「嘘つきの義妹に婚約者を寝取られ、婚約破棄されましたが、何故か隣国の王子に求婚されています。私の作った薬が必要と言われても、もう遅いです! ホワイトな宮廷で薬師として雇われたので」
【義妹SIDE】ついには帝国が戦争を仕掛ける
【義妹SIDE】ついには帝国が戦争を仕掛ける
「え、えらい事になっていますわ……世の中が」
アイリスの義妹。ディアンナは恐れ慄いていた。ついには戦争が始まるのだ。ディアンナは間近で帝王と娘――王女リノアを見てきた。
「あの親子、本当に頭がおかしいですわ!」
ディアンナを知っている者からすれば「お前が言うな!」と言いたい所ではある。だが、そのディアンナを持ってしても帝国の異常さは際立っている事を感じ取っていた。
「いえ、親子だけではありませんわ。やはり国のトップとなる帝王の頭がおかしいんですの。それが国全体に影響しておりますわ」
ガサゴソッ!
物音がした。
「ひいっ!」
ディアンナは驚いた。帝国では王族、特に帝王を侮辱するのは不敬罪という事で即刻死刑になるのである。その為誰かに先ほどの言葉を聞かれていたらまずかった。
しかし、現れたのはネズミであった。
「な、なんだ……ネズミですの。よかったですわ」
ディアンナは胸を撫でおろします。ディアンナは屋根裏部屋で生活をしていた。酷く不衛生な場所で時たまネズミやゴキブリが出るのである。
だが何となく、ディアンナはその環境に慣れてしまい、普通の令嬢ならば驚くところ、既に驚かなくなってしまっていたのだ。
窓から外の様子を伺う。兵士達がぞろぞろと進軍を始めているのである。
「ディアンナ、何をやっているのです! 出てきなさい!」
下の部屋からリノア王女の声が聞こえてくる。
「は、はい! ただいま!」
仕方なくディアンナは向かう。
間違いなく、戦争が起こる。あの義姉アイリスが住んでいるルンデブルグと戦争が起きるのである。
「ふふふっ……」
ディアンナは笑みを浮かべた。その意地の悪い笑みはどことなくリノア王女と似ていた。
「良い気味ですわ……あの根暗女アイリス。それにあの王子達も、皆戦争で死んでしまえばいいんですわ。ふふふっ」
実際のところ戦争で死ぬのは兵士であろう。だから王子達やアイリスたちが死亡する可能性は低かった。だが、戦争で敗北すればルンデブルグは帝国の植民地となるであろう。王子達はリノア王女の玩具になる。そしてアイリスもろくでもない扱いを受けるに違いない。
まず王子達と結婚する事などできない。お互いにとって不本意な結末を迎える事だろう。
ディアンナにとってそれで十分であった。『ざまぁみろ』という感じであった。
そう考えれば戦争は悪くない。自分は女だし、メイドだ。恐らく自分が戦争で命を落とす事も苦しむ事もないであろう。
ディアンナと帝国の考え方はひどく似ていたのだ。故に同族嫌悪をしていたのかもしれない。
今回の戦争を巻き起こした帝王とその娘、王女リノア。ディアンナは不幸な身の上ではありながら、戦争を起こした事、その事に関しては二人に多少なりの感謝の念を抱くのであった。
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