勇者46歳 ー魔王が先に死んじゃった。やることないから日本に転生。失った青春を取り戻せ!

はやしはかせ

第1話 十年経てば色々変わるを3回繰り返した男

 どうもみなさん。勇者です。

 今、魔王の城の前にいます。

 せっかくなので高台に立って腕を組み、魔王城を見下ろしてカッコつけております。


 どっかの国の王様から、宣戦布告してきた魔王を倒せやと命ぜられ、はや三十年。


 ようやくたどり着きましたよ!


 長かったなあ。十六の少年だった私もいまや四十六歳、おっさんです。


 それにしても魔王の城ってのはでかいですな。城門が大きすぎて近くで見ると視界に収まりません。


 手で押してもびくともしない。


 困った困った。

 門を開けないと中に入れません。


 仕方ないのでそこらに落ちている超でかい巨石を担ぎ上げ、投げてみました。


 え、そんな石、一人で運べるわけない?

 いえいえ、私も長いこと勇者やってますんでレベルはカンストしてますし、ちからのステータスは千を超えてますから。


 ドゴーンと大きな音。

 門には大きなへこみ。

 しかし開きません。

 魔法で封印してるんでしょうかね。


「うるさいなあ! 何よ!」


 城門の隣りにあったちっちゃなドアがバーンと開いて中から女の子が出てきました。


 紫色の肌に赤い瞳と黄金の髪。まさしく魔族の女の子です。


「いま忙しいんですけど?!」


「あ、すいません。勇者なんですけど……」


「は、ゆーしゃ?」


「はい。勇者なんですけど……、忙しいところすいません」


「何のようです……?」


「用というか、魔王はご在宅ですかね」


 魔族の少女はキョトンとしております。


「魔王? もしかしておじいちゃんのこと?」


「おそらく……」


「二十年前に死んでますよ」


「へ? 死んだ?」


 うーん、これはとっても予想外。


「一体誰に倒されたんです?」

「誰にも倒されてません。老衰です」

「あらまあ」

「おかしなこと言い出したときはもう百歳超えてましたから」

「あららら?」


 もしかして、私の冒険、これで終わり?


(続きます。期待しないで待っててね)

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