腐れ惑星の選別デイズ

三兎

目覚めたら変貌した世界

選別者 目覚めと使命

目が覚めた。いつものように変わらない自分。

ただ目の前に広がるのは毎日見るあの天井では無い。

ガラス越しに廃墟のような光景が見える。

まず思った事といえば、寒い。あと床が硬い。

しかも裸。布団も着ていない。何だこれ。

脳が活動を活性化させるまで状況の把握は困難だった。

しかし朝は時間が経つほど記憶が取り戻される。

思い出した。この状況に至るまでを。


僕は…あれ、名前が思い出せない。

記憶はあるのに、名前だけが思い出せない。

僕は冷凍された。冷凍保存という奴だ。

で今、綺麗サッパリ解凍された。

しかし僕はそんな事は望んでいなかった。

無理矢理だった。確か麻酔で動けなくしてここに入れた。

僕は必死で抵抗した。

何故なら。

丁度僕が冷凍された数日後に、新作のゲームが発売される予定になっていたからだ。真面目な理由など無い。

ゲーム漬けの僕にとってはショックでしかない。

え?何か?


どうやら僕はカプセルのようなものに入っているようで、内側に一つのボタンがあった。これを押せば開くかな。

予想通り。開きました。

裸のままカプセルから出るとそこは小さな一室。

端にある机の上に、服装と手紙、小さなバッグがあった。

とりあえず服を着よう。寒いし。

…なんだこれ。ほぼただの布でしかない。

不満を抱きながら手紙に目を通す。

どれくらい凍っていたか知らないけど、手紙て。

時代に合ってないな…


「貴方がこれを読んでいる頃には私はいません。

探しても無駄です。私が誰かも考えぬように。

貴方は選別者となりました。使命を果たせ。

まず状況の説明をさせて頂きます。

冷凍カプセルが正常に動いているならば、

貴方は200年眠っていました。

私たちには、地球を守れません。そこで、

貴方に人類の未来を託しました。

貴方には生き残っている者たちの『選別』を

して頂きます。具体的な話は後に。

私たちは人類を減らすべく、大量虐殺を開始しました。

犯罪者を始めとする人類に悪影響とみなされた

者たちを次々と処刑した後、地方を捨て、都心部のみで

生活をしました。しかし、良くなる気配は無く、

犯罪はさらに増える。

貴方は元々東京在住だったから知らないでしょうけど。

この計画は外部に漏れぬよう注意し行われたもので、

一般市民が知ることは無かったのです。

今貴方の時代はどうなっているでしょうか。恐らく

『映画みたい』とか思うのではないでしょうか。

しかしそれは現実です。たとえ貴方の近くに

獣が彷徨いていようとも。

バッグがありますね?その表面にボタンがあります。

そのボタンを押して頂ければ、貴方の任務は開始します。

どうか人類を、地球を再構築してください。」


何だコレ。馬鹿馬鹿しい。

どうせドッキリとかだろう。全く凝ってるな。

出よう、こんなとこ。

僕が人類の未来を?そんなわけ。


しかしそんな生ぬるい考えは一瞬で消えた。

窓から見えた世界。ガラスの無い窓。

そこから吹く風とそれに流れる砂。

外は完全に砂漠となっていた。

あぁ。

自然と涙が溢れた。特に思い出も無かったのだが。

何故だろう。人間が減って嬉しいはずなのに。


僕はバッグを手に取る。

中に何が入っているのか、やけに重い。

手紙に書いてあった、ボタンがあるはず。

それはボタン、と言うよりかはスイッチだった。

オンとオフが切り替えられるのだろうか。

これを押せば、全てが始まる。

深呼吸を一つ。

そして僕は、スイッチを押した。


「………………………………」

何も起きないんだが。

え?どゆこと。

あ。

コンセント刺さってなかった。

バッグ形なのにコンセント繋ぐんかい。

てかモニターあった。

カチッ。

[充電中…1%]

あ、充電式っすか。

外○ッドマッ○ス状態なんすけど。

電力ある?

[充電中…5%]

あ、割と早い。


[充電完了・プログラムの実行を開始]

わぁ、すげ。なんかすごい。

[名前を入力]

名前…いや思い出せんし。

[…する必要なかったわ。すまん]

ん?

[えーっと…とりま君の名前はゼウスでいいかな。]

待て待て待て待て。

小学生じゃねぇんだし。

これRPGじゃねぇし。

[あい。ゼウスの情報を処理中…]

は?なんか勝手にゼウスになってるし。

いやダサい。圧倒的にダサい。

終盤になって後悔するタイプ。

これ…どうにかして止めれんかな。

[……嘘で〜す!]

ぶっ壊そうかな。

さっきのシリアスムード消えたんだけど。

[選別者様、ご迷惑おかけしました。]

ん。なんだ?

[私はアール。選別作業のアシスタントとなるAIです。]

?????

[先程の文章はバグです。言い換えれば別人格です。]

直せや。

[後で鮫の大群にでもブチ込んでおきます。]

おう頼むわ。

[ ]

……

[ ]

……

[…あの、いつになったら出るんですか?]

いや知らんし。それを教えてくれるんちゃうんか。

[てか喋ってください。もしかして人見知りですか?]

…え?

「…話せるのか?」

[はい、私はAIですので。会話ぐらい出来ますよ。]

いつの間にこんな技術が。

「じゃぁ…えっと、アールだっけ。僕は何をすればいいの?」

[…手紙に書いてありましたよね、選別です、選別]

「いやだからその選別ってのを具体的に」

[現在この地球に残っている人間を見つけ次第、その人間の善悪を判断し、悪であるならその場で殺す。以上]

うわぁなにそのエグい仕事。

普通に社会あったら犯罪だけどめっちゃ金貰えそう。

犯罪だけど。

てか本当に映画みたいなっとるし。

「じゃぁ何…最終目標は?」

[最低でも、街が一つ造れれば後は]

いやいやいや。

街。

まぁいいか。やらないといけないならやるしかないか。

僕は前からこんな性格。

やれと言われればやる。やらなくていいならやらない。

そのおかげで何回か死にそうになったけど。

「じゃぁ行くか…」

[行きましょう]

僕は少し重いバッグを肩にかけて、窓から外に出た。

なんで窓からって?その方が格好いいじゃん。

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