【義妹SIDE】義妹ディアンナ婚約者に婚約破棄される

「ディアンナ、君とはもう婚約者ではいられないよ」


 薬を飲んだ事で病が癒えたディアンナ。しかしこれで万事解決で幸せな未来が待っていたかとそうではない。


 ロズワールに呼び出されたディアンナはいきなりそう告げられてしまう。


「な、なぜですか!! ロズワール様!! ど、どうしてそんな事を」


「理由を言わなくてもわかっていると思うけど……ディアンナ」


「やっぱり、お金のせいですの。屋敷を売り払った事でギルバルト家が落ちぶれたから、私と結婚できない、って事ですの」


 屋敷を売り払ったギルバルト家は落ちぶれた元名家という事で界隈で有名になっていた。その為、交友のなくなった名家、伯爵家は数えきれない。そして婚約関係にある事で密な関係になったロズワールの家もまた例外ではなかった。


 お金の切れ目が縁の切れ目という事である。これは貴族だろうが一般庶民だろうが言える普遍的な真理であろう。


「端的に言うとそうなるね……。申し訳ないが我がエルフリンデ家はそれなりの名家でね。やはり妻とする女性はそれなりの家の令嬢じゃなければならないんだ」


「そ、そんな……そんな事って……ううっ」


「悪いが僕を恨まないでくれ。エルフリンデ家に生まれた宿命なんだ。世の中には分相応というものがある。今の僕と君では世間的に釣り合いがとれていないんだよ。悪いけどもっと今の君にふさわしい男を見つけてはどうかな」


「ま、待って! ロズワール様!」


「悪いね。ディアンナ。これから見合い話があってね。僕はそっちへ行く予定なんだ。今までありがとう。短い間であったけれど。君の幸運を祈っているよ」


 ロズワールは去っていく。


「うっ、うう! あんまり! あんまりですわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!! うううーーーーーーーーーーーーーーーー!!! なんでこんな事にーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 別れ際、ディアンナは号泣していた。


「……なんで、なんで、なんでですのよ! ううっ!!」


 屋敷を失い令嬢ではなくなったディアンナ。その上で婚約者にも婚約破棄をされ、見捨てられた。


(な、なんでこんな事に、あの根暗女――アイリスを追い出してからというもの、ろくな事がありませんわ)


 ディアンナはアイリスを追い出した事を嘆いていた。


 しかし、不運はこれでは終わらなかったのである。まだまだディアンナの苦難は続くのであった。


 ◇


 ディアンナは家に帰る。かつての大きな屋敷ではない。賃貸で借りた小さい一軒家である。ボロボロの家。壁には穴があいており、風はびゅーびゅーと入ってくるし。雨が降れば雨漏りする。

 最悪の住居であった。


「か、帰ってきたのね。ディアンナ」


 マリアが出迎える。病は治ったが、それでもその顔は暗い顔をしていた。かつてのような生気はない。


「どうしたのよ? ディアンナ」


「ううっ! お母様! ロズワール様に婚約を破棄されたんですの!! うっ、ううっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


「よしよし、ディアンナ」


 ロズワールに婚約破棄される事は想定の範囲内であっただろう。マリアは娘ディアンナをなだめる。


 しかし、彼女達の苦難はこれで終わらなかったのだ。しばらくして、父レーガンが帰ってくる。


「お、お父様、どうしたんですの? 慌てた顔して」


 レーガンは慌てた顔で帰ってきた。


「この国の国王から呼び出したがあったんだ。何でも薬師アイリスの噂を聞き、話を聞きたいという事だ」


「ま、またあの根暗――いえ、義姉様ですの。もう嫌ですわ。その名前、聞き飽きましたわ」


「お前達も来てくれ。どうやら私達全員に話を聞きたいそうだ」


 こうしてギルバルト家の全員が自国の国王の元へ向かう事になったのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る