「嘘つきの義妹に婚約者を寝取られ、婚約破棄されましたが、何故か隣国の王子に求婚されています。私の作った薬が必要と言われても、もう遅いです! ホワイトな宮廷で薬師として雇われたので」
【義妹SIDE】治療薬を買う為に屋敷を売り払う
【義妹SIDE】治療薬を買う為に屋敷を売り払う
「ごほっ……げほっ! ごほっ!」
「ごほっ! ごほっ! げほっ!」
ディアンナのマリアは相変わらず床に伏せっているだけであった。容態は日に日に悪くなっていく。このままでは座して命を落とす事になるであろう。
「お、お母様! ……私達、このまま死ぬの」
「い、嫌よ。嫌な事言わないでよ……私だってまだ死にたくないのよ。げほっ!」
「ごほっ! ごほっ! げほっ!」
その病床には父であるレーガンの姿もあった。ついには父も流行り病にかかり、床に伏したのである。
「仕方ない……マリア、ディアンナ、聞いてくれ」
「お、お父様……どうされたのですか?」
「アイリスはもう戻ってこない。私達のために薬を作ってはくれないだろう。王宮に頼み込んでも取り付く島もないんだ。どうしようもない」
「……ええ。それでどうするというのですか? あなた。ごほっ、げほっ」
マリアは咳き込む。そして一家は苦渋の決断を強いられる事となる。
「こうなったら仕方ない。この屋敷を売り払って治療薬を買おう」
「「な、なんですってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!! ごほっ! ごほっ! げほっ!」」
親子は病気である事も忘れるくらい、大声で叫んでいった。そして盛大に咳き込む。
「聞いてくれ。今薬は大変高額で取引されているらしい。一個で家一軒程の金額だ。三個分購入するにはこの屋敷を売り払わなければ足りないだろう」
「で、ですがお父様!! この屋敷を売り払ってどうやって生活するのですか!? ごほっ! ごほっ!」
「そ、そうよ!! 屋敷で生活できなくなるなんて、そんな平民みたいに暮らせというの!! ごほっ! ごほっ!」
二人はせき込む。
「このまま死んでは何の意味もないだろう。命あっての物種だ。それに背に腹は代えられない。その後の生活は命が助かってから考えればいいんだろう」
「ど、どうしてこんな事に……」
ディアンナは嘆いていた。あの根暗女を追い出してからというもの、不運の連続だった。全てが順調だと思っていたのに、なぜこうまで歯車が狂っていくのか。
「あの根暗女――義姉を追い出したからですの……だからってなんでこんな事に。私達は何も悪い事してないのに!! ふざけるんじゃありませんわよ!! ごほっ! ごほっ! げほっ!」
ディアンナは嘆いた。しかし時は既に遅かったのである。
こうして三人は屋敷を売り払い、アイリスの作った治療薬を手に入れた。それで命を救われはしたのだが、それと同時に豪華な住居を失い、生活に苦しんでいく事になる。
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