119話 名も無き目立つ人って居るよね
大分メンバーも増えて来た朝の鍛錬を終えて、いつもの朝食タイム。
今日は獲れたての川魚を使った和風な朝食、香草と出汁が少し入った厚焼き卵にヤマメの焼き物。こうなると、お米が欲しいけど見かけて無い気がする。まあそれはそれでいいけどね。
今日は王妃様の合図で食事がはじまる。貴族になる気はないので、我が家は作法に関しては緩いので王妃様かマイヤさんのどっちかが朝食開始の合図だせばいいよね。とかゆるゆると考えてる。
いつものように和やかに談笑しながら食事を取っていると、王妃様から数日中に王都へ戻るとの告知があった。なんか長いような短いような休暇だ、まあ王都を長期空けるのも色々問題あるだろうし、こんなもんなんだろうね。とりあえず一緒に遊ぶ?のはあと数日ってことですねーっと。
「それにしても、すっかりお世話になってしまいましたわね。ここで食事を取っていると王都の煩わしい仕来りだったり、執務をすっかり忘れてしまうわ」
なかなか反応が難しい事を言うなぁ。ずっと居ていいですよなんて口が裂けても言えない笑。
「ふふふ、そうですねー。でも帰らないとだめですよ?」
マイヤさんが同級生のよしみですかね、軽く返してる。
「そうね、所でこちらで頂いたお料理って王宮でも食べれるのかしら?」
チラッと父さんを見て回答を任せる、料理本は父さん任せなのだ。
「ご同行されている料理人の方と一緒に作っているのでお出しできると思います」
「そうなのね、レシピ等で秘伝の物もあるのではありませんか?」
チラッと父さんに見られた。答えろという事か、まあいいけど。
「レシピに関しては知ったものに関しては、気にしないでいいですよってのが結論なんですけど。父さんのお店の為に書き下ろした部分もあるので、ある程度は容赦いただければなーって思います」
話題が料理に移った事で、料理人さんがメイドさんに呼ばれて入室してきた。
「ああ、料理長が来たわね。今こちらで教わったレシピの話をしているのだけど一緒に聞いてもらっていいかしら?」
「はいっ、お伺いします」
「それで、ウェル君としては覚えたものは作ってかまわないというのね」
「そうですね、せっかく美味しい物を作れるようになったのに勿体ないですもん」
「あはは」「うふふ」
王妃様とマイヤさんが少しだけ微笑むように笑う。
「そうよね、ウェル君はそうだったわね。これだけ斬新で新しい料理法が沢山あると王宮へレシピを献上って形にしてもいいのだけど、そんなことを考えたりはしてないわよね」
うーん、まあ煮る焼くベースの料理だったから斬新なのかもしれないけど。いつか辿り着くものでしょ熱の入れ方を考えていけばいいだけだしねー。まあ材料費のせいで油で上げるとか塩釜焼きとかには中々辿り着かないのかも知れないけど。
「あら、悩ませてしまったかしら」
「あっ、えっとレシピに関しては深く考えてなかったので・・・」
・・・うーん、うーん。
父さんに渡したレシピは正直バリエーションを加えだすと、食文化を変えてしまう勢いだと思うんだよね。ただ人間用ってことで、この世界特有のエルフドワーフ獣人に合わせて無い所が心配ではあるかなぁ。ってか食文化の変化って寿命や健康に影響出るから慎重になりたいとこでもあるんだよね。そういう意味で、父さんだけに美味しい料理集って渡すだけで止めたいけど、この流れでそういうわけにはいかないよねぇ。
・・・少し長考してしまった。
周りを見ると僕に注目している。キャッ恥ずかしい、とかバカやってる場合じゃないか。違うか。
「ウェルくーん、今は何を考えているの?ここに居る人達なら話しても大丈夫だと思うわよ」
ん、母さんからの助け舟か。なんかヤバかったら喋るなよって周囲への牽制も込みだわさ。信頼してるから多言すんなよっていう取引的なアレだ。母さんはコミュ力ってかトーク力あるなぁ。
まあ言って見るか。
「んと、父さんに預けてるレシピって食文化を変えていく位の影響がありそうってのが前提で、それによって既存の料理を職業にしてる人のケア、えっと保護を考えなきゃいけないって事と、食が変わるって寿命や健康にも大きく影響するから慎重にいきたいなぁって事と、レシピはあくまでも人間用でエルフやドワーフそして獣人さん達に合わせてあるものじゃないなあって、そういう未完の部分をどうしていこうかなって。三つを考えてたんだけど、う-ん話が少し大きいよね」
「書き留めなさい」
王妃様が小さく近衛さんに指示を出した。あーこの人、滝ツアーとかでもメモってたよな。文官でもあるのかな?近衛文官?なんだか謎いけど、まあそういう仕事なんだろうな。
「既存の料理人の保護と他種族と国民の健康ですか。たしかにゆっくり考える必要はありそうですね。それにしても視点が広いのね、正直ここまでとは思っていなくて驚いたわ、考え方が為政者に近いわね」
綺麗にまとめられた。まあその通りだけど、あと為政者にはなりません笑。雲行きがShadyってか、ちょっと難しい話になってきたので、簡単な例を出して場を緩ませつつ食の再開を促しとこ。
ご飯は暖かいうちに食べたいよね。なんて思いつつ、目の前の魚をつっついて口に入れる。
「ええ、食は習慣になりますから。簡単な所で想像してもらうと、おいしいからとデザートばかり食べてしまうと、お腹周りに悲しい事件が起こっちゃいますねー。あっお魚おいしい。」
父さんと母さん、冒険娘達そして隣り合って仲良く座ってるセレネ姉さんとリア殿下も少しづつ食事に戻ったみたいだ。ちなみに猫達は新鮮な魚に夢中でこっちに関心は無い笑。ブライアンズメイドが超かまってる。
「ほんとーウェル君は色々な事を考え付くのねっ」
色々な事かぁ。ただ知ってるだけなんだよなぁ。何でもは知らないわの人の嘆きと同じように知ってるだけで何かを作り出せるわけでも主体性を持って動けるだけじゃないんだよね。対処療法が完璧ってだけでさ。知ってるだけの事になんの意味があるわけじゃないんですわ。そりゃぽっとでのヒロインに負けますわ。
しかし、マキスさんもコミュ力たっかー。ここでちゃんと入ってくるのね。
「ただ知ってるだけだよー。まだ子供だもん」
「「「「あははは」」」」「「うふふ」」
まあでもどう落とそうかなぁ。まあ毒を作ってるわけじゃないし、なんなら王宮には毒見役いるし?同じものをずっと食べるとかしなきゃいいでしょ。
「うーん結論は難しいですけど、レシピに関しては全然覚えて帰って貰ってかまわないです。レシピの各料理には、食中毒って言ってわかるのかな?食べたらダメな部位の取り除き方とか火の加減について細かくかいてありますしね。後は同じものを繰り返し食べないで大丈夫だと思います」
「だそうよ、それで良さそう?」
王妃様が料理長と父さんを見る。
父さんと料理長さんが頷きあって「はい、問題ありません」と料理長さんが答えた。食文化に関してはどうしよっかなぁ。相談ベースかねぇ。うーん、ややこしいなシンプルに考えて2家でしばらくは使うでいいしょ。ってかややこしくしたのは僕かー。そうかー。僕だわ。
「このレシピの波及については、父さんのお店に関しては秘伝のレシピ扱い。王宮の分に関しては王宮の特別なレシピって事で、しばらくは門外不出で行きたいなって思いますけど大丈夫ですか?」
話の落とし方的に、ちょっと強引だったけど仕方ない。ここらが決め所だよの目線を王妃様へ出しておく。ちょっと頷いてくれた。
「そうね、そうしましょうか。我儘を言っちゃったわね」
・・・・トンッ
「いいえ、大丈夫です。料理長殿と詳細は話合わせていただきます」
締めはちゃんと父さんが返事をしてくれたので、よし!。ちょっと間があって、母さんの軽いエルボーが父さんに入ったのはご愛敬なのだ。
その肘鉄込みで、和やかに食事が進んでいった。
んー、こりゃ今日の予定はレシピの解説で決まりかなぁ。
・・・父さんもそわそわしてるしね。
。結果的にレシピの一部は王宮にも流れる事になったので、王宮に流れる部分のレシピに沿って料理を試作しつつ、都度注意事項を口頭で丹念に料理長さんに説明した。
なんだか自分より技術がある人に教えるって、なんとなく申し訳ないような気がするけど、まあそこは割り切りますか。
あとね・・・父さん、距離近いです。僕が小さいから物取ったりを手伝おうとしてくれるてるんだろうけど近い笑。
そんなこんなで、例によってメモする近衛さんと料理長さんに作って見せたり、注意事項を伝えて見たりと濃厚な時間を過ごした。質問比率は料理長さん6、父さん2、近衛さん2でした。
王宮側で欲しがったというか、王妃様とリア殿下が食べたがったレシピがカレー、潰した肉や魚を扱う料理(つみれ、ハンバーグ、肉まん等)、パン粉系の揚げ物だった。うーん濃いめというか小学生の人気メニューのような気もするけど、まあ気にしない事にしておこう。
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