春子の非日常的な日々。

碧木 蓮

憩の空間。

「はぁ……落ち着く」


私は今、茶の間にある座椅子に座っている。

仕事から帰ってくると、すぐにうがいや手洗いを済ませ、部屋着に着替えてここに座るのが日課。

テレビを見ながらボーッとすると、今日あった嫌なことも忘れられるし。


それからちょっとだけ気合いを入れて立ち上がると、夕飯作り。

……まぁ、自分の分だけだし適当だけど。


お祖母ちゃんがいた時は、美味しい料理を食べられたんだけど……。

今は体調を崩して入院しているの。

だから、その間だけ……私は祖母の家で留守番を兼ねて、ここから通勤をしているという訳。



私の実家は、ここから30分以内の場所にある。

両親は健在で、私は一人娘。


お父さんもお母さんも、仕事で家を空けるから……私は必然的に祖母の家に預けられていた。

だからここが自分の家みたいなものだし、住み慣れた我が家と言ってもいい場所。


あっ、祖父は私が小さい頃に亡くなったの。

だから、一人暮しの祖母には孫の私がいた方が、淋しくなくて良かったのかもしれない。



今日のおかずは、冷奴と油揚げと大根の炒めもの。

ご飯に大根とワカメの味噌汁をつけて完成。


和食が一番良いなぁ。

食べ慣れているせいもあるけど。


まぁ、オシャレなお店の料理もいいんだけどね……何ていうか、食べた気がしないっていうのかな?


この間、友達とイタリア料理を食べに行ってきた。

美味しかったよ。

でもね、帰ってきたら……即お茶漬けを食べちゃう。

だって、その方が胃も落ち着くんだもの……。


これが実家だったら……。


「こんな夜中に食べてはダメよ」って、お母さんに止められるしね。


あぁ、こんなに開放的になれるなら……もっと早く一人暮しするんだったなぁ。



ボーン、ボーン……。


年期の入った柱時計が、2時の鐘を鳴らしていた。


「あ、もうこんな時間……早く寝なくちゃ」


一人の時間を満喫していると、時間が経つのってあっという間なのよね。


お祖母ちゃんの入院は心配だけど、もう少し楽しみたいな。

退院して家に帰ってきたら、ここに住みたいってお願いしようかな……。

お祖母ちゃん一人じゃ心配だしね?



「おやすみなさい」


また明日も、頑張らなくちゃ……。


こうして、祖母の家に住み着いて3日目の私は、いろいろな楽しい夢を抱きつつ、眠りに着いたのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る