本編

1話 人には向き不向きがある

「すまなかった」

「「「大変、申し訳ございませんでした!!」」」


 突然の全力謝罪を複数の人達?から受けている、なんじゃこれ。


 まずは、現状を把握しようと無意識に周囲を見渡してみる。


「なにこれ?ここ何処よ?」


 と考えることが出来ない程、ファンタジーの香りがする。


 現代とかけ離れた景色、おおよそ電気なぞ通ってなさげな石造りの宮殿と綺麗な赤色に染まったカーペット。


 そして、先ほどした声の方に改めて向き直してみる。これは天使ってやつか?


 背中から羽の生えた女性が3名、新橋でもなかなか見れないレベルの丁寧なリーマンおじぎで謝罪中している。

 

 白い布切れの服を着た天使みたいな女性の全力謝罪、この絵面だけで罪悪感すごい。


 あの服トーガだっけ、ギリシア風のアレ。あの羽ふさふさしてるな、ダウンにしたら暖かそうだな。そんなガード緩い服で高角度で謝罪したら・・・色々と目のやり場に困ります。


 その後ろには強いのか弱いのか、白いのか虹色なのか、見極められないけど神々しく光っている輪郭すら分からない存在が居る、なんだろ光の塊?しいて言うなら神っぽい。

 

 なんだこの光る人、輪郭すらつかめないぞ、そして何故か跪きたくなるんだけど。


 うん、むっちゃ情報過多、無理だな理解をやめよう。安全であるかは、きっと安全だろうとしか言えないし相手の作る展開に任せよう。


「さて少しは、落ち着いたかな?」


 はい、状況はわかりませんが、頭を上げていただきたく思っています。謝罪いただく意味も理解出来ていませんのでお願いします。


「君たち。彼もああいってくれてるし、楽にしなさい」


「「「はい、ありがとうございます」」」


「まずは自己紹介だね、私はアンシャルと言う名をも持つ存在。地球の理解で言うと、神に該当するのかな?この子達は私の手伝いをしてくれている天使と言えばいいかな、名前は残念ながら無いんだ」


 神様かぁ・・・なるほどなぁ。道理で跪きたくはなるし、輪郭もわからないわけってわけですね。


 アンシャルって文字の書体名とかにもなった大物の神様じゃん、どこだっけバビロニア?アッシリア?あたりの神様だっけか。ふふふなんだこの展開わけわかんない。


 「そうそう、その認識であってるよ。かつて地球に関与した時はそう呼ばれていたこともあったね。それから、ここは地上ではないから思うだけで伝わるからね。話そうとしたら声も出るけど意味は無いね」


 おー便利便利、だけど余計な不実とか不敬な事は考えたらダメってことだな。


 でも天使さんはガン見しますけどね!つい見ちゃうってレベルを超えちゃって綺麗だし。


「ははは、そうそう変に取り繕わなくてもいいと思うよ、性的欲求やそれに伴う美しさへの賛美が悪とされるのは地球だけの価値観だしね」


 あー海割ったおじいさんとか、放蕩王子とかが率いてる教団とかは、時代も古いしね。話を聞かせなきゃいけなかった人たちの当時の知識や、文化のレベル云々で、その時に便宜上言っただけの言葉が多くて今は当てはまりづらいって言えば、まあそうなのかもね。


 そこには為政者の損得もあったんだろうし、文化文明の程度が低い時点で、女性側の防衛や子供の死亡率とかも問題の背景にあったんだろうなぁ。って今更考える事じゃないか。


「少しそれちゃったね。次に今の状況を説明をしていこっか、まず君は地球での生を終えました。人に限らず知性を持つ生き物は、輪廻転生といって色々な時代や世界に何回も生まれ変わっているのだけど、君は前回の転生時点で担当していた天使が間違えて、地球という本来転生すべき場所とは違う世界に転生させてしまったんだよ、地球人の感覚的には地獄に落ちたって感じかな」


 んんん?輪廻転生がある、それは理解できる。間違えて転生した、それも理解できる。


 でも地球に生まれた事は地獄に落ちたみたいなもの?それはなんだ?そんなひどい環境だったかと言われると疑問だ。


「前の転生先の地球は、地球世界の言葉だと地獄としか言いようが無いと思うけどね。君の居た国には、八大地獄なんて解釈があったと思うけど、たしか等活、黒縄、衆合、叫喚、大叫喚、焦熱、無間の八つだったかな。それで罪としていることと、人類の繁栄と社会の中で目指すべき立場や、人生の最終目標は同じことになっていたりはしてなかったかい?」


 殺す?奪う?盗む?姦淫?あたりが地獄に落ちる罪だっけか、そんなの目指したかなあ。んーわかんないや、まず聞いてみよう。


 「他の生命をないがしろにすればする程、栄達する仕組みの世界。

 

 結果も過程も不平等であることが当たり前に存在し、奪うことは奪うものが定めた法の元に安全なら好きなだけ奪っていい。

 

 強き者が好き勝手に決めた法にあたらなければ、すべては罪ではない。邪であろうが、淫らであろうが、奪おうが、盗もうが何でも罪でもない。

 

 逆に何もしなくても法にあたれば罪だ。こんなものは地獄以外のなんでもないよ、法さえ味方につけてしまえばなんでもし放題の天国という名の地獄」


 ただの競争世界なだけじゃないのか?


「そんな奪い合うだけの世界は、原始の動物や輪廻転生の初期段階の魂が転生する場所なんだよ」


 ただ争うだけで過熱した世界ってことなのかな?


 負ける者に価値は無しってのは地球世界に染まってるんだろうなぁ。


「競い合う事が本位の世界だからね。世界も転生する魂もまだ幼い。だからこそ生きる為に、成長する為に競争する力を育てる為の場所としては最適ではあるんだ。戦争、学問、スポーツ、競うことが勝つことが人や動物で作る社会での優位となっていく、勝って生きることがテーマだったり、大好きな魂に向けた世界なんだ」


 ああ小さな生き物や弱い生き物は、個体では必ず負ける者になってしまうね。まあそうなのかもなぁ。それで競いたい人には天国な地球は、俺には地獄ってだけの理解でいいのかな。


「うん、今はその理解で終わらせていいと思うよ。魂の存在意義とか成長段階とか語りだすと長いしね。


 そこで、ここからが本題なんだけど、転生しなおしましょう。あなたの魂の性質と成長テーマに合う世界へ。


 次は絶対に間違いのないようにと私が指示しておいた3名の天使で、万全の転生処理を行います」


 ちなみに前回の転生担当の方は・・・・


「聞きたい?」


 いいえ、大丈夫です。大丈夫です。・・・幸せだといいなぁ


「前回のミスのお詫びとして、快適に暮らせるように若干の支援もします。そして前回の子の幸せを祈ってくれるんだね。ありがとう悪いようにはしないよ」


 いえいえ、それなら良かったです。・・・これ前回担当さんあぶなかった説浮上です。


 「そういう考え方が、地球向きじゃないんだよ。そういうとこさ」


 ちょっとだけ納得かも?それにしても、そっか・・・。


 俺このままってわけにいかないもんね。すごそうな神まで出張ってきて浮遊霊?とか笑えない。


 姿かたちはあるけど、なんだか生前?の名前すら思い出せないし、お詫びなんて言ってくれてるけど、本来はこの方に逢えることなんて無いくらい神々しい。


 逢えるだけでもきっとお詫びどころの幸せではないはずだ。


 天使さん達もアレでしょ宗教画とかにかかれて、どっかの世界では敬われてる位の偉いさん達でしょ。その世界知らんけど。


 「ふふふ、ありがとう。ある程度理解してもらったみたいだし、天使の3名と一緒に転生処理をはじめてくれるかい?私はこれで失礼するよ」


 はい、アンシャル様、わざわざありがとうございました。


 礼の持ち方を知りませんが感謝しております。


 「こちらこそ・・・ありがとう」


 気付くとアンシャル様がいなくなっていた。さて、天使の皆さま宜しくお願いします。


「「「はい、おまかせください」」」

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