モンスターとの生活は難しい〜人間に擬態するモンスターが美少女化して俺に懐いたんだけど引き離すにはもう遅いようです〜

ザラニン

第1話 下校と追跡

「小説家になろう」でも連載しております。


 そこには、【モンスター】がいた。

 しかし、今俺の目に映っているのは、とんでもなく可愛い美少女だ。


 話の辻褄が合っていない、と思っただろう。

 だが、実際は間違っていないのだ。

 何故なら、目の前にいるのが、そのモンスターだからだ。


 おかしな事を言っているように思うだろう。

 しかし今この世界には、人間に擬態する能力を持つ化物【擬態モンスター】なるものが存在している。


 なので、目の前にいるこの少女は、モンスターが存在する人間の少女に擬態した姿なのだ。


「クッ……」


 中身は人類の敵であるモンスターだ。殺す事を躊躇う訳がない……ただ、そのモンスターが、

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4時間前……


 俺事、綾峰 隼人【あやみね はやと】は、学校の授業終了した放課後に呼び出されていた。


 どこかって? 勿論、教務室だ(泣)


「綾峰、なんで呼び出されたか。分かるよな」


 担任の鈴木原先生に尋問される。

 その恐怖の問いに、俺は恐る恐る口を開いた。


「えーと……授業中の居眠りで……しょうか?」


「それもある」


「提出率」


「それもある」


「なら、他に何かありますでしょうか? 人間関係も良好です」


「……いつまで誤魔化すつもりだ」


 ビクッと、俺は反応する。


「そういえば、今日テスト全教科帰ってきたよな。平均点は?」


「……そ、そんな事より、先生、今日はまた一段と美人ですね。若々しく見えます」


 必死に誤魔化す。

 少しでも機嫌を良くさせなければ、俺はこの世から消滅してしまう。


「綾峰……」


「……はい」


「焼死と溺死、どっちがいい?」


 あ、これ言わなきゃ死ぬな。


「平均22点です……」


「……はぁぁぁぁ」


 先生は大きなため息をつく。


 俺も流石にこんな点数を取ったら、目を背けたくなったさ。


「お前の将来の夢は、この関東第四都市の外で徘徊しているモンスターの殲滅を目的とした軍隊狩人ハンターズに入隊する事なのは分かっている。ハンターズの入隊に必要なのは、頭脳というよりもどちらかといえば身体能力だからな。お前は体育の成績だけはトップだから恐らく入れる。けどな、このままだと卒業が出来ないぞ」


 ハンターズの入隊する条件、ある程度の身体能力を有している、そして、高卒である事。

 なので、今のままだとハンターズに入れない。


「はい……」


「それに、当然だが追試不可避だろうな。もしそれも落ちると留年」


「り、留年だけは勘弁してくださいよ!」


「それは自業自得だろう」


「ど、どうすればいいんですか? 追試は結構早くにありますよ」


 俺は半泣きになりながら先生に訊く。


「その為にお前を呼んだんだ。今からお前に大量プリントを渡す。それを生徒完全下校時間である8時までに必ず終わらせて私に見せろ」


 すると、先生は引き出しの中に入れていたプリントが束ねてある冊子を取り出し、俺の手の上に乗っけた。


「お、重っ」


 俺はその冊子をパラパラとめくり内容を確認すると、そこにはあり得ない量の問題が記されていた。


「こ、この量をやるんですか?」


「そうだ。今が4時だから、8時までにな」


「こんなの終わる訳ないじゃないですか!」


「終わらせるんだよ意地でも。今まで怠けていた分をしっかりと取り戻してもらうからな」


 先生はそう言いながらニッコリと笑う。

 俺はその先生の笑みに恐怖を感じた。

___________________________________


4時間後……


「失礼しました」


 俺はマッハで終わらせたプリントを先生に渡し、教務室を退出した。


 すごく指が痺れている。

 今までの人生分の文字を超高速で書いたからであろう。


「はぁ、さっさと帰ろ」


 俺はスクールバッグを肩に掛け、自分の住むマンションへと向かった。




 今から50年前、世界各地で【ゲート】と呼ばれる謎の穴が出現した。

 そしてその穴から出てきたのが、モンスターだ。


 モンスター共は、その圧倒的な数で人類を押していき、世界の総人口を3分の1にまで減らした。


 窮地に立たされた人類は、街を【ビーコン】と呼ばれる装置で守り、絶滅を逃れた。


 そして、10年前、俺の住んでいた関東第三都市が陥落した。

 モンスターが目の前で家族を殺す様は、俺に怒りとトラウマを植え付けた。


 あれから10年、俺は17歳、高校2年生になり、ハンターズに入れるまで後3年まで来た。


 俺の野望は只1つ。モンスターを殺しまくる事だ。




「ん?」


 それは、疲れ果てた頭と体で、夕飯は何を食べようかなどと考えながら我が家へと帰っている時だった。

 ある光景が目に止まった。


 そこには、草むらを掻き分けている2人の警官がいた。

 こんな時間に逃げたペットでも探しているのか、とも思ったのだがその表情はとても強張っている。


「ッ? そこの君」


 そして、何故か俺に目をつけてきた。


「な、何ですか?」


「ここら辺で、モンスターを見かけなかったか?」


 モンスターを見かけたか? いやいや、こんな街中で見かけてたら俺こんなのんびり歩いてる筈ないだろ。


「見かける訳ないですよ。街の外ならともかく、街の中で見かけるなんてある筈がありませんよ」


「そ、そうだな。もし見かけたら、こっちに通報してくれるか?」


「いいですけど。何かあったんですか?」


「知らないのか? 実は今から2時間前、この近くで猟奇殺人が起こったんだ」


 殺人? 2時間前、俺は補習中だった。なら当然そんな情報持っている訳ない。


「だがその殺し方がどうもおかしくてな」


「おかしい? 猟奇殺人じたいおかしいと思うんですけど」


「串刺しの上に噛み殺されていたならどうだ?」


「え?」


 なんだその内容。確かにそんな事殺し方をするのは、モンスターくらいか。


「でも、もしそれがモンスターの仕業なのだとしても、なら何処からこの関東第四都市に」


「……不明だ」


「そうですか。分かりました、見かけたら連絡します」


「頼んだ」


 そう言うと、警官はその場を去っていった。


 その後、俺は少し警戒しながら、再び帰路を歩いていた。


 モンスターが街の中に? また関東第三都市みたいにならないよな?


 そう恐れながら歩いていると、


「ッ?」


 何か、小さいモノが俺の目の前を飛びながら横切った。

 暗くてよく見えなかったが、その形は明らかに人間ではなく、動物の形状でもなかった。


「まさか」


 さっき警官に言われた事などお構い無し。

 俺は横切っていった謎の影を追った。


 モンスターという確証は無いが、それを殺す為に……



次の投稿は本日3時頃の予定です

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