国王様と王妃様から縁談をされてしまいます

「アイリス様」


 私は国王様と王妃様と会食をしていました。テーブルには豪華な料理が盛りだくさんです。とてもですがたべきれそうにありません。見ているだけでお腹がいっぱいになってきます。


 国王様と王妃様からのお誘いです。私が断れるはずもありませんでした。ドレスを着て、とびっきりおめかしをしてこの会食会に参加したのです。


 エル王子とレオ王子がその場にいない事にはやはり深い意味があるのでしょうか。そう考えざるを得ません。


「はい。なんでしょうか? 国王陛下、王妃様」


「突然だけど、アイリス様は恋人とかいるの? 祖国に婚約者がいたりはしない?」


「い、いません! そういう人は!」


 ここに来るより前に婚約破棄されてきましたけど。今の私は特にそういう相手はいません。寂しいですがフリーです。


「そう。だったらよかったわ。見ての通り、私達の息子二人があなたにぞっこんみたいでね」


「よろしければどうだい? アイリス様。うちの息子、どちらかと結婚し、妻になってみる気はないか?」


「つ、つまですか!?」


 私は国王様と王妃様の提案には驚きました。エル王子とレオ王子は立派な王子様です。二人と結婚するという事はいわばお姫様になるという事です。そして二人のうちどちらかが王様になったら、将来は王妃様になってしまうのです。


 ギルバルト家を追い出された時の私からは想像もできないような境遇です。


「君はエルとレオをどう思う?」


「どちらもタイプは異なりますが、とても素敵な殿方だと思います。誰にとっても理想の王子様です。勿論、私にとってもそうです」


「良かった。だったら問題ないじゃない。ね? あなた」


「そうだな」


 二人ともそう言って笑う。


「で、ですがいいんですか? 私は王族ではないんですよ。ただの薬師です。そんな人間が王子様と結婚なんて、とてもつり合いが取れていると思えません。きっと反対する人も出てくると思います」


「それなら心配いらないよ。我が国にとっては薬師であるアイリス様の立場は英雄と言っていい」


「きっと息子との縁談を喜んでくれるはずよ」


「は、はぁ……そうですか」


 私は思わず呆けてしまいます。


「ですが、私には薬師としての仕事があります。この国の疫病が落ち着くまではそんな事は考えられません」


「ええ。すぐじゃなくていいわ。あなたにはやるべき事がある」


「だから考えておいて欲しいんだ」


 二人は私に訴えかけてきました。


 だけどここで大きな問題があります。二人とは結婚する事はできないはずです。私はエル王子とレオ王子のどちらと結婚すればいいのでしょうか。


 贅沢な悩みです。きっと世界中の女子全員を敵に回す事でしょう。そんな気しかしません。


 しかし、私はその二人の間に割って入ってくる。もう一人の人物の存在に、この時はまだ気づいていませんでした。

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