第4話

 私は直ぐに貴方との婚約の解消をしたい旨を先ずは両親へ伝えたのです。

 当然両親は――――了承する筈なんてありませんね。


 何故なら両親は私と言う駒を用いて喉より手が出る程に欲した王家との姻戚関係……父に至っては将来私が貴方との子を生し、生まれてくるだろう孫の外祖父として権力を欲しいままにしたかったのですもの。


 母親はそこまでの野心を持ってはいないようなのですがそれでもです。

 単なる一貴族へ嫁入りするのとは違い娘が未来の王妃ともなればそこは社交界での立ち位置も全て変わってくると言うもの。

 まあそう言う意味で母親もまた野心に塗れていますわね。

 故に私の願いは即答で却下されたのは言うまでもありません。


 しかし私にしてみればこれは死活問題なのです。

 確かに貴族として生まれた以上物語の様な素敵な恋愛を経てからの結婚なんてものが夢物語でしかない事はちゃんと理解をしておりますわ。

 

 結婚とは一つの契約である事も。

 そしてそこへ利益が絡む事はあっても愛情が絡まれるのは本当に稀なのだと言う事も……です。

 これまでの多くの貴族達が、また両親がそうであった様に私もまたそうあるべきなのだとわかってはいるのです。


 ですが流石に目の前の近親相姦だけは頂けません。

 それも同じ顔同士――――って一体どれ程のナルシストさんなのでしょう。

 お二人の口づけを交わす姿を思い出すだけでもキラキラが込み上げてきそうです。

 これが血の繋がりのない全くの他人であれば私もここまで頑なにはならなかったでしょう。

 寧ろそれが当然なのだと、確かに失恋のショックは避けられはしなかったのでしょうが、でもそこは貴族の娘だからこそ受け入れられたのだと思うのです。


 貴方の妻として私は次代へと繋ぐ子を儲ける事。


 ええ、勿論未来の王妃としての公務もきちんと行う事も忘れてはおりませんよ。

 ただ嫁した以上子を儲けるのは女性の務め……的なモノをまだまだ感じずにはいられないのです。

 何も女性だけが子を生せる訳でもないのですのに……ね。


 とは言えです。

 両親へ直談判しても駄目ならば次は直接貴方のご両親……両陛下へご相談をする事に致しましょうか。

 これははっきりと申しまして最終手段にしたかったのですけれどもね。

 何故なら両陛下は貴方と貴方の愛する女性であると共に貴方の大切な妹君なのですもの。

 この事実は流石に親としてはショックな出来事だと思うのです。

 本当ならばこのお話をしたくはなかったのですが、やはり私は自分が可愛いのですよ。

 ナルシストな恋人同士と慣れ合うなんて到底受け入れ難いのです。

 

 ですので両陛下、どうぞお覚悟をして下さいませ。

 アポイントが取れ次第参上させて頂きますわ。


 お互い間違った道へ進まぬ為にも……。

 

 

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