第31話 必要なのに尊敬されない仕事➀

 会社を辞め、フル出勤する三ヶ月目へと突入した。


 瀬奈は驚くべき事実に出くわした。

 いつもオープンの十二時から七時間程の勤務だったので知らなかったが、この店は深夜になるほど空いた。

 瀬奈は、風俗業は夜に繁盛すると思い込んでいた。


 歌舞伎町の夜は衰退しつつある。

 風営法が改正されて以来、風俗業界はどんどん儲からなくなっている。


 クローズの二十四時まで働き、送りの運転手から、その話を聞いた。

 運転手は外注だったので、無責任にあれこれ情報を流してくれた。


 そんな終電前の時間を盛り上げてくれるのは、飲み会の後にノリでピンサロに流れる若者達だった。

 ある晩、大学生の男子集団がベティーにやって来た。

 空っぽだったシートは、一気に満杯になった。

 待機室にいた女の子たちは全員フロアに出た。


 その中にはカレンもいた。

 よりによって瀬奈とカレンは隣同士のシートにつかされてしまった。

 隣だからといってプレイ中に交わる事は決してないが、瀬奈の心は妙にざわついた。

 もちろんカレンは気にしていない。


 ピンサロが初めてという、うぶな青年のシートに瀬奈はついた。

 ここがどういう場所なのか知ったかぶりして、ただ付いてきた彼は

「これからタイマンで飲むんですか?」

 と気の抜けた質問をしてきた。


 瀬奈が教えると、息を飲んだ。

 そして瀬奈の手を強く握り「よろしくお願いします!!!」と気合いの入った挨拶をしてくれた。

 瀬奈は素直な彼が可愛らしく、思わず笑みがこぼれた。


 彼は恋人以外と性行為をした事がなかった。

「彼女にバレたら浮気って言われるかな?わぁこれドキドキしますね!」


 その時、隣のシートから、興奮した男の声とカレンのハスキーな笑い声が飛んできた。

「ほんま可愛ぇぇ!スタイルも超いいし、モデルさんレベルやんけ!!」


 瀬奈はイラッとした。

 青年は、友人の声が聞こえた事自体に驚いたようで、気まずそうに笑った。


 すぐに瀬奈はリードした。

 横に寝そべりながらフェラチオし、自分のまんこも同時に攻めさせる為に股を広げた。

 正直、彼の触り方はとても不器用だった。

 瀬奈はそれでも、隣のシートのカレン達に聞こえるくらいの声量で喘ぎ始めた。

 青年のテクニックが若い彼らの中で、一番素晴らしいかのようにムードを盛り上げた。

 青年を喜ばせてあげたかったが、本当はカレンのプレイに勝ちたい一心だった。


 しばらくすると、彼は瀬奈の膣の中から、そっと指を引いた。


「ねえ……それ演技?」



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