133話 猫と冒険2

 ギルド前に着いて全員で馬車から降りる。

 

「それじゃっちょっと依頼と近隣の情報を確認してくるわねっ」

 

 馬車がギルドへ着き、マキスさんが3人娘を代表してギルドへ向かった。うん、フットワークが軽いリーダーっていいよね。些細だったり些末な事は、誰かに依頼して細かく指示出しするより判断出来る人がサクッと終わらせた方がいいと思うわ。

 

 マキスさんが戻るまでギルドの建物近くで待つことにする。ちょっと豪華な馬車からゾロゾロと女性率高めで降りて来たので注目を浴びているなぁって思うけど、気にしてもどうにもならないので気にしないでおこう。

 

 とりあえず邪魔にならない場所に移動して待ちまっしょ。

 

「そういえばブライアン達って魔物とか見たことあるの?」


「にゃー(あるにゃ)」

「にゃん(ネズミの魔物をみたことがありますにゃ)」


「ん?二匹ともみたことあるって街中で??」


「にゃん(そうですにゃ)」


 街中でも小型なら魔物が居るって事か、それって普通?と思いつつ自分のやや前に護衛気味に立っているティアンヌさんに向き直る。

 

「街中であっても小型の魔物は入って来る事があります。冒険者ギルド側にマイヤ様より依頼として常時出しております」


「そうだな、駆け出し冒険者がよくやっているぞ」

「・・・ウェル君は銀級スタートだからやってない」


「あーなんか下積み部分は、すっ飛ばしちゃいましたね」


 こういう細かい常識だったり知識抜けてるかぁ、うむぅ・・・まあ、そもそも冒険者ギルドの仕事をあんまりしていないし、しないと生きていけない訳じゃないという話なだけなんだけどね。

 

 ・・・とか、そんな実のあるようで無い話をしつつ待っているとマキスさんが戻って来た。

 

「めぼしい依頼はなかったわねぇ」

「これが運命力・・・ウェル君と一緒に出掛ける」


 まあ、依頼があるってのは討伐対象が多いとか困りごとが多いって事でもあるだろうし、最近間引きしたりしたからめぼしいものが無くても仕方ないよね。3人娘は結構なキャリアで強いしね。


 ってな訳で僕とブライアンとチャコレア、そして護衛のティアンヌさんと冒険3人娘で街の外に出る事にした。


 冒険者ギルド前という、毎回テンプレ系イベントが起きて物語が全く進まなくなるスポットとか「こんな所に居られるか!私は部屋に戻るぞ」と言いたくなる場所からは早々に撤収が吉なのですよ。

 

 門を出て、以前マキスさん達と行った森の方向へ向かって歩く。

 

「みゃー(今日は川にいかないにゃ?)」


「うん、今日は軽く魔物退治をするだけだからねー」


 そういえば川には魔物って居ないんだろうか?


・・・もし居たら、なんだか毒とか瘴気的な何かが流れ込んでそうで嫌だな。


「ティアンヌさん、川とか水辺には魔物って居ないんですか?」


「水辺に魔物ですか?居ると言えば居ますが、街近辺の川や人里近い湖や海では見かける事は無いと思います。先ほどの街中の小型の魔物と同じです。定期的に駆除討伐依頼が、国または領主から出ております」


「そうなんだ、そりゃそうだよね。魔物で汚染された水は使えないよね」


「はい、駆除依頼に帯同している神官や冒険者が清浄を使って浄化しております」


「そうだな、我々もたまに参加する事があるぞ。まあもっぱら荒事専門で、だがな」


 雑談しながら草原を進むと森が見えて来た。草原と森の境界線手前って辺りか、ここでいいかな?

 

「そろそろ魔物が出て来るよね?この辺で固定して少し様子みますか」

 

「かしこまりました」


「にゃにゃー(ウェルにまかせるにゃ)」

「にゃんにゃん(わかりましたにゃ)」


「はーいっ」

「んっそれがいいだろう」

「さすが・・・ウェル君は・・・堅実」


 了解の答えを貰ったので、ここに簡単な陣地を作ろう。

 

「マキスさん、この辺に出て来る魔物ってどんなのが居ます?」


「そうねぇっ、犬や兎みたいな小型の魔物が多いわねっ。あとはそれを狙うゴブリンとコボルトがたまにいるかなって感じかしらっ」


「なるほどありがとうございます。じゃあ基本的に森周辺は弱くて小型ってことですね」


「うんうんっ」


 ほいほい、そしたら150㎝くらいの高さで3方向囲んだ塀みたいな塹壕というか陣地作ればいいか。地下掘らないから塹壕じゃ無いのかな?まあいいや。

 

「じゃあ、こっからここらへんまでの範囲に壁を作って陣地にしちゃいますね」


 歩いて来た方向が出入口になるようにボコ(凹)の形に土で壁を作る。壁が森側になるようにっと、後は覗き穴を兼ねたヤリ突き出す場所だけ空けておくか。

 

・・・・「できらぁ」

 

 ステーキ200gを980円で出せと言われたような声を出しつつ完成。掛け声には、まったくもって意味無い。思いついただけ。


「これはっ便利ねぇ」

「相変わらず規格外だな」

「・・・これは愛の巣」


 等の一部意味不明な供述と感想を貰いながら陣地を作った。そのまま細かい部分を修正する。穴の手前に段をつけてブライアンとチャコレアが覗きやすくしたりと細かいとこね。ここもぺぺぺのぺですよっと。


・・・

・・

・・


 ちくちくパタパタと歩き回って補正作業して完璧っと。


「はーい、陣地出来ました。土で出来てるから帰る時は崩していきまっしょ。それじゃ今日はブライアンとチャコレアに魔物狩りを見てもらうって感じでいいかな?参加するしないは様子を見ながらかな?多分小さいのなら街中で遭遇したり、狩ったこともあるだろうし」


「にゃ(わかったにゃ)」

「にゃん(わかりましたにゃ)」


 2匹は早速穴近くに移動したり陣の中を歩き回ってる。走ったり逃げたりする時用の測定かな?まあここは安全だと思うけどね。隙にやらせておけばいいか。

 

「で、僕らはこんな感じで数匹を釣って来てのんびり退治とかしようと思いますけど、みなさんはどうします?」


マキスさん達は顔を見合わせて頷きあった後に。


「んーっなにかあるわけじゃないし、お付き合いするわよっ。ゴブリン連れて来るくらいなら出来るしねっ」


「はーい、わかりました」


「ティアンヌさんは・・「お側におります」


 被せ気味に言われた。まあ護衛ですしね。いくら安全そうだといっても自由行動はしないわな笑。


「じゃあ、役割を決めてのんびりはじめますかね」


「にゃーん」「にゃん」

「「「はーい」」」

「はい」


 苦節8年。ようやく猫との冒険がはじまった!!

 

 ・・・あっ王都に行ったあたりでにブライアンと一緒に戦闘した気がするわ。あはは。

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