にゃんこ星のお姫様が宅配便で届きました〜初恋の幼なじみに振られた俺のところに、宅配便で猫耳美少女が届きました!幼なじみのあの子をまだ好きなのは浮気だそうです
エリザベス
第1章
第1話 にゃんこは宅配便でお届け
『日本とにゃんこ星との国交樹立10周年を記念しまして……』
テレビから流れるニュースは全く頭に入ってこない。
俺はソファ―の上で横たわってぼうーっと天井を見つめていた。
『
『ごめん、まこと……その、やはり私はまことのこと幼馴染としか見れないの……だから、ごめん』
昨日の放課後、俺はずっと思いを寄せていた幼馴染の初音千奈美に告白した。
しかし、彼女は二回も謝って、俺の告白を断った。
なんか、今まで張りつめていたなにかがプツンと切れて、俺は糸の切れたマリオネットみたいにソファーの上で動けなくなっている。
今日は土曜日だからいいものを、もし平日だったら、俺は多分学校をさぼってただろう。
それほど、俺は千奈美のことが好きなんだ……
『それでは、姫様にインタビューしたいと思います~』
テレビってうるさいな。
そう思ってしまったけど、シーンとするのも気が滅入るし。なにより、今リモコンでテレビの電源を切るのも億劫だ。
失恋ってこんな感じなんだな。思えば、今まで俺は勇気がなくて告白したことがなかったな。初めての感情だから、どうしたらいいか分からなかった。とりあえず一晩は泣き続けた。
月曜日はなんて千奈美に声をかければいいのか。そもそも家が隣同士だから、その前に会っちゃうかも。
どんな顔して会えばいいのかな。
『私は結婚……』
ピンポーンっ!
誰? こんな時に訪ねてくる人って。まさか千奈美? それは……ないよね。
「おかあ……」
お母さんを呼ぼうとしたが、家にいないのを思い出した。そう言えば、今日お母さんとお父さんは何かのお祝いで買い物しに行ったんだっけ。
ったく、傷心中の息子をほっぽって外出するなんてつくづくひどい親だな。まあ、千奈美に振られたことは話してないけど。
心配かけたくないのもあるけど、千奈美とは家族ぐるみの付き合いだから、俺のせいで両家の関係がぎくしゃくになるのはいやだ。
ピンポーンっ!
しつこい。少しくらい待ってくれよ。
「はいはい」
無理やり体を起こし、だるく返事をして、俺は玄関に移動した。
インターフォン越しに宅配便の配達員らしい人が立っていた。
「あの……」
『宅配便です!』
やはり宅配便か。お母さんまたネットで変なものでも買ったのかな。前は「普段では食べられない果物の盛り合わせ」などを頼んで、届いたらドリアンが中身の半分を占めていた。
おかげで、俺とお父さんは泣きそうになりながら、腐る前にドリアンをすべて平らげた。残りの美味しそうなやつは言うまでもなく、お母さんの餌食となった。
「今開けます」
ドアを開けたら、びっくりするくらい大きな段ボールが配達員の前に置かれていた。
配達員の額の汗を見て、さぞこのでかいダンボールをトラックから玄関まで運んだのがすごく大変だったんだろう。
お母さんっていったい何を買ったんだ?
「
あれ? 俺宛て? こんなもの注文した覚えないんだよね。
「はい……」
「では、サインを」
困惑しながら返事すると、配達員は早速伝票を俺に渡して、サインを求めてきた。
次の配達もあるだろうし、待たせちゃ悪いから、俺は伝票に自分の名前を書いた。
「どうもありがとうございました」
そう言って、配達員は小走りでトラックに戻っていった。
さて……どうしようか。
玄関に置いとくのもなんだから、とりあえず、リビングに持っていくか。
「おもっ!」
重いだろうとは思っていたが、いざダンボールを運ぼうと持ち上げたら、思わず声が漏れてしまった。
あれ、気のせいかな。ダンボールがびくっと動いたような気がする。
そんなわけないか。失恋で感覚がおかしくなったかも。
よいしょっと。俺はダンボールを運んでリビングに置いた。ひょっとしたらこれって50m走より体力使ったのかもね。ダンボールの中身は絶対30キロ以上はある。体感だけどね。
そうだ、伝票を確認しなくちゃ。誰からだろう。
分からん……何かいてるのか全く分からん。
伝票をはがして見てみたら、届け先は日本語で書いてるけど、送り先は魚の落書きみたいな文字とも呼べない図形がずらりと並んでいる。
誰かのいたずらかな。
ああ! もう! いたずらでもなんでもいいから、さっさと中身を確認しよう。俺は一刻も早くソファーに戻って横になりたいんだ。
俺はダンボールのテープをはがして、ゆっくりとダンボールを開ける。よく見てみたら、このダンボールってところどころちっちゃい穴が開いてる。
ぴょん!
あれ? 猫耳?
なぜかダンボールを開けた瞬間、猫耳みたいなもふもふとしたなにかが勢いよくぴょんと跳ねてダンボールの外にはみ出してきた。
これってなに? ぬいぐるみ? 俺へのプレゼントかな? それにしても誰が何のために送ってきたのだろう? 触ってみてもいいかな?
頭の中が
「いやん~」
猫耳みたいなものに恐る恐る触れると、ダンボールの中から急に声がして、俺は思わず後ずさった。
なんなの!? なんで声が!? やはりいたずらなのか!? 誰がこんな手の込んだいたずらを!?
「こんにちは!」
頭を抱えて悩んでいたら、ダンボールのほうから元気な声が聞こえてきた。顔を上げたら、そこには水色の髪をした美少女がいた。薄いピンク色のワンピースを着ているのだろうか? 下半身がダンボールに入ってるせいで、全身がよく見えない。
やはり俺は失恋して疲れているのだろう。宅配便のダンボールの中から女の子が出てくるわけないし、まして猫耳のついてる女の子がね……
「あれ? 日本語間違えちゃったかな? ちゃんとマスターしたつもりだけどね……」
また幻聴が聞こえてくる。一旦ソファーに戻って休もう。
「ちょっと!!」
「ひぃいっ!!」
ソファーに戻ろうした瞬間、急に後ろから何かに抱きつかれて、俺は思わず悲鳴を上げてしまった。
戦々恐々と振り返ったら、そこには幻覚のはずだった猫耳美少女がいた。
「あの……どなた様?」
「なんでさっきから無視するのよ!」
なんとか落ち着いて、俺に抱きついてるこの猫耳美少女に疑問をぶつけたら、どういうわけか怒られた。
「……無視してないよ?」
「嘘! 挨拶したのに無視されたから、私の日本語がおかしいのかと思ったよ!」
「大丈夫。君の日本語はばっちりだ」
「えへへ、そう?」
俺がそういうと、彼女は照れたように少しはにかんだ。
「では、玄関までお送りします」
「はーい! って、なんで送り返そうとするのよ!」
「いや、知らない人だから」
「えっ!? 私のこと知らないの!?」
いや、俺間違ってないよね。いきなり知らない人に抱きつかれたら誰だってこういう反応するよね。
猫耳ついてるから、この子ってもしかしてにゃんこ星人なのかな?
テレビで見かけるにゃんこ星人はみんな猫耳ついてるし、それに……
でも、にゃんこ星人の知り合いは俺にはいないはずだ。
「ごめん、知らない」
「あっ、テレビに私が映ってる!」
俺の返事を無視して、猫耳美少女は興奮気味にそう言いだした。彼女は後ろから俺の顔を両手で挟んで、無理やり俺の視線をテレビのほうに向けさせた。ずいぶんと勝手なやつだな。
テレビの画面には「にゃんこ星のお姫様がこの度結婚しました」という大きなテロップと白いドレスに身を包んでいる水色の髪をした猫耳美少女が映っていた。
まさかね……
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