「嘘つきの義妹に婚約者を寝取られ、婚約破棄されましたが、何故か隣国の王子に求婚されています。私の作った薬が必要と言われても、もう遅いです! ホワイトな宮廷で薬師として雇われたので」
【義妹SIDE】義妹、隣国でメイドとして働き始める
【義妹SIDE】義妹、隣国でメイドとして働き始める
「ううっ……えらい事になってしまいましたわ」
ディアンナは王宮でメイドをやる事になったのだ。
「これから毎日毎日、馬のように働くのですわっ! そんなの嫌なのですわっ!」
「こらっ! そこの新入り!」
ビシッ! 鞭のような音がする。実際は棒のようなものを手のひらに叩きつけたのだ。相手を直接叩くわけではないが、そうやって音を出す事での威圧効果があった。
これはこれで立派なハラスメントだと取られても不思議ではない。
「私語は慎みなさいっ!」
彼女の名はメイド長エリザベート。メイドたちの長として厳しくメイドを躾けているのだ。
「は、はいですわっ! わかりましたわっ!」
渋々、ディアンナは答える。
「それではこれより新人研修を行いますっ! まず、起床は朝の5時っ!」
「5時ですのっ!」
ディアンナは目玉を食らったようだ。なにせ、今までまともに労働らしい労働をしてこなかったのだ。
「我々が仕える主人様より遅く起きる事は許されませんっ! 食事と簡単な体操、ミーティングの後、朝6時から7時まで食事の準備。配膳などありますっ! それから王城内の掃除っ! それから外の掃除っ! トイレ掃除っ!」
「トイレ掃除っ! そんな事もするんですのっ! 嫌ですわよっ!」
ディアンナは不平不満を並べた。
「私語は慎みなさいっ! それから昼食を経て、午後にミーティング! それから掃除! 洗濯! 配膳! それから主人様の出迎えや見送りなど、それはもう無数にやる事があるのですっ! この内容は日によって変わりますので、適宜対応してください」
「「「はいっ!」」」「はーい……ですわ」
やる気なさそうにディアンナだけ答える。
「なんですかその覇気のない声は。やり直しなさい」
「は、はい! ですわっ!」
「よろしい。それから夜も食事の後、掃除や雑務がありますが、交代制ですのでたまに休める時もあります。休みは交代制です。週に1日は休める事でしょう」
「ええっ!! 週に1日ですのっ! 少なすぎますわ!! わたくし、週に6日は休ませてくれないと体がもちまわせんわよっ!」
「何を温い事を言っているのですかっ! その週1日の休みも暇な時くらいですっ! 忙しい時は1カ月に1日休めればいい方だと心得なさいっ!」
「な、なんですの……お城での生活ってもっと優雅な生活を想像してましたわ。けど、王族とメイドでは天国と地獄程の違いがありますわっ!」
ディアンナは嘆いた。そうなのだ。楽をしている人がいれば、その分苦労している人もいる。
天国を味わっている人の裏には犠牲になって必死に働いている人がいるのだ。団扇で煽られている人もいれば、必死に煽っている人もいる。
楽をしている人の裏には苦労をする人が必ず存在している。
それが世の中というものであった。
「それでは今日のところは寮に戻って休んでよろしいっ! 明日から死に物狂いで働いてもらいますよっ!」
「「「「はいっ!」」」」「げぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
覇気のある他の新人メイドたちに対して、ディアンナは明らかに嫌そうな声をあげる。
――そして、この後、ディアンナは皮肉すぎる運命の再会を果たすのであった。
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