『あなたに死刑執行をしてもらいます』僕先輩の論理学部
八重垣ケイシ
前書き
『あなたに死刑執行をお願いします』
こんな手紙が来たらどうする?
人の考える現実的というものは、実のところ薄っぺらい。現実的の的っていうのは、それっぽいという意味だ。科学的とは科学っぽいとものということで科学じゃ無い。論理的というのも論理みたいなもので、実は論理じゃ無い。
現実的とは現実っぽい、というだけで現実とは違う。現実と現実的とは、食べられる料理と見本の蝋で作った模型くらいの違いがある。
だけど人は自分の五感で感じたものしか現実というのは解らない。概念、想像、妄想と形の無いものに現実感は感じられない。
ただ、半端に頭が回る人は予想の範疇に納まりそうなことを、頭の中で考えて現実的、と言う。
頭の中に有るものが現実的で、頭の外に在るのが現実の違いとも言えるか。
その現実的と現実をごっちゃにして、その境目が解らなくなってる人も多い。そんな人ほど都合良く、現実はそんなに甘くない、現実とはそういうものだ、という言い方をする。
まぁ、考えないようにするために、どうでもいいことばかりを考え続けるのが、人が平穏に生きていくのに必要なやり方、というものなんだろう。
誰もが知らないままに、日々の忙しさにかまけていれば、デモも暴動も少なくて平和な世の中になる。やらなくてもいい無駄なことを、忙しい忙しいと言ってやったりやらかしたりしていれば、皆、平和でやっていけるというものだ。
現実に対する正しい対処の仕方は、目を逸らすことだから。日頃食べてるものの中に、本当は何が入ってるのか。何も知らなければ安心して食べられるだろう?
だけど、知らなくてもいいこと、なんてものに興味を持ってしまう奴もいる。俺とか、僕先輩とか。
知ったところで得は無く、知ったが故に生きにくくもなる。生き辛くもなる。息苦しくなる。そういうのがイヤな人は、さっきの『あなたに死刑執行をしてもらいます』なんて手紙は見なかったことにして、破って捨てた方がいい。
こっから先は、安穏と生きていくには知らない方がいいことだ。それだけ、忠告しとく。
と、脅しはしたが中身はたいしたことは無い。これは俺と僕先輩が、ただお喋りしているだけだ。二人の会話でただの部活動だ。
学校の放課後に、女子生徒と男子生徒が話をするだけだ。おっと、男と女だからと、恋愛ものなんかを期待されても困る。俺も僕先輩も、愛とか恋とか単なるエゴの話に興味は無い。興味があるのは現実だ。
事実は小説より奇なりと言うが。
現実よりも危なっかしいデタラメでふざけたエンターテイメントは無いだろう。何も知らなければ退屈平和で過ごせるものだが、この現実というものは、知ってしまえばバカバカしくてイカれてる。
ああ、前書きにはこれをつけておかないとな。
この物語はフィクションです、と。
取り合えずフィクションだと思っとけ。そうすれば、気に病むことも無いだろう。
前書き、終わり。
俺と僕先輩の論理学部、はじまりはじまり。
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