恐猿山のお殿様

影神

後悔



ある山は通称、




"猿山"




と呼ばれていた。






その土地を治める殿様は民にも好かれ、




気候や、土地にも恵まれていた。






自然が豊かな故に動物達が住みやすく、猿が多かった。




由来はそこからだった。






彼等は人々に溶け込んで生活をしていた。






そんな場所を良く思わない者達も少なくはなかった。






殿様はおっとりとしていた。






争い事等は好まなかった。






そんなもんだから近隣の殿様達は、




のろまだのバカだのと戯言を抜かしていた。






殿様は別に気にも止めなかった。






しかし、近くで大きな軍が始まり、




参加せざる得なくなってしまった。






殿様は民を守る為に仕方なく協力した。






『戦は良いモノでは無く、




自らの大切なものを守る為に、




相手の大切なものを奪うのだ。』






殿様はそう嘆いた。






戦は激しさを増し、山々に火を灯し、




動物達、猿らは行き場を無くしてしまった。






こうして沢山の動物の命を犠牲にし、戦は終わった。






殿様は生き物の魂を愁い、




山々に供養の意を込め、




石碑と彼等を祀った。






民は殿様の行いに賛同し、




祠は綺麗に保たれた。






それらの行為を馬鹿にするかの様に、




荒れ果てた山々に近隣の主達は、




村々を建て、商いを始めた。






名目上は、失った民らの意を示すと言うものだったが、




土地を利用する為にわざと火を灯したのだった。






殿様もそれらが分からなかった訳ではなかった。






だが、戦で亡くなってしまった者らにも家族が居て、




地方の民は今日を凌ぐのに、必死だった事を知っていた。






他の殿様達はわざと税を増やし、




猿山の殿様の良心に溶け込む様にしたのだ。






猿山の殿様はそれでもきちんと面倒を見て、




殿様自ら民の為に行動する事が多くなった。






"器が違い過ぎたのだ。"






それらすらも面白く思わない彼等は




遂に、殿様をあやめてしまった。






民は嘆いた。




優しく支えて貰った地方の民も哀れんだ。






猿達は葬儀の列に加わり、




何処と無く、悲しい瞳をしていた。






"まるで主が亡くなってしまった事を理解するかの様に"






殿様は自らの作った動物達を祀る所へと、




祀られる事になった。






山から見守って下さる様に、と




殿様が生き物が好きだったからだ。






しばらくすると、




殿様の居なくなった場所を奪う為の




戦が始まった。






村はその為の拠点でしかなかった。






戦いは激化し、猿山の民は全滅した。




動物達も逃げ遅れた者ら以外は亡くなってしまった。






新しい領主に成る足る者は、




手始めに元殿様の祀られている祠を破壊した。






元殿様猿山の領主は目覚めた。




領主は目覚め、生前自らの行った行為を責めた。






「あぁ、何て事だ。






私が全てを受け入れたせいで、




民は全滅し、動物達の影すらもない。






土地は占領され、我が身の安息の地すらも奪われた。






許さん。




決して許さんぞ。






この地を汚した者らを呪ってやる。」






心優しき殿様は怨霊と化した。






それ以来、その土地を訪れる者らは、




猿山の殿様の厄を受け、




名を




"恐猿山"




と呼ばれる様になった。


























































































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恐猿山のお殿様 影神 @kagegami

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