鉄躰召喚ドラゴンゲン
@alalalall
0.プロローグ
日の光が差さない地の下の巨大な部屋に、電球の光を浴びて彼らはいた。何十人もの白衣を着た研究者が物々しい機械に向き合って打ち込み、読み取り、せかせかと走り回っている。そして幾人かが、部屋の中心の大きな円形デスクにて膨大な紙束を読み漁りながらペンを走らせる薄髪白髭の老人に何かを報告している。
「機関銃の開発の進捗が……」
「装甲列車の具体的な運用についての説明を出資元の貴族が求めていて……」
「ジープに搭載する武装の実験で……」
老人は報告をひとしきり聞き終え、ペンを止めたかと思うと、顔も向けず彼らの持つ書類のスキマにペンを猛烈な勢いで走らせる。1分後、老人はペンを手元の紙束に戻す。
「以上だ」
「……っ!」
書類には隙のない完璧な指示が書かれていた。彼らは驚嘆しつつも一礼し、早足に持ち場へと戻る。やはり博士は凄いと1人が呟こうとしたその時、ドアが勢いよく開かれる。
「伝令!」
若い軍の兵士が息を切らしながら駆け込んできた。部屋中の声が静まり、兵士の言葉に耳を澄ます。兵士は老人へ向き直り、顔を青ざめながら大声で言う。
「ドラゴンです!」
ざわめきが場を包む。老人は手で他の研究者たちを制し、兵士に続きを促す。
「詳細は?」
「級は無名、数は1……そして、出現地点なのですが……」
「まさか、王都近郊か?」
「直上です!王都直上にて、召喚儀式中のクラッド学舎に向けて何らかの攻撃術を祈祷しています!」
30人の研究者の顔がみるみる内に青ざめ、そのまま気を失って倒れる。20人の研究者は腰が抜けてへたりこむ。10人の研究者は足がすくんで動けなくなる。老人以外は全員動けない。国を滅ぼす隕石が落ちてきますと言われたようなものだ。
そして、老人だけが笑っていた。
「君、ここまで乗ってきたジープでワシをドラゴンの下まで連れて行け」
「……は?し、死にに行くようなものですよ!」
老人はどこからともなく奇妙な手持ち砲と歪な砲弾が入った箱を取り出す。箱を兵士に無理矢理持たせ、己は砲を担ぎながらジープのある地上へと白衣を靡かせながら歩む。
「死ぬのは王立アイン技術研究所所長であるこの希代の大天才であるアイン・シュタインではなく、愚かなドラゴンよ‼︎」
秘匿された地下研究所への入り口に横付けされたジープに荷物を載せて飛び乗る。そして青ざめる兵士に権力を誇示して無理矢理発進させ、シュタインは高笑いする。
「『器』……いや、『機体』の力に誘われてやってきたか、無名の木端ドラゴンめ!」
「き、機体とは?」
「希望だっ‼︎」
ジープは、中世と近代が歪に混じる奇妙な町並みを猛烈に走り出した。
……数百年前、突如現れた6体のドラゴンと共にあらゆる怪物が湧き、全てを破壊し尽くした世界。
もはや人類の権威はもはや恐竜時代のネズミにも劣り、無惨にかき消えようとしている。
ここはエンドフィールド。ひとりの狂天才により歪に発展し、醜い最後の足掻きを試みる人類最後の国家である。
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