98話 ようこそここへクックドルドルドゥー

 馬車で街中を移動して宿屋へ向かう。

 

 外の風景を何気に見ていると、街の人が馬車に向かって頭を下げている。

 

 うん、僕は領主様じゃないから馬車に頭さげなくていいんだよーと思いつつ、顔を出して訂正するのもメンドイので放置というね。ごめんねーごめんねー。

 

 街中の移動なので、大きなトラブルも無く宿屋に着いた、うーん訂正!宿屋だった所に着いた。

 

 思わず訂正したくなる程に宿屋近辺は様変わりをしていた。

 

 そういえば両隣を買ったんだっけか、ちょっとこの街ではみかけない位に大きな建物というか施設が建築中だった。

 

 まだ完成してないからわからないけど、元々宿屋だった部分が本館で左右が全然違う作りになっていた。

 

 右手がオープンな屋台っぽいガワが出来ていて、さしずめフードコートかな?

 

 左がウェスタンな扉がついてる建物が建築中だ。これは・・・飲み屋かな?

 

 で、本館はちょっと豪華な屋敷みたいな作りだね、レストランでいいんだろうこれは。

 

 改築の計画だったり案に参加はしなかったけど、客層だったりコンセプト毎に建物を変えた感じなのかな?

 

 でも、たしかロトル叔母さんがいっちょ噛みしちゃうとか言って気がするけど、食べ物関連のお店にしか見えないけど、錬金はどうすんだろう。

 

 まあ、そのうち分かるか。

 

 とりあえず、馬車から降りて合流しますかね。

 

 宿屋の近くで工事の邪魔にならない場所へ馬車を止めてもらって降りると、セレネ姉さんが迎えに来てくれた。

 

 「ウェルくーん、やっほーおかえり。マゼッパさんと御者さん、こんにちは」

 

 「あっ姉さん、ただいま」

 

 「はい、こんにちは」「こんにちは」

 

 セレネ姉さん、ヤッホーって何さ。いつからここはドイツになったのさ、そしてちゃんとマゼッパさんにも挨拶出来てErai!なんて・・・親目線で登山家マメ知識を脱線思考でしながら思う。

 

 ここで、ちゃんとおかえりって言ってくれるセレネ姉さんのあったかさよ。

 

 にしてもだ、普段から接客している所為もあってか、セレネ姉さんの成長が早い。

 

 僕の3つ上で、まだ11歳だったと思うんだけど幼女だったのが美少女に変わっている。

 

 伸ばしている青い髪はサイドが短めの姫カットにしていて、長髪部分を以前にあげたアクセサリを使って綺麗にまとめている「うん、それ無理」とか無慈悲に言いそうな委員長っぽいぞ。

 

 マジでうちの姉ちゃんかわええぇ。とか思うわ。

 

 セレかわガチ勢の弟としては、このまま綺麗に育って欲しいと切に願います。

 

 「ん?どーしたの?」

 

 「ううん、なんでもないよ」

 

 「また、なんか考え事してるー。ウェル君いっつもだよねっ」

 

 「あははは」

 

 会話中に考え事して上の空の事、結構あるからねぇ。うんうん、ごめんちゃい。

 

 「で、父さん達は?」

 

 「んーと、大工さんが馬車来たのを教えてくれたから、家からお泊りの荷物を持ってくるって家に行ったよ」

 

 「そっか、じゃあ家に行けばいいかな?」

 

 「そだねー一緒に行こう」

 

 「マゼッパさん荷物を持って来ますので、ここで待っててもらえますか?」

 

 「はい、お待ちしてますね」

 

 マゼッパさんの了承をもらって、荷物をまとめている父さん達の所へ向かう。

 

 あちこち工事をしているので「危ないからね」と言って手を繋いで家まで案内してくれたセレネ姉さんを僕は忘れない。曲がりくねった道を行っても忘れないのだ。

 

 家の庭だった場所は、資材が大量に置いてはあるが、ほぼ原形のままだった。

 

 父さんと母さんが荷物を大き目の木箱と樽と布袋に詰めた状態で玄関まで運んでいる姿が庭越しに見えたので声をかける事にした。

 

 「父さーん、ただいま。荷物そこでいいよ入れちゃうから」

 

 アイテムボックスに入れちゃうから、無駄に運ばなくていいのよー。馬車は2台で来たけど、人のキャリーがメインだからねぇ。

 

 

 「ん、ウェルか。おかえり。そうだな任せていいか?」

 

 「もちろん、ここに出てる奴でいんでしょ?」

 

 「ん」

 

 出ている荷物をしまって行く、結構あるなぁ。

 

 って調理する道具とかも一式もってくのか。さすが料理人、道具は職人の歴史と魂ですね。

 

 「あら?ウェル君おかえりー」

 「おか」

 

 衣類をつめた布袋を持って母さんとロトル叔母さんが家の奥から出て来た。

 

 「母さん、ロトルさん。ただいま、荷物しまっちゃうから頂戴?」

 

 「あら、そうだったわね。じゃあ任せちゃうわね」

 

 父さんと母さん、言葉遣いは違うけど同じ言い回しで、ちょっと和んだ。さすが夫婦。

 

 荷物をしまうのは一瞬なので、すべてしまい終わるタイミングでロトルさんが声をかけて来た。一応続柄的には叔母さんなんだけど、見た目が若いしなぁ叔母さんって感じしないよなぁ。

 

 「ねぇ、ここまで用意してなんだけど。私も一緒でいいのよね?」

 

 「もちろん、家族でしょ」

 

 たしかロトルさんは錬金屋を畳んだ筈だったし、これからも宿に住むんだろうしね。

 

 「そう、そうよね。家族よねっ」

 

 ってか、もう宿じゃないのか。大規模な食事施設よねぇ。

 

 ・・・名称とか考えているのかな?

 

 家族という言葉に思う所があったのかプチ感動?してるロトルさんを眺めつつ、新しく建つ建物について考えていた。

 

 宿から食事施設かぁ・・・って宿の人は?どうなったの?いつも同じメンバーが泊まっていたから、それこそ家族じゃないけど、結構親しみあったのだけれども。聞いてみるか?

 

 「母さん、宿を定宿にしていた人達ってどうなったの?」

 

 「んー、ほとんどの人が他の宿に移動した感じよ」

 

 そかそか、良かった。あの3人娘も物件探してる的な事いってたしね。

 

 街でまた会えるならいいよね。

 

 「それでね?これは相談したかったんだけど」

 

 「うんうん?」

 

 「まだ移動しきれて無くて、家で一緒に住んでた子たちが居るのよ」

 

 「うん?あーいいよ、一緒に僕の家にしばらく住むんだよね?」

 

 「ほんと!よかったわ。女性ばっかりだから変な宿で泊まるわけには行かなくてね」

 

 あー、ほんと彼女ら縁があるね。これ冒険3人娘でしょ。

 

 「この間あった時家を買うか借りるか的な話をしてたもん」

 

 「そうだったのね、出来る限り自分達で頑張りたいって言ってたんだけどね」

 

 まあ、間に合わなかったのよね。長い事冒険してるから蓄えはある程度あるだろうけど、家を買うとか住処、拠点を変えるって結構大事だもんね。

 

 「うん、で彼女たちは?」

 

 「今日の午後にウェル君が迎えに来るのを知っているから、荷物を整理した状態でギリギリまで物件を探していると思うわ」

 

 「そっか、遠慮せずに言えば良かったのにお部屋いっぱいあるから余裕だよ」

 

 「そうね、先に話しておくべきだったわね」

 

 まあでも、そこは大人が子供の世話と親が子の世話になるっていう2重構造だしなぁ、子の世話になります。自分の職の都合で顔見知りとは言えお客も引き受けてくださいってのは言いづらいよね。

 

 「じゃあ、荷物整理したり戸締りしたりしながら彼女たちを待ちますか、マゼッパさんに伝えてくるね」

 

 「ウェル君、私が行ってくるよー。人数が3人増えるのと少し待つ事を伝えればいいんだよね?」

 

 「うん、そうだよね。じゃあお願い」

 

 起動力のあるセレネ姉さんだ。ふだん宿の手伝いとかで細々した用事してるから、すっと自分で出来る事をやるんだろうな。いい育ち方してるなぁ。まじ天。

 

 待っている間に、宿の改装の計画とかを色々母さんから聞いた。

 

 ざっくりまとめると、右側のフードコートみたいな所は、持ち帰りできる軽食だったりを売る場所で本館はレストランであってたみたいで、お高い食事も出せるようにするらしい。

 

 そして、左側のお店はロトルさん経営の飲み屋でした、お酒の配合もまあ錬金っちゃぁ錬金か。

 

 どの店も厨房と裏でつながるようにして、軽食だったり持ち帰り品を各店にだすらしい。

 

 それにあわせて、何人かの店員さんを雇うらしいが、父さんむっちゃ忙しそう。

 

 料理を分担するとレシピの漏洩云々が出ちゃうので、父さんから「後で相談があると思うわ」って言われた。

 

 まあ僕としては父さんに開示したものは父さんの裁量で好きにしていいと思うんだけどね。

 

 その父さんは大工さんと今後の打合せ、そりゃね家に居なくなるわけだしね。

 

 母さんとロトルさんと宿?について話し込んでいると、伝言が終わったセレネ姉さんと一緒に冒険3人娘がこちらにやってきた。

 

 「ウェルくんー伝えてきたよ。でもちょうど帰って来たから一緒に来たけどね」

 

 母さんに目配せをすると、頷いて請け負ってくれた。

 

 「3人ともおかえりなさい、どうだった?こっちはウェル君には了承をもらったから荷物を持って来ても平気だけども」

 

 「戻りましたー」「ただいま戻りました」「・・・ただいま」

 

 「残念ながらーいい物件は見つかりませんでしたっ」

 

 「そうねぇ、最近この街も活気づいているものねぇ」

 

 母さんが横目でこちらを見るが、僕は何もしてない。転生者オセロとかプリンとかNAISEIとか一切やっていない。。。と思う。うん、してない。

 

 まあ、それより。3人娘に気を使われるのも困るので、軽くほぐしておこう。

 

 「3人とも遠慮しないで泊まってくださいね。小さい頃から知ってって家族みたいなものですから」

 

 「ウェルくーーん、ありがとうっ」

 「ウェル君、すまない世話になるよ」

 「家族になるしかない」

 

 3人と母さんが荷物を取りに行ったので、いつの間にか戻って来た父さんを入れてロトルさんセレネ姉さんと僕で家の戸締りをしっかりしていく。

 

 しばらく人が住まなくなるので防犯も兼ねてしっかりと施錠したり水周りが腐らないように貯水してるものや水分は綺麗に処理しておいた。

 

 その後、3人娘の荷物を預かってマゼッパさんの待つ馬車へと総勢8人で向かった。

 

 豪華な方の馬車に僕とセレネ姉さんとマゼッパさんが乗り込み、幌馬車のほうは父さん達が乗る事にした。冒険娘のレーテーさんがこちらに乗ろうとしたがアレサさんに無言で首根っこを掴まれて猫のように運ばれていた。

 

 「すごいねー豪華だねー。これウェル君の?」

 

 「姉さん、これは領主様からお借りしてる馬車だよ」

 

 「そうなんだー、ふかふかだー、きもちいいねー」

 

 なんだろう、セレネ姉さんが少し幼児化してしまった気がする。

 

 おっかしいなちょっと大人になったとおもったんだけどなぁ笑。

 

 すごいねーはやいねー静かだねーとはしゃぐセレネ姉さんを乗せて馬車は街を抜けて、僕の家へと着いた。

 

 さて、結構な人数になったので部屋割りとか家の説明とか色々しなきゃね。

 

 なんてことを思いながら馬車を降りると、ブライアンがどこかから走って来て、セレネ姉さんへと飛びついた。

 

 「にゃー(セレー)」

 

 セレネ姉さんは飛びついたブライアンを抱きかかえるようにキャッチして、抱っこして可愛がりはじめた。

 

 ブライアン・・・せんせぇ。

 

 ゴロゴロがここまできこえるぜ。

 

 んんぅ。とりあえず気を取り直して

 

 みんなに家を案内しよう。そうしよう!屋敷の大きさに驚いてる場合じゃないんだぜ父さん!

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