてこんにちは【黒い棒】。
.......待てよ。「武器として」か、なるほど。
スキル【生命闘技】を発動、SPを10消費して、黒い棒を芯に刀を形成する。
「少しのヒントで気づくとは、なかなかやるな。」
どうやら使い方としては正解みたいだ。
「少年、その棒は我々では使いこなせないのだ。どうか役立てくれ。」
師匠は頭を下げながら、そう言ってきた。その言葉からはどこか悲しそうな雰囲気を感じた。
「頭をあげてください。大切に使わせていただきます。」
思い入れのあるものだろう。大切にしよう。
「それと、少年。鑑定できないのは我等も同じだ。フクロウでさえできないからな。唯一わかっているのは、【生命闘技】の媒体として使えることくらいだ。他にもあると思うが、実際のところよくわかっていないのだ。」
なるほど、師匠もからかっているわけではなくて本当に【黒い棒】ということしかわからなかったのか。これは、色々と実験と検証のしがいがありそうだ。ちょっと楽しくなってきたぞ。
「キャーーー。」
「ふむ、この子達も退屈してきたみたいだな。今日はここまでにしよう。」
お猿達が暇になって僕に登ったり、服を引っ張ったりしだした。このまま構わないでいると魔力玉が飛んでくる。
「ありがとうございました。ちょっと、歩きにくいから離れて。何かお菓子つくってあげるから。」
ログハウスに戻ってお菓子を作ろう。そろそろ主様の依頼も何とかしないとね。
バサバサバサ
「フクロウか。」
「ホー、セト君にあれを渡したのですかな?」
「ああ、少年は間違いなく適合している。」
「少し悔しいですな。我々オリジンで使えるものがいないというのも。」
「そうだな、だが、使えないものをしまっていても宝の持ち腐れだ。少年には頑張ってもらうとしよう。ミュー様のためにも。」
「ホー、ミュー様のために.....あの棒もミュー様から我々オリジンに下賜されたものだというのに我が身が不甲斐ないですな。セト君には頑張ってもらいましょう。」
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