139話 大事だけど全体的に緩いスタンス
それから数か月は慌ただしく過ぎた。
各国の大使館を建てる為の打合せだったり、国内の有力貴族との事前会合だったり殿下と遊んだりと盛りだくさんだ。
ちょっと各イベントに踏み込むと、大使館については設計と基礎が僕で細部の建付けは近隣の領地とマイヤさんの領内から腕利きの大工さんや建具さんや金物屋さんが集められて作っている。
「集まった各職人さん達にウェル君の持ってる技術の一部に触れされてあげたいのよ」
と、大使館建築プロジェクト開始前にマイヤさん泣きつかれというか、抱きつかれたので快く設計させてもらった。(べつにハニートラップには引っかかっていない!!)
一口に各国の大使館と言っても各国イコール各大陸イコール各種族な世界なので、色々と配慮が必要な場面があると勝手に想像して趣向を凝らした。
獣人族向けには特徴である「毛の多さ」に配慮した建物を作った。
抜け毛の多さとか微生物が外から入りやすいとか、生活する上で色々と困りごともあるだろうと勝手に想像したので、冒険者ギルドへ依頼という形で獣人さんを一日拘束して生活ヒアリングと大使館の作りに対するアドバイス等を貰って作り込んだ。
特徴的なのは水場、陽だまり、草木の煙で殺菌するスペースと、高所や逆さまやに眠れる事も出来るような部屋が出来たりした。その特殊なエリアに人の生活の場があったりするという、なんて言えばいいのか.......人と暮らせる動物園みたいな感じって感じなのかなぁ。
後びっくりしたのは、お風呂にある鼻うがいする場所位かなぁ。やっぱり人間の世界は色々と匂いがするので定期的にリセットしたいらしい。たしか犬系とか超鼻が良いんだったよね。
エルフとドワーフについては割とすんなり作れた。
エルフは日本家屋にして檜っぽい家具で統一しておいた。あちこちに流水場を作って清浄な感じで設計しておいた。
ここには特別なものがあるって感じがしないかなぁ。まあ日本家屋だしねぇ。囲炉裏があるのが、この世界的には不思議かもしれない。
ドワーフはヴァルカンさんとふたりで最高の家を作ろうぜ「いぇーーーい!」をやった。
惜しみなく鉄や鉱物を使い、歯車と磁石と板バネ(木や金属を長方形に伸ばして反発を作った)を利用してカラクリ屋敷にした。仕上る頃になると、どっかからやって来た工人ギルドのおじいさんもノリノリで現場作業していた。
目玉のマグネット式の半自動ドアに群がるドワーフ達をみながら「坊主やりすぎたんじゃねぇか」とヴァルカンさんが呟いていたけど、まあそんなこともあるよね。うひひ。
そんなこんなので大使館作成を日課の鍛錬時間も潰して働いた。
すごく簡単に言うと。
3か国分の大使館を設計して、書類に起こして、模型を作って、実際に調達する材料を手配して届いた資材でも特殊な加工が居るものや技術的に新しものは僕が処理した。
うん働きすぎである、これはしっかりと報酬をいただくことにするのだ。こんな仕事はうけた瞬間に次元○介も俺は降りるぞル○ンと言い出すに違いない。
などと、若干やさぐれ?風味に脱線思考しながら、ほぼ出来上がった各大使館の清掃と磨きの最終仕上げをして歩いている。細かい部分の清掃とか研磨なんてのは「ウェル君の謎魔法」のが早いからね。
すべてピッカピカの鏡面並みにしておきますぜアニキ。どこにもアニキいないけど笑。
そうして最後の仕上げも終わるに差し掛かったあたりで、作業していた獣人国用大使館へとマゼッパさんがやってきた。
「ウェルギリウス様、宜しいでしょうか」
「はーい、丁度終る所だから屋敷に戻りながら話を聞くよ」
「畏まりました」
少しだけ残ってる部分をささっと片付けて、自分自身に清浄をかけてマゼッパさんと二人で屋敷へ向かい歩き出す。
最近、忙しくしてたからマゼッパさんと交流あんましてないな。なんというか執事と主人感が強くて、一緒に遊びましょって感じにならないんだよなぁ。ちょっと寂しい気もするけど、何気に我が家ってやる事多いから執事業は助かるしなぁ。
「大使館の建築、お疲れ様でした。ここ数日は遅くまで仕事をなされておりましたね」
「うん、ありがとう。ちょっと大変だったね。でもマイヤさんのお願いだしね」
「ふふっ、ありがとうございます。それを聞いたらマイヤ様も喜ばれると思いますよ」
「こういうのは言わないのがいいの。君の為に頑張ったよなんて気障すぎるでしょ笑」
「うふふ」
ん、やれば気安い会話って出来るじゃん。こっち側の問題だったのかな?うーん、別に普段も険悪ってわけじゃないし、いいか。
今は、とりあえず旗色悪いから笑。会話切り替えよっと。
「そうそう、そういえば何か用事があったんだっけ?」
「ふふっ、そうでししたね。はい、御用があって伺いました。先日来から朝食の際に皆さんへご連絡差し上げていた通り、明後日に陛下が王妃様を伴ってこちらへいらっしゃいます。先ほど先ぶれの騎馬がまいりまして予定通りの行程で進んでいらっしゃるとのことでした」
「あーもう、そんなに日数たったんだ。うんわかりました。ご無事でなによりですね」
「はい、そしてそのまま祭典まで滞在するご予定です」
雑談をしながら二人で屋敷に入る。屋敷は各種準備で色々な人が出入りしてパタパタとなんらかの作業をしている。
「執務室へ寄って書類を取ってから談話室へと向かいますのでウェルギリウス様は先に談話室へと向かってください」
「ん、マゼッパさんと二人で歩くことも、あんまり無いしいいよ。一緒にいこ」
子供あざとく手を伸ばして繋いで貰ってマゼッパさんのやさしいリードに従って執務室へ寄って数枚の書類を手にした後に談話室へと向かう。
ちなみに執務室はマゼッパさんの作業部屋と化している。僕は貴族でも経営者でも無いから取り仕切るものが無いからマゼッパさんのお仕事部屋って事にしてもらっているって感じ。
談話室に腰を落ち着けて、作業の疲れを癒しつつマゼッパさんとの会話を楽しんだ。
「はーい、今日で大使館の建築も終わったので期日には間に合ったのかな」
「はい、すばらしい仕上がりだと思います」
「ありがとう、初めてのものばっかりで戸惑ったけど、実際に獣人さんやエルフさんに見てもらったから大丈夫だよね。たぶん」
「そうですね。私から見ても素晴らしいものが出来上がったと思います」
その後は来客の話やもてなしの方法だったりをゆるーく確認しながら過ごした。
まあ仕事風に見える休憩ってやつです。実際は仕事してないんだけど、関連したこと話してると仕事してる気分になるアレ。
あんまり多用すると、仕事してるツモリが仕事になってダメ大人になるから気を付けないとね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます