37話 金の雨が・・・

 それから数日間続いた雨の最中にも、ブライアンは朝食を終えるとそそくさと出かけていた。帰ってくると何事も無いように眠っている。どこ行って何してんだろね、聞いてみるか。

 

 「ブライアンって最近どこいってんの?」

 

 「にゃー」(子供の面倒みてるにゃ)

 

 「えーーブライアン子供いたの?」

 

 「にゃー」(違うにゃ、産んだ雌猫が子育てしなかったにゃ)

 

 ブライアンの子供じゃないのかビックリした。そういうや猫の育児放棄ってあるらしいね、お乳とかどうしてんだろうね。まあブライアンはしっかり地域のボスしてるってことだ。

 

 「ごはんとかは食べれてるの?」

 

 「にゃー」(普段は人が面倒みてるにゃ、雨で寒いからあっためてるにゃ)

 

 「うんうん、優しいボスです。僕も何か手伝う?」

 

 「にゃーう」(いらないにゃ、じゃあいってくるにゃ)

 

 猫って人みたいに結婚をしっかりして、夫婦を作るわけじゃないからなあ。猫社会も色々あるんだろう。・・・それにしてもブライアンって奥さんとか作るんだろうか。ボス猫ってなんか、あちこちに種つけてるイメージあるわ。でもここらの話って聞くのは気が引けるな。にゃんこプライバシーだ。にゃん権侵害だ。

 

 アホな事考えてないで、小雨だし午前中の鍛錬をしようっと。まだ足元ぬかるんでる場所あるから、走り込みは軽めでねっと。走り、素振りをし、投擲の練習をし終えて今日はおしまい。打撃練習用人形は雨が続いた為に、父さんに頼んで倉庫にしまっちゃったしね。ここまで。

 

 さて、どしよっかな。雨が降るとほんとにやる事ないよなぁ家庭用ゲーム機が懐かしいな。尻尾斬ったり美味しく焼いたりと。ああ、狩りで思い出した。外に出かけるなら武器防具周りを作っていかなきゃいけないって話があったわ。いつまでも木刀ってわけにいかないのだ。

 

 よし、今日は使う武器の案でも出して、完成図案を何個か作ることにしよう。下書き用の紙とペンを用意してっと、大事な事だからじっくり考えますかね。


 自分で使うものだから、自分の理想に合わせて考えていこう。こう思うを五月雨に列挙して絞っていこ。


 ・・・自分の剣筋にあった武器がいいだろう。 

 ・・・何パターンかの戦闘シーンに合わせて武器は考えるといいだろう。

 ・・・成長に合わせて武器は考えるといいだろう。

 ・・・素材は現行流通してるものを使うといいだろう。

 ・・・遠距離、中距離、近距離の武器があったほうがいいだろう。

 

 とりあえず理想としては、こんな感じかなぁ。後は必要に応じて変えていこう。さてさて、ここらをイメージ書きながらつめていこう。

 

 剣筋にあった武器ね、もう剣道っぽい型で鍛錬してるからなあ。今までの武器の遷移としては竹刀から木刀と来てるから、次はもう直剣系しかないよね。反りがあったら剣の芯と斬撃が当たる場所が微妙にずれる気がする。やっぱ両手持ちの剣、そして剣で防御もしてしまう為に片刃のがいいと思う。


・・・イメージを元に描いていくと、結果的にフォセのような剣になった。かっこえぇ 


 戦闘シーンかぁ、場所が狭い。敵が大きい。足元が悪い。んーこれって必要ある?結果的に近距離武器用意すれば足りそうだな、考えるのはスキップでいいや。

 

 成長に合わせてね、そりゃそうだ。都度武器のサイズをあげたり長さを伸ばしたりだよね。これも今はスキップやんけ。

 

 素材は現行流通を使わないと変に目立つから、そりゃそうよね。製作依頼時に持ち込んだり特注しなきゃ大丈夫かな。

 

 最後は遠距離、中距離、近距離ね。遠距離はどうしようかな、今のダーツで足りてる気がする。これを使って行って良い気がする。


 中距離は、まあ剣が兼ねるのかなぁ。槍とか棍?あと馬に乗って、方天戟持って呂布だーーってのをやってみたい気もするけど、それは大人になってからってことで却下。


 短距離ね、これはナイフと体術でいいかなぁ、いわゆるスティレやダガーっぽいのは、人より小さいサイズならいいんだろうけどねぇ。ぶっちゃけ対人なら、引き込んで背負い投げと巻き投げした方が有利に立てそう。戦闘用というよりサバイバルナイフみたいなのが欲しいや。よしそれだ。

 

 ・・・欲しい機能をイメージしたナイフの絵を描いてみた。片刃で裏にギザギザがあるやつ。

 

 結果的に、フォセとサバイバルナイフを一本づつが残ったね、じゃあこれらをきちんと絵にしとこー、例によって構造図までしっかり描いておいた。後はこれをヴァルカンさんとこへ持って行って相談してみよう。どちゃくそカッコイイ絵を描くとヴァルカン祭りが開催されそうなので機能部分をこだわって描いておいた。装飾は[ここに装飾]みたいな雑な感じにしておいた。 


 だけど、まず最初に大型の刃物を持つことになると思うので、父さんと母さんに了解を得ることにしようと思う。宿屋にレッツゴー。

 

 宿屋に着くと、桶とモップみたいなものを持った母さんと目あった。母さんはニコッとしたかと思うと掃除用具をしまいながら話しはじめた。

 

 「ウェルくーん、今おひまー?」

 

 「うん、暇だよー。ちょっと父さんと母さんに相談に来ただけだし」

 

 「うんうん、じゃあお掃除手伝ってくれないかなー」

 

 母さんは、ちょっと小首をかしげながら言う。たしか30だよな、ここ数年間でかえって若返ってる気がする。最近は、僕が寝る前に清浄による肌活を母さんにしているので、美白効果とかも出ちゃってるんだと思う。まあとにかく・・・・家の母は美人さんである。

 

 「いいよー、って道具しまっちゃったよね?」

 

 「最近雨で湿気がすごいからねー、アレでおねがいします」

 

 ここでも活躍の清浄さんである。ってことで客室のお掃除として、母さんと各部屋を回って清浄をかけまくった。入った部屋にお客さんが居たところもあったが、新規さんでは無くいつもの人なので、気にせずに清浄をかけて綺麗にした。

 

 途中で手持ちの品もお願いされたが、母さんが「別料金でーす」と宣言していた。ここらへんはしっかりしてるなって思った。ああセレネ姉さんのしっかりした所は母さん譲りか。居ないのに感じさせるセレぢから。

 

 一通り、宿もお客さん綺麗にして父さんと母さんにご相談である。一度家に戻って描いた2本の武器の絵とダーツを持ってきた。母さんはフリースペースに居たので同じテーブルについた。

 

 「それで、相談ってなーに?」

 

 「うんと、武器を持とうと思ってね」

 

 「あーそうね、今ってあの木の剣、木刀だっけ?あれがメインなんだっけ?」

 

 「そうそう、木刀だよ。でもそれじゃ流石に頼りないから、まずは必要かなって分だけでも揃えたくてね。でも武器だし危ないから、父さんと母さんに相談しようと思ったんだ」

 

 「うんうん、ありがとね。それでどんなものを持つ予定なの?」

 

 「これを、ヴァルカンさんと相談して作っていこうと思うんだ」

 

 「ふんふん、バックスくーん。ちょっと来て―」

 

 武器の絵を机に置いて、母さんの前に差し出した。しばし母さんが見ていると調理場から父さんがお茶を3つ持ってやってきた。

 

 「ん、どうした?」

 「ウェル君が武器を作りたいんだって」

 

 父さんもお茶を机に置いて、母さんが見ている武器の絵に身を寄せる。マジマジと形状を眺めたり、唸ったりしている。ちょっと変かな?いいかなって思ったんだけど。

 

 「色々考えたんだけど、中距離と短距離用の武器を、とりあえずは揃えておこうかなって思ったんだ。遠距離は今使ってるコレでいいかなって」

 

 ダーツをテーブルの上に置くと、母さんが手に取って悩ましい顔をした。

 

 「これ武器になるの?棒投げる練習はしてるみたいだけど・・・」

 

 「この間、マキスさん達と出かけた時に、木の上に居た闇鴉を仕留めたのはソレだよー」

 

 「そっそうなのね、投げるだけよね?結構速度が出るのね」

 

 確認するのは威力じゃなくて速度ね、やっかいな奴なのは、やっぱ知ってるんだね。


 「うん、ダーツって言うんだ。後ろに差してる羽で安定するから結構思い切り投げれるよ」

 

 それから父さんと母さんはダーツを持ってみたり、描いてる絵の剣が「片刃なのは、どうしてだ?」とかナイフの「ギザギザって何に使うの?」みたいな質問をしてきた。それぞれにデザインした理由を答えていくと。

 

 「武器を持って安全確保するのは、外に出るには必要だろう。いいぞコレを持っても」

 

 「それじゃ、わかってると思うけど聞いてね。これらは刃物、・・・だから十分に気を付けるのよ、特に人に向けちゃダメよ?もちろん、このダーツだっけ?鉄の棒もよ?」

 

 「ん、だが自分の身に危険が迫ったなら躊躇なく使え。判断は任せる」

 

 さて、ここからが相談だ。そう費用なんだけど、あの金塊を使いたいんだよね。もちろん持ってる事は今まで言ってない。まだ少し離れた席だけど、宿のお客さんも居るので、こっそり小声で打ち明ける。

 

 「費用なんだけど、これを使おうとおもうんだ」

 

 アイテムボックスから、少しだけ金塊の頭を出して、すぐ引っ込める。

 

 「そっそっれは、どうしたの?」

 「んっんん」

 

 ちゃんと小声で対応してくれたので話を続けよう。神様からの贈り物だと思うんだよね。それそのままでいいや。余計な嘘つく必要ないしね。

 

 「最近までアイテムボックスを使ってなかったんだけど、開けたら入ってたんだ。たぶん神様と天使さんズからなんだと思う」

 

 「そっそうなのね、それは大事にね。自分が必要だと思うことに使いなさいね」

 

 とりあえず、これで相談事項は終わりだ。ふふふ通常相談に紛れて、大金持ってる事も認知させていくスタイル。うやむやでドサクサでガーッといってダーって感じだ。よしよし。

 

 「はーい、わかりました。これで相談は終わりだよ」

 

 「ウェル、剣が出来たら見せてくれるか?」

 

 「うん、もちろんだよ」

 

 「あら、私もナイフを見てみたいわ、ちょっと試してみたいのよ面白そうな形だし」

 

 「ん、すこし振らせてくれ」

 

 「うん、ちょっと剣は小ぶりかもしれないけど我慢してね」

 

 「もちろんだ」

 

 「近いうちにヴァルカンさんの所へ相談に行く事にするよ。お仕事中にありがとうね」

 

 「いいのよー、お掃除手伝ってもらったし」

 「ん、セレネも居るしな」

 

 これで、父さんと母さんの許可も得たし。後日ヴァルカンさん所へ相談に行こう。製造方法は、鍛造か鋳型かどっちか分かんないけど、現行技術からかけ離れない方法でお願いしよう。

 

 とりあえず今日の任務完了です。後は夕飯までプラプラしてよーっと。

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