76話 期末商品棚卸高

 時間が午後に近づくにつれて、徐々に来客も増えて来た。

 

 やたらと色んな人に接触するのも宜しくないので、マイヤさんにお願いしてメイドさんを1名お借りしてガードしてもらう事にした。

 

 僕付きかな?と思ったメイドさんはブライアン付きになってしまったので、いつもとは別のメイドさんだ。お茶会の用意をしながら、僕に付けるメイドさんを出せるなんて貴族ってすごい。

 

 さて午後からはデザート作成のテストをしますかね。

 

 寝泊まりしてる部屋から、調理場へ移動する。そこで料理人さんにお願いして調理道具、酢、フルーツ、はちみつを貰って来た。ザルに関しては目が少し荒い気がするけど、まあいいでしょ。漉した具合を見て布で絞る時に調整すればいいよね。

 

 調理場の裏手の小さな庭で火を使うことの了解を得て作業開始だ。調理場はお茶会の対応で忙しいので外でやるのですよ。あっちは鉄火場だよね。お茶会なんていってるけど、お茶だけな訳ないもんね。

 

 まあ僕は自分の事をしますかね。今回の大体の段取りはテングサを煮る、漉す、絞りだす、カットしたフルーツ入れる、冷やして固めるって感じかな。

 

 よし、やりますか。

 

 アイテムボックスから焼き肉で使ったコンロを取り出してセットする。

 

 コンロの上に鍋を置いて水を張る。

 

 アイテムボックスからテングサを出して、自然干しされたピンクに近いものを選んで出す。

 

 白い石灰質をすべて取り除く、この石灰質が多いとゴリ付きや、変な味が染み出してくるので極力なくす。ぺっぺっぺっ。

 

 石灰分が取れたら、鍋に入れて水と酢で漬ける。水に漬けて1時間放置くらいかな?

 

 この間にコンロに火をつけたり、フルーツをカットしたりしておこう。調理場に戻って小さなスペースを借りてカットしていく。鉄火場の邪魔をしちゃいかんざき。

 

 星型だったり、ウサギ型だったり、猫型だったりと可愛らしくしておこう。デザートは見た目も大事だよね。カットした端切れは潰して味付けに使えるので種類毎にまとめておこう。

 

 形がこわれないようにお皿に並べてっと。む?メイドさんキラキラした目をして見てもあげませんよ。チクリと釘を刺すように「持ってっちゃ駄目だよ」って軽めに言っておく。チラチラ見てた料理人さんがお茶会に間違って持ってかないように注意も込めてね。

 

 裏手の小庭に戻ってコンロに火をいれる。水に漬けていたのはどうなってるかなぁ。ってあれか清浄かけておこう、小さい汚れはとれるだろう。

 

 コンロの上に鍋を置いて小一時間程、煮込むトロトロになるまでじっくりと煮込む。

 ・・・

 ・・

 ・

 煮込み終わったらザルで漉しつつ、テングサがドロドロになっているものを取り出す。

 

 取り出したテングサを布で包んで、絞りだす。

 

 漉したものと絞ったものを一緒にして寒天成分の出来上がりっと。見た感じ出来てるっぽいね。

 

 これにハチミツとさっきのフルーツの切れ端を潰したものを少量まぜて甘味を追加してっと、銀で杯を作って1/3程入れる。

 

 入れ終わった容器に均等にフルーツを置いていく、フルーツが入ったら、もう一度流し込んで終わり。

 

 最後にバットみたいな広いお盆に、魔法で雪を積もらせて、雪の上に細長い棒で猫の絵をいくつか書いてその上に綺麗に配置して完了っと。やだーかわいー。雪とけるかな?バットの隅に氷いれとくか。冷え続けますようにっと。

 

 どやあぁああそやぁああ、見た目も美しいというか可愛いぞ。雪猫じゃい。

 

 材料がまだ残ってるので試食用に3個作る。さっきから目線が強いメイドさんと、僕と料理長さんの分だ。ここはズルをして、パッと魔法で銀杯を冷やしちゃう。

 

 いざ実食、ぺーれれーれ。「あっおいしいじゃん」

 

 「メイドさんもどうぞ?」

 

 「はい、いただきます」

 

 ・・・どうでしょう?甘くてプルプルでフルーツの味が出てくるという新触感。

 

 「どうです?」

 

 「おいしいですっ」

 

 よし、じゃあ料理長さんに味見してもらってOKだったら、サプライズでお茶会に出してもらおう。

 

 ははは、マイヤさんを驚かしとこ。ちなみにサプライズは当人に迷惑がかからない事をするべきだと思う派です。今回は特別な事をしてないので、腕のいい料理人雇ったのよって言い訳が立ちそうなのでやりました。

 

 よし、マジカルクッキング終了!!!

 

 ちょっと理科の実験みたいで楽しかった。こんどは豆系いっちゃおうかな。海近かったし豆腐とか作ってもいいよね。海水煮て成分残すだけだし似たようなもんだ。

 

 では後片付けをしますかね、コンロの火を消してっと・・・・。

 

 庭先の片づけを終えて、料理長さんに味見をしてもらい。無事OKをもらえたので、適当なタイミングで出してもらう事にして部屋に戻った。

 

 あとは部屋で引き籠って色々やるので、部屋付きのメイドさんだけで大丈夫ですよと、マイヤさんに派遣してもらったメイドさんへ声をかけるが、本日はご一緒しますとのことなので了承しておいた。了承で思い出したけど、拝承しましたってメールに書かれると心がスンッってなるよ。超どうでもいいけどね。

 

 

 最近あちこち手をつけてるから、持ってるタスクを整理しないと、忘れてしまうものが出そうだし一度整理かな。

 

 えっと王都に来た目的は三つだっけか、王族と教会関連、学園見学、エステ処理。

 

 王族と教会関連は、王族への顔見せと後ろ盾化は成功したかな。教会はもう砂になったし、天使さんズが結構目を光らせてるっぽいからいいかな。

 

 ちなみに次は自分で対応しよう、残念だけど次は殲滅だね。拉致、監禁計画に拷問準備、暗殺未遂って来たからね。

 

 もう容赦は無しで、もちろん関わって来なければノータッチで。僕は敵に情け容赦をかけて、延々引き延ばすアニメや小説とか嫌いだったからね。結果的に敵方が延々と胸糞無双するだけの物語なんて、何が楽しいんだろうドMかな?って続きを見なくなったり、二巻以降は買わなくなっちゃったの多かったな。序盤の期待を返せって感じ。おまえだぞ二期の主人公を踏み台にした自由な人工新人類。

 

 学園見学は、まあ出来たね。結果が良くなかっただけで、結果的に行く意味も解消したしOKだね。

 

 最後はエステ処理かぁ、これは後どれくらいあるかだねぇ。王妃様はやったからいいんでない?って思ってたりしてるけど、甘いよね。雨後のタケノコらないようにと願うだけか。

 

 こうやって考えると、大きな目標は1週間もしないで終わっちゃったね。まあマイヤさんの都合ありきで一ヶ月の旅程なんだしね。僕が必要で算出した期間じゃないから仕方ない。

 

 

 じゃあ、あとは自分でやりたい事を整理しておけば良いかなぁ。

 

 まずはお土産の制服ね。これは型紙を作れば終わりになっているね。よし!

 

 つぎにギターね。これはパーツの図まで出来てるから。木を仕入れて削りだしだね。よし!

 

 あとはマイヤさんに伝えるレシピだね。これはカレーしか決めて無いか。まだ!

 

 ってことでレシピか、んー今回のデザートを入れないと後でマイヤさん困るだろうから。カレー、デザートは確定か、後最後の1個を何にしようかな。

 

 ・・・油つかったフライにしようか。カレー、デザート、フライ料理ってことで、これなら料理にパターン作れるし、魚でも肉でもフライにすれば美味しい。じゃあ、さっさと料理本を複製してしまって終わりにしよう。

 

 ごちゃごちゃと整理と軽い残務処理した結果、王都でやることはお土産の準備だけとなったので、型紙をつくる為に、大型の紙が欲しいと思ってメイドさんに聞いたけど、そんな大きさの紙は無いと言われてしまった。そっか大きな紙は工場でロール紙つくるようなレベルの話だわさ。わさわさ。

 


 うーん、どうしようかな。・・・ああ、布に直接書いて型通りに切ればいいだけじゃん。サンプルで縫製して置けばいいじゃん。素人の適当縫いなのでちゃんとした品に仕立ててくださいって。仮縫いなら解せるだろうし。

 

 メイドさんにお願いして裁縫セットを用意してもらった。布に線を直引きして、切り出して仮縫いをする。返し縫?祭り縫い?そんなのはわからないのだ。デザイン図とは別に縫製図みたいなのを作ってここは頑丈に縫ってくださいとか指示書を書いておけばやってくれるだろう。

 

 うははは、プロに丸投げシステム発動。それでいいのだ、それがいいのだ。

 

 製作活動は楽しいなっと、料理だの服だの物を作ってる時が幸せだ。

 

 そんな小さな整理や仕掛かりの雑務処理をしてると、マイヤさんがお部屋にやって来た。ん?お茶会とやらは終わったのかな?

 

 「ウェルくーーん、ありがとうーー」

 

 「あっマイヤさん、どうでした?おいしかったです?」

 

 「もうっ大好評よ、おいしかったわよ。それにトレイの雪に猫さんが描いてありました」

 

 「ちょっとした遊び心でした。喜んでくれたなら良かったです」

 

 「久々に王都に来たからということで主催したんだけど、面目が立ったわ。ありがとうね」

 

 「いえいえ、どういたしまして。それでお茶会は終わったんですか?」

 

 「ええ、終わったわよ。一部の貴族はお泊りしていくけど、それはエステの人ね」

 

 なるほど、エステについて話してるような仲の良い貴族はお泊りで、そのままエステ終わらせようって事か、いいね。訪問とかあるのかと思ったわ。ああ、だからお風呂場の改修とかしてあったのか。

 

 マイヤさん卒が無いなぁ。

 

 「何名か泊まられるんなら、歓待しなきゃですよね。わざわざ顔出してくれてありがとうございます」

 

 「うふふ、いいのよ。それでね、エステの事もあるから事前にある程度顔合わせしておこうと思ってね。今日の夕餉は他の貴族と一緒でいいかしら?」

 

 「えっと、マイヤさんが懇意になさってる方々ですよね。後ブライアンはどうしましょう?」

 

 「そうよ、領が近かったり幼いころからの知り合いだったりね。もちろんブライアン君も一緒よ」

 

 「それなら、一緒でも大丈夫ですよ」

 

 「わかったわ、それじゃそれで手配しておくわね」

 

 「あっそだ、これマイヤさんの家に渡す分の料理本です。カレー、今日のデザート、後はフライという料理法について書いてあります」

 

 「今日のデザートもあるのね、ほんとに仕事早いわね、ありがとう頂戴するわね」

 

 ふふふ、仕事は積み上げないタイプなのですよ。今日やれることは今日やる。ただし定時内で笑。

 

 その後、歓待もあるのかマイヤさんは早々に部屋を後にした。僕はギターの構造図や制服の小さな手直しを続けて時間を過ごした。

 

 やがて、夕餉の時刻となり、はじめて目にする貴族の方々と食事を共にした。

 

 マイヤさんが親しくしているだけあって、まともな人ばっかりで楽に食事をすることが出来たのだが隠し子説や、実は恋人みたいな話題は面と向かってしないでください。女性複数対1人で会話すると女性側がパワフルになる法則。ちょっとそこでマイヤさんも満更じゃない顔しない。まだ8才に色恋は早いのだよ。若さゆえに。

 

 食後からは、いつもの流れで談話室で親交を深めて、やがてお風呂で似非エステという流れだった。

 

 さすがに3回目ともなると慣れて来て、なんというかサイドストライプな想いがスタンダップして来る事も無いので、淡々とやった。ああやったさ。

 

 年代的に経産してる方が多かったので、お腹やお胸をえいやーとう、からのうーやーたーで綺麗にしておいた。アレでアレな部分もアレしておいた。まあ程良くね。

 

 「うちは女の子ばっかりだったから、頑張って男の子を産むわ」

 

 との宣言をいただいたけど、どうコメントしろと!!

 

 ここらへんの話題は、8才という年齢に合わせて、すっとぼけておくことにしようと心に決めているのだよ。

 

 そして一応施術しながら、マイヤさんから聞いていると思いますが守秘だけお願いしますと各人にお願いしておいた。 

 

 

 結構人数が居たので、時々お風呂に戻って温まったりしながら続けてる、あと5人位かなぁ。

 

 

 ・・・ふう、これを乗り切れば、1人頭10黒貨やで。負けるなウェル吉。泣くな心の前しっぽ。

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