110話 ぶらいあんずたいむ1

 セレネ姉さんとリア殿下の2人と遊んだ翌日、いつもの早朝鍛錬を終えて朝食に向かう。

 

 早朝鍛錬には、近衛の人達が日替わりで参加することになった。どうやら以前鍛錬のメモ書きっぽいのをしていた人が隊長さんだったらしく、合理的な訓練メニューなので取り入れたいとのこと。

 

 どーぞどーぞ。前世の先人たちの経験と血と汗と涙と知恵の結晶ですしね。運動中は水を飲むな!うさぎとびで階段を昇れ!息を止めて走れ!とかなんとかさ色々試行錯誤した結果ですしおすし。

 

 そんな僕とティアンヌさんと冒険娘と日替わり近衛兵という謎メンバーでお送りする早朝鍛錬もひと段落して、今は朝食の時間なんだけど。 一匹足んない。

 

 「あれ?ブライアンは?」

 

 「ん-朝にはいなかったよー」

 

 む、野郎またセレネ姉さんと寝たな。僕とはたまにしか寝ないのにセレネ姉さんが来たら100%か。ぐぬぬ。

 

 「そっか、おでかけかな?」

 

 そんな話を姉さんとしていると、ブライアン専属メイドという位置づけの王家のひも付きメイドさんから声がかかった。

 

 「お話に入っても宜しいでしょうか?」

 

 「はい、もちろん」「うん!いーよー。どうしたの?」

 

 「お話しされていた。ブラさんのご予定ですが、本日はお仲間を迎えに行かれるそうです。その為、早朝からお出かけしております」

 

 あー、そうだね。猫別邸に住む子だよね。うんうん。

 

 ・・・にしてもだ。ブラさんって言われてんだ。大胸筋補正サポーターみたいな名前だな。といか森田さんが散歩しそうでもある。いっそタヌキまであるわ。うひ。

 

 「なるほど、わかりました。じゃあご飯とか用意してあげなきゃですね」

 

 「はい、そちらは手配しておきます。それでは失礼しました」

 

 さすがに王妃様やマイヤさんの前だと、メイドらしいのね。用件のみで下がると。

 

 「そっかーブライアンの友達くるのか、じゃあ今日はそれに付き合おうかな」

 

 「わたしもそうするー!」「いいですわね」

 

 セレネ姉さんとリア殿下の参加が決まった。リア殿下って時々、お嬢様な声色使うからびっくりするんだよね。ん?スーパーお嬢様か。王女だったですわの。

 

 「父さん達は何かするの?」

 

 「ん、料理の研究だな」

 「私は特にないわねぇ、昨日の織機を借りてみたいわね」

 「私はそうねぇ、新しいお店のメニューでも作ってようかしらね」

 

 父さんはブレないっと、もう異世界の料理とか面白くてたまんないんだろうなぁ。母さんは織機?母さんの普段の繕い物のが良い物が出来てる気がするのだけども。もっと大きい足踏みでも作ってみようかな?でも大がかりすぎるから、そん時はヴァルカンさんにも持ち掛けよう。そんでロトルさんはメニュー作りか、ある意味父さんと一緒だ。まあ兄妹だしね。

 

 「父さんとロトルさんは調理室にある材料とか調味料を気兼ねなく使ってね」

 

 「ん、すまんな」「ありがとねぇー」

 

 その後、全員でそれとなく予定を確認して朝食を終えた。マイヤさんと王妃様は完全に仕事オフで母さんと合流するみたいで何やら話し込んでいた。マキスさんたちは装備のメンテナンスをするらしく中庭を貸して欲しいって言われたので、滞在中は許可とらなくて好きにしていいですよって言っておいた。まあいつまで滞在しててもいいんだけどね。

 

 食事を終えて、ブライアンの仲間を受け入れる準備をしようかなって思ったけど、何匹くるか、わっかんないんだよねぇ。とりあえず考えながらお茶でも飲みますかねぇ。用意も色々考えなきゃだし。

 

 リア殿下、セレネ姉さんと昨日の織物の話やブライアンが連れて来る猫の事なんかを雑々と話しながら談話室へ移動した。後ろには王妃様、マイヤさん、ロトルさん、母さんの大人女子組が居て微笑ましそうに聞いているのが視界にちょっとだけ入った。・・・どう見えてるんだろうね。

 

 まあ色んな人の思惑は置いておいて、とりあえずブライアンが何匹連れてくるかわかんないけど、最低限必要な事を決めますかね。

 

 「えっと、ブライアンの友達を迎えるにあたって準備しなきゃいけない事って結構あるよね」

 

 「うーんと、綺麗にしなきゃだよねー」

 

 そそ、そうなんだよね。外猫だったりするだろうからね。洗われるのは嫌だろうなぁ。

 

 「無理に洗うとひっかかれちゃいそうだよね」

 

 「そうなんですの?」

 

 たしか猫って本能的に水を嫌うんだっけか?元々が砂漠にいた種類とかなんとか聞いた気がする。

 

 「うーんと、洋服が濡れちゃったみたいに感じるって話だよ。まあブライアンが来たら聞いて見れば良い気もするけど」

 

 「そっかーそうだよね。ブライアンに通訳してもらえばいいよ」

 

 まあ、最悪は清浄かければいいよねって話なんだけど。そうやって魔法ばっかり使ってると人間強度が下がるって、どっかのメインヒロインを華麗にスルーした男の子が言ってた。

 

 「リア殿下、ブライアンが連れて来る子達は、おそらくは家で飼われていた猫は少ないと思います。おそらくは小さな虫が体に付いてたりすると思うので、一度綺麗にしてからとなります」

 

 「そうなのですね、猫さんは大丈夫なのですか?」

 

 「うーん、でも猫ってけっこう強かに逞しく生きてると思うので平気だと思いますよ」

 

 でもな、さすがに王女様が綺麗にしてない猫と戯れるのは問題あるよね。もちろん猫が悪い訳ではないのだけどね。

 

 とりあえず病気や環境部分については、仕方ないか。ある程度こっちでやってしまおう。人間強度は弱くていいや。おさげの委員長と仲良くなれるかもしれないし。

 

 そんでリア殿下やセレネ姉さんには可愛がる部門をお願いするとしよ。

 

 「じゃあ、とりあえず綺麗にするのは僕がやるから姉さんたちは猫さん達と遊ぶのをお願いしていい?」

 

 「うん!でもウェル君だけ大変じゃない?」

 

 「大丈夫、魔法使ったりしちゃうし」

 

 「そっかそうだね、おねがいしますー」「お願いします」

 

 とりあえず、こんなでいいか。後はブライアンに作ってあったブラシだのと同じものを数個用意しておけばいいよね。

 

 ・・・

 ・・

 ・

 

 その後、しばらく母さん達を含めて織機を出したりブラシを作ったりしながら過ごしていると、マゼッパさんがやって来てブライアンがお仲間を連れて来たとの報告を受けたので、みんなで迎えに中庭へと出る事にした。

 

 「にゃーにゃん(うぇるー。連れて来たにゃ)」

 

 「おー、おかえりー」

 

 うん、結構来たな。全員4匹かな?ってあれ?1匹ブライアンにそっくりなんだけど。

 

 「とりあえず、みんなに清浄かけていいかな?ちっちゃい虫とか取っちゃうね」

 

 「にゃー(たのむにゃ)」

 

 ブライアンが後ろに従えて来た猫達に猫語?で状況を説明してる。これは意思疎通のスキル持ちの僕にしか分からないのかな。

 

 「にゃんにゃ【あの子供が魔法で綺麗にしてくれるにゃ。近くに行くにゃ】」

 

 一匹ずつ近くに来たので丁寧に清浄をかけて、ついでに回復をかけておく。知らないとこに傷あったりしたら、かわいそうだからね。

 

 最初にブライアンに似た猫が「にゃにゃー」(お世話になるわね)とやって来た。風格がある。

 

 次にチャトラの子が「にゃー」(たのむにゃ)と来た。人懐っこい。

 

 その次に真っ白な子が「なぁー」(アニキまかせたにゃ)と来た。舎弟かな?

 

 最後にキジトラの子が「にゃん」(よろしくにゃ)と来た。あれだ面倒見てた子だね。

 

 最初に来た子以外は、トロール食べに来た子達だよね。うん、そうだね。間違いない。

 

 みんな綺麗にした所で、ちょっとズルして前にスキル創造でつくった人語理解をつけちゃおう。話せた方が楽だよね。

 

 「ブライアン、とりあえずみんな綺麗にしてついでに回復かけておいたよ。みんなと話せるようにしておいたから説明よろしくー」

 

 「にゃー(もう事前に話してるにゃ)」

 

 「さすが、伊達に何年も一緒に居るわけじゃないね」

 

 「にゃん(ウェルは大胆で大雑把にゃ)」

 

 的確で辛辣すぎわろた。泣いた。

 

 「じゃあ、お家にいきますか」

 

 「にゃー(そこが適当にゃ)」

 「にゃ(本当に言葉がはっきりわかるのねぇ)」

 「にゃんにゃ(さすがアニキのアニキにゃ)」

 「にゃー(いくにゃ)」

 「にゃん(はーい)」

 

 ちょっと、なにみんな遠巻きに見てるのさ。いくよっ。

 

 「えっと、みなさんも行きませんかー?」

 

 ブライアンはこうやって話せるようになったんだねー、とかあの時を思い出したわとか、やいのやいのと後ろで言われてる。


 ええい、便利だからいいじゃん。

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