地の獄、天の極

あんのうん

第1話 序章ー始まり

『そうだ・・・お前に決めたぞ・・・』



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「うぉおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」


 ベッドから飛び起きる、いや文字通り飛んでたかもしれない。

 制服なんぞ来てる暇はない、いや着なくてはならないのだがどう考えたって4度寝はした。

 まさしく絵にかいたような寝坊だ。

 人間というのはこういう時の適応力っていうのは侮れない、逆に冷静になってしまうのである。


「そうだな、とりあえずコーヒー淹れて...」


『そんなことしてていいのか?今日小テストなるモノだろう』


「あっれぇ~・・・・・」


「そうだったぁあああああああああああ!!!!!!!!」


 学校をさぼり続ける俺にとっては小テスト欠席はマズイ

 非常にマズイ、焙煎しすぎたコーヒーくらいマズイ

 卒業出来ないのも・・・


 そうだな、非常にマズイ・・・


「最初からお前が起こしてくれればいいじゃんか!!」


『ワシはそんな事はしないぞ』


「ケチなやつだなホントに」


 猛ダッシュキメながらぶつぶつと喋る

 端から見ればいわゆる、ヤバイやつって感じなんだろう

 なんたって俺が今話してる相手は


 【身体に取り憑いてる龍なのだから】


 もうどれくらい取り憑いているかは忘れたが、こんな話するくらいの仲だ

 取り憑かれたことや、この事を周りに話したって、声は俺にしか聞こえないらしく変な事を言っていると軽くあしらわれた、危うく身内に病院にぶち込まれそうにもなった。

 取り憑いているのは紛れもない事実なんだが、物心ついてからは他の人に話すのはやめた。


「よし、それじゃあ小テスト始めるぞー!!」


「すいません!遅れましたぁ!」


「なんだ、やっと来たか早く席に着け」


 小テストが始まる、つっても答えは全然分からないんだが

 一応やる気だけは満々でペンを握ろうとしたその時


『おい、アイツらが来たぞ、外にいる』


 龍が話しかけてきた

 言われた通りグラウンドに目をやると

 ぽつんと一つ、影が見えた


「先生!終わったんで!!保健室行ってきます!!」


「お、おい!!!!」


 先生がなんか言ってたが聞き入れている暇はない

 ダッシュで保健室に・・

 じゃなくてグラウンドに向かわなくてはならない。


「なんの用だ?朝から走りっぱなしでキツイんだ」


「お前か?龍使いのガキは」


「あぁ、いかにも」


「ふん、このガキを殺せと言われて来てみたが・・・想像以上にケツが青そうでびっくりしたぜ」


 にやにやしながらこちらを睨んでいる、獣人ってとこか


「鼻が利きそうなのは見た目のまんまなんだな」


「うるせぇ!早く首を寄越しな!!!」


「全く・・・獣人ってのは気性が荒くて好まないな・・・せめて女のコ...」


『構えるぞ!!』


「あ、あぁ、略式・鎧装がいそう


 ポツリと呟く

 ふわりと身体が軽くなり

 包まれていく


 黒龍の力を身に纏い、鎧とし闘う

 それが俺が今やるべき事らしい


「来い、黒雨くろさめ


 声と同時に地面から突き出てくるのは日光に照らされ鮮やかな黒に輝く剣

 これが俺のメインウェポン


「行くぞ、黒龍」


『あぁ』


「ちっと服着ただけじゃ、俺様の爪は防げねぇ!!!!」


「最後の言葉、それでいいのか?」


 にやりと口角を上げ全力で地面を蹴り上げ加速し、首を横薙ぎに掻っ切る

 勿論、返事は聞かない

 聞いたところで時間の無駄だ

 


 鈍い音が後ろ側で聞こえた後、灰となって風に乗って消えていく


「またあいつらかぁ・・・最近多くないか?」


『ここ最近毎日の様に召喚されているな』


「昨日は、エルフだろ?その前は魔女だろ?んでその前は・・・」


『魔獣フェンリルだったかの』


「ああ、そうそうあれ強かったよなぁ~もう一体ずつじゃなく、まとめてドカーンと来ちまえばいいのにな」


『収拾つかなくなるであろう』


「それはまぁあれだよ俺とお前でドカーンって感じに...こう...」


『まず、ドカーン以外の語彙を覚えるところから始めるか?』


 鎧装を解きながら駄弁っていると教室で俺を睨む先生の視線を感じた

 これはまたマズイ。

 腹痛すぎて、グラウンド走ってましたとかいう意味わかんない言い訳をほざいたが、当然めちゃくちゃ怒られた。

 小テストの解答欄はめちゃくちゃだし遅刻の事も引き合いに出されてそりゃもうこっぴどく。


「は~あぁ~、めちゃくちゃしんどかった・・・」


『あれは長すぎだし説教の内容もめちゃくちゃだ、聞くに堪えん』


「やっぱお前もそう思うか?」


『あぁ、ワシはもう寝る』


「俺ももう今日はやる気出ねーからかーえろっと」


 黒龍曰く、今日グラウンドに出てきた奴らはあっち側の住人らしい

 どうにも死んだ奴らが集まる場所らしいんだけど

 どう見たって人間じゃない奴らが多すぎる

 いや、ほとんどが人間じゃない異種族だ

 空想とか小説とか漫画とかで出てきがちなモンスターや種族がひょっこり出てくる

 所謂幽霊みたいなものなのかと腹を括っているが

 問題なのは俺の命を狙っていることだ

 いや、狙っているのは俺の命というより黒龍の命だろうがな

 どうやらそのあっち側ってとこの奴ら的には黒龍がいるのは厄介らしい


「そういやあっち側って死んだ人間の場所なんだろ?」


『あぁ』


「じゃあこっち側に来てさ、今日みたいに死んじゃうとするだろ?」


『そうだな?』


「それってそのあとどうなっちゃうわけ?」


『まぁ、あくまで予想の範疇だが・・・』


『あっち側には帰れないんだろうな』


「え、じゃあどこに行くんだよ」


『その質問、他の普通に生きている人間だってあっち側というあるか無いか分からん世界を考え怯えているじゃないか、偶像崇拝を拗らせ神という傲慢な存在まで生み出して縋っている』


「お前はいつもそういう時口が上手くてずるいよなぁ、分かんないって言ったらどうだよ~」


『寝るといっておろうが』


「あ、逃げやがった」


 しかし、もうしばらく取り憑かれているがこうして狙われるようになったのはごく最近の話だ小さな時はそんなことなかったし、友達の少なかった俺には良い話し相手になってくれていた。


 黒龍は力の引き出し方から戦い方まで全て教えてくれた

 何せ黒龍は俺が消えると厄介らしい

 面倒だと言っていた

 不本意ながら必要とされている気がしてくすぐったがったが初めて戦った時は足がすくんだし、血が飛び散るのは怖かった、確かにケツは青かったのかもしれない


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「ほう、またあっさりと・・・フェンリルの時はよく舞っていたがな」


「獣人程度では話にならないようですね」


「黒龍・・・死してなお厄介な奴だ」


「厄介なのは黒龍だけではないです、あの男、黒龍と完全に心を通わせています」


「そうか、ならそろそろ我々も本格的に動かなくてはならないということかな」


「えぇ、もう十分時間は稼ぎました、門を開けられるようになる時期が来るのもそろそろです」


「奴の・・・奴の名を聞いておこう・・・」


「閻魔帳に書き加えても無駄ですよ」


「分かっている、教えろ」


「黒崎 真司です」


「真司・・・くくっ・・・・楽しませてくれよ・・・・」



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 深夜未明


『出たぞッ!!!』


「びっくりしたぁああ!!!!!」


『北東15キロだ、デカい、フェンリルを超えるぞ』


「ねみぃけど急ぐぞ!!15キロくらいならあっという間だ!」


 _______略式・鎧装


 外に飛び出した瞬間もう、この距離でわかるくらいの轟音が腹に響いてきた


 黒龍の鎧は自由に形を変えて防御出来る、それは防御に徹するだけじゃなく

 翼も生やせる。


『見えてきたぞッ!』


「あぁ・・・あれは・・・」


 空で一定の距離を保った中でその全貌は明らかになる


 ________ライオン?


『ライオンじゃない!キマイラだ!!!!』


 キマイラを知らない俺にとっては何のことかさっぱりだった

 静かな時間帯にも関わらずサイレンがうるさく鳴り響く

 轟炎を吐き出し街を焼き尽くしていく


 そして、俺と目が合った

 殺意を込めた眼差しは2つではなく

 6つあった

 ライオンの頭と前足、山羊の後脚、蛇の尻尾

 今まで出会ったことのない生物との遭遇に背中に冷や汗をかき、呼吸は荒くなる


「街をめちゃめちゃにしやがって!!!!」


『話が通じる相手ではない!!』


 保っていたはずの距離が一気に詰め寄られる

 大口が俺を食らおうと迫りくる


「こい!黒雨!」


 かろうじて身をかわし、四つ足の腹側を撫でるように滑空し

 後ろ側に回り込み構える


『蛇の頭から切り落とすぞ』


「弐式 無烙むらく


 雄たけびのような鳴き声が耳を貫いた

 蛇の頭は切り落とされ更にキマイラは暴れた


 どうやら怒りを買ってしまったらしい


『次は山羊の後脚だ』


 後脚といっても頭は付いている

 腰あたりから顔をせり出し真後ろ側であるこちらを睨みつけている


 間髪入れずに山羊の頭を切り落としにかかった


「七式 黒啼くろなき


 2つの頭を落とされ血走り怒りの眼を向けるキマイラ


 先ほどまで生えてなかったはずの翼を生やし空へと飛び立つ


 それは俺が飛んでいる高さを軽く超え

 大口を開き力を貯め、一気に放出する

 豪炎の流星が降り注ぐが、避けることに精いっぱいだった


 無常にも避ければ避けるほど都市は壊滅的な状況になっていき焦りが勝っていく


「まずい!!近付けない!!あれじゃあ首は落とせないぞ!!」


『拾八だ!!!』


「そうか!!!」


 黒龍が思いついたかのように俺に応える


「拾八式!!!! 龍薙ぎ!!!」


 剣が刀身の何倍もの間合いまで伸びていく

 天空に突き立て横に払うだけ

 それは流星をも裂き、キマイラの首へとかかった


 月夜にキマイラにも負けぬほどの叫び声をあげ

 その剣を振りぬいた


 雲を割り、一筋の星が見えた


「終わった・・・のか・・・?」


『首を切るだけの分かりやすいやつだったの』


「普段の3倍になっただけだったな」


『待て』


「ん?」


『今誰かに見られていた』


「気のせいだろ?4つめの頭でもあったか?」


『確かに・・・何か気配があったんだ・・・』


______________________________________



『黒龍だ~~~~!!!!やっと見つけた!!』


「ふ~ん、結構強そうじゃないか」


『どうかな~~??』


「それはお前の強がりってやつか??」


『馬鹿言うなって!』


「だけど俺はああいう面倒事もう勘弁だ」


『首突っ込めって言ってるわけじゃないんだよ!面白そうだろ!?』


「分かった、話をするだけだ」


『よっしゃー!!久々の仲間だ~~~!!!』


「仲間って決まった訳じゃないぞ」


『なんでだよ!使仲よくしようよ!』


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