記憶の中の人

勝利だギューちゃん

第1話

断捨離が苦手だ。

何でもため込む。

幸いなのか、僕の家には倉庫があり、そこに押し込んでいる。


ただ、トラウマのあるものは捨てているが・・・


「しかし・・・」


倉庫にある物を見て驚く。

我ながら、こうもため込んだものだ。


「これは、溜まりすぎたな。処分しよう」


これは、売れるな。

これは、燃えるゴミ。

これは、燃えないゴミ。

これは、リサイクルと・・・


片付いていく。

片付いた倉庫を見て思う。


「広い」と・・・


そして、手紙を見つけた。

差出人は・・・


「あの子か・・・」


高校時代の同級生の女の子。

やたら明るかったのだけは覚えている。


内容は、住所変更と当時の近況報告。

卒業後は、旅行会社に勤めたらしいが・・・


その旅行会社は・・・

もうつぶれた。


つぶれた後、英会話教室になり、レンタルビデオ店になり、さまざまに変わっている。

場所が悪いようだ。


でも、この手紙、捨てていなかったか?

日付は、1990年の4月となっている。


何年前だ?


この子とは、いい思い出もあるが、嫌な思い出もある。

そして、少し仕返しをしようと思った。


書かれている住所に手紙を出すことにした。

「あっ、今は郵便番号が7桁になっているな」


それを調べて、投函した。

まあ、戻ってくるだろう。


そう思っていた。


内容は、今の近況報告。

本当の事を書いた。


僕も、あの子も、今は50歳。

今更、会っても仕方がない。


どうせ、戻ってくる。

そう、思っていたのだが・・・

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